任意整理後、和解した内容の通りに支払いが出来なくなった時には、任意整理から自己破産に変更しましょう。
何故なら、自己破産で免責が認められればその時点で借金返済義務が消滅するためです。
ですので、延滞の心配や滞納ペナルティにおびえる日々から完全に解放されます。
ここでは、
任意整理から自己破産に変更するメリットや注意点
について、詳しく見ていきましょう。
任意整理から自己破産への変更について
任意整理後に病気・怪我・解雇などの事情が発生して収入が減少すると、
和解契約通りに支払いを継続するのが難しくなることもあるでしょう。
このように任意整理後に完済するのが困難になった場合は、自己破産を考えましょう。
自己破産に変更することで、一括請求などを受けずに借金問題を解決できます。
ただし、自己破産をすると借金の返済義務がなくなる反面、免責不許可事由があると免責が認められない可能性があります。
また、財産が処分されてしまう当のデメリットがある点を理解しておく必要があります。
自己破産をすれば借金返済義務が帳消しになる
自己破産で免責許可決定を得られれば、全ての借金が帳消しになります。
任意整理や個人再生のように完済を目指して返済生活を続ける必要がありません。
したがって、任意整理後に返済を継続することが難しくなった債務者であったとしても、自己破産を行えば、借金地獄から抜け出すことが出来ます。
そのため、自己破産は借金返済で困っている債務者にとって最後の救済措置となります。
借金問題から解放されたい債務者にとっては、お勧めの債務整理手続きだと言えます。
任意整理と自己破産の違い
自己破産は借金返済義務を帳消しにする手続きです。
一方、任意整理は利息・遅延損害金をカットして完済しやすい環境を整える手続きです。
それ以外にもそれぞれメリット・デメリットがあるので整理しておきましょう。
自己破産 | 任意整理 | |
借金減額効果 | 原則全部返済免除 | 利息・遅延損害金のカットが中心 |
手続き後の返済 | 不要 | 必要 |
手続き期間 | 4~6ケ月 (複雑な事案であれば半年以上) | 1~3ケ月 |
財産の処分 | 必要 (一部の自由財産は残せる) | 不要 |
裁判所の利用 | 〇 | × |
隠しやすさ | × | 〇 |
手続きの対象 | 全ての借金 | 債務者が自由に選べる |
連帯保証人への影響 | 避けられない | 配慮可能 |
仕事への影響 | 手続き中のみ職業制限を受ける仕事はある | なし |
自己破産は借金減額効果という点に絞れば強力なメリットをもたらしてくれます。
半面、財産の処分などの大きなデメリットを覚悟しなければいけない手続きです。
これに対して、任意整理は日常生活に生じるデメリットは比較的小さいのが特徴です。
ただ、支払いを継続する必要があり、借金減額効果という観点では効果は小さいです。
したがって、任意整理から自己破産に変更すると借金地獄からは脱却できるものの、日常生活にいろいろな不具合が生じるという点は覚悟しておきましょう。
任意整理から自己破産に変更する際の注意点
任意整理から自己破産に変更するときには、はじめから自己破産を利用して債務整理を行うのとは違ったデメリットが生じる点に注意をしなければいけません。
具体的には、次の2点がポイントです。
- 任意整理後に自己破産を申し立てても免責されない可能性がある
- 自己破産の費用をふたたび用意しなければいけない
それでは、それぞれの注意点について詳しく見ていきましょう。
任意整理後に自己破産を申し立てても免責されない可能性がある
任意整理から自己破産に変更たとしても免責の許可が得られない可能性があります。
なぜなら、自己破産には「免責不許可事由」が定められているためです。
これに該当する事実があれば、原則として破産手続きの申立てをしても借金の返済義務が残ることになります。
自己破産は、全ての借金を免除することが出来る手続きです。
そのため、債務者には大きなメリットをもたらします。
ただ、誰でも簡単に免責許可を獲得してしまえば、貸した人たちに不利益です。
「本当に救済が必要な債務者」だけが免責許可決定によって、全ての借金を帳消しにすることが出来るという運用がなされています。
したがって、以下の免責不許可事由に該当する事実があると、せっかく任意整理から自己破産に変更ても借金問題を改善できなくなってしまいます。
免責不許可事由一覧
- ①債権者に配当する財産を隠匿・損壊・不利益処分するなど、破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと
- ②クレジットカード現金化などの不正な取引履歴があること
- ③特定債権者にだけ弁済すること(偏頗弁済)
- ④過度の浪費・ギャンブル・射幸行為などが原因で借金を作ったこと
- ⑤破産手続きの中で破産管財人や裁判所などに対して虚偽説明や職務妨害をしたこと
- ⑥帳簿等の書類を隠滅・偽造・変造したこと
- ⑦前7年以内に免責許可が確定した
- ⑧支払不能状態であるのに、そのことを偽って新たに借金をしたこと
任意整理から自己破産に変更する時、特に重要な項目④⑧⑨です。
任意整理では借金の原因は問われないので、ギャンブルが借金を背負った理由であったとしても、債権者と和解交渉を行うことが出来ます。
一方、自己破産ではギャンブルが理由の借金は免責不許可事由に該当します。
そのため、原則として免責が認められない可能性が高いと言えます。
また、任意整理後に新たに借金をしてしまった場合、支払い不能であるのにそのことを偽って任意整理後に新たに借金をしたと判断される可能性があります。
ですので、同じく免責許可を得るのが難しくなります。
したがって、任意整理から自己破産に変更て生活再建を図るときには、弁護士に相談をして、自己破産に変更する価値があるのか、妥当性はあるのかについて事前に判断してもらいましょう。
自己破産の費用をふたたび用意しなければいけない
自己破産に変更するときに注意しなければいけないのは費用面に関することです。
初回の任意整理で専門家に着手金(場合によっては成功報酬も)を支払っている場合でも、自己破産を依頼するときには別途着手金・成功報酬・裁判所への費用を支払う必要があります。
これは、任意整理と自己破産を同じ専門家に依頼する場合でも当てはまることです。
自己破産に必要な費用は以下の通りです。
同時廃止事件 | 特定管財事件 | 少額管財事件 |
・予納金:1~3万円程度 ・弁護士費用:約30万円 | ・予納金:50万円~ ・弁護士費用:30万円~ | ・予納金:20万円~ ・弁護士費用:30万円~ |
自己破産をするだけでもこれだけの費用がかかるのです。
加えて任意整理の費用が無駄になってしまうのは大きなデメリットと考えられます。
もちろん、任意整理後に問題が生じてしまった為、自己破産を余儀なくされたのであれば、仕方のないことです。で
ただ、できれば最初から自己破産一本に絞って債務整理手続に踏み出すのが理想です。
免責不許可事由があっても裁量免責による救済の余地がある
免責不許可事由があるとかならず免責不許可決定が行われるわけでは
状況次第では「裁量免責」によって免責が許可される可能性があります。
裁量免責とは、免責不許可事由があったとしても、裁判所の判断によって免責許可を与える制度です。
例えば、
- 債務者が充分に反省していること
- 破産手続きに協力的な姿勢であること
- 生活再建に向けて真摯な姿勢を見せていること
などの、個別の事情を総合的に考慮して、自己破産で更生の道を与えても良いと判断されると、裁量免責が認められることになります。
ただし、裁量免責は必ず認められるわけではありません。
また、免責審尋などの態度によっても、裁判所の印象が違う可能性もあります。
ですので、債務整理に強い弁護士のアドバイスに従い手続きを進めるようにすべきです。
任意整理から自己破産に変更するときには少額管財事件を使える弁護士に依頼を
任意整理から自己破産に変更すると、追加での費用が発生することは前述の通りです。
ただ、「出来る限り費用を抑えたい」という希望を抱く債務者は少なくないでしょう。
この点、自己破産で最もお金がかかる管財事件を避けられるかが大きく影響します。
自己破産の手続は同時廃止事件・特定管財事件・少額管財事件の3種類に分類されます。
このうち、債務者に処分すべき財産がある場合は特定管財事件・少額管財事件のいずれかに振り分けられます。
ですが、弁護士に依頼をしたときに限っては、費用面の負担を減らせる「少額管財事件」を利用できる場合があります。
自己破産手続きをする際には、予納金と言うお金を裁判所に納めなければいけません。
この予納金ですが、同時廃止事件<少額管財事件<管財事件の順で高くなります。
少額管財の場合、裁判所に納める予納金は約22万円となります。
一方、通常管財事件となった場合、予納金は約42万円以上となります。
約20万円も金額が違うのです。
弁護士費用がかかることを考慮しても、少額管財事件のメリットは大きいと言えます。
自己破産は弁護士に依頼することを強くおすすめします。
【自己破産以外の選択肢】債権者と再和解を選択する道もあり
初回の任意整理で締結した和解案通りに返済が難しいとしても、
自己破産を利用したときのデメリットは避けたいという債務者も少なくないはずです。
そのような債務者には再和解・追加介入という道も残されているのでご安心ください。
任意整理後に再和解をすれば返済計画を作り直せる
再和解とは、任意整理で和解契約を締結した債権者との間で、
もう一度和解交渉を行うことです。
当初の和解した通りに返済を継続することが出来ないままでは、債務者には滞納ペナルティが発生します。
任意整理を利用した意味がなくなってしまいます。
再和解をすればふたたび返済計画をリセットできます。
ですので、滞納ペナルティを回避することができます。
ただし、再和解交渉は初回の任意整理よりも難易度が高いので、完済を目指せる返済計画を作るためにも弁護士によるサポートは欠かせません。
追加介入をすれば成立した和解案を修正する必要がない
追加介入とは、任意整理の対象外にした借金について任意整理を実施することです。
任意整理の対象外になったということは、当該借金については利息・遅延損害金などの厳しい条件下で返済を継続しているということです。
これらについても任意整理をすれば、返済額が減り家計に余裕が生まれることになります。
そのため、返済状況を改善できると考えられます。
ただし、追加介入に実効性が認められるか否かは、債務者が抱えている借金状況に大きく左右されます。
したがって、弁護士に相談をして、追加介入によって抜本的な解決を図れるのかを事前に検証しましょう。
任意整理後に返済を継続できないと生じるデメリット
任意整理後に返済継続が難しくなったときには、早急に弁護士に相談をして自己破産・再和解・追加介入の中から適切な方法を選択してもらわなければいけません。
何故なら、成立した和解案通りに返済を継続できないと、次の滞納ペナルティが発生するからです。
- 多くの場合、2ヶ月延滞すると残債を一括請求される
- 滞納すると遅延損害金が新たに発生する
- 財産・給料などが差し押さえられる
- 担当弁護士に辞任されて返済督促が再開する
これらの滞納ペナルティが発生してしまうと、債務者は再び借金返済に追われる生活がスタートすることになります。
特に、借金の残債が高額で、延滞期間も長期に渡ると、高額な遅延損害金が生じます。
そのため、遅延損害金が加算され、借金総額が膨れあがってしまうリスクがあります。
したがって、家計状況が厳しくなって返済継続が困難になったときには、できるだけ早期に専門家にアドバイスを求めるようにしてください。
自己破産から任意整理に変更できるがデメリットが大きい
任意整理から自己破産に変更できるように、自己破産から任意整理に変更することも可能です。
実務上、専門家に自己破産の依頼をしてから、裁判所に破産手続きの開始を申し立てるまでの間には、数か月程度の期間を要するのが一般的です。
つまり、専門家に自己破産を依頼してから数か月の間で、収入が増える・相続で財産を取得する・結婚などによって生活スタイルが大きく変わるなどの事情があれば、自己破産から任意整理に変更た方が生活への悪影響を避けられるケースがあります。
自己破産から任意整理に変更すると返済義務は残る
当たり前の事ですが、自己破産から任意整理に変更すると、自己破産のメリットは一切受けられなくなります。
一方で、自己破産によるデメリットも回避できます。
ただし、同時に借金の返済義務は残ることとなります。
ですので、完済することが出来る自信があれば、任意整理への変更を検討しましょう。
自己破産から任意整理に変更するときは遅延損害金に注意
自己破産から任意整理に変更するときには、遅延損害金に注意をしなければいけません。
つまり、自己破産から任意整理に変更すると「自己破産の準備開始~任意整理で和解契約が成立するまで」の遅延損害金が発生することになります。
たとえば、借金総額400万円、自己破産の準備開始~任意整理手続きの終了までに1年、遅延損害金年利率20%なら、【400万円 × 20% ÷ 365日 × 365日=】80万円の遅延損害金が発生します。
したがって、自己破産から任意整理に変更するときには、発生する遅延損害金の負担も含めて完済を目指せるのかを考えましょう。
遅延損害金の負担に耐えられないなら個人再生を検討しよう
自己破産の準備開始~任意整理手続きの終了までの期間が長いほど発生する遅延損害金の金額も高額になるので、自己破産から任意整理への変更に思い至ったタイミングが遅ければ遅いほど、債務者に不利な状況が生まれます。
そこで、元本と遅延損害金の合算額を返済するのは難しい、しかし、自己破産の利用は避けたいという債務者には、個人再生という道があります。
個人再生を利用すれば、借金総額に応じて元本も減額することが出来るので、任意整理より楽な返済状況を作り出すことが出来ます。
まとめ
任意整理から自己破産に変更すれば、日々の返済に追われることなく借金問題を解決に導くことができます。
しかし、誰でも当然に自己破産への変更が可能なわけではなく、免責不許可事由があるかどうか、自己破産の費用を別途用意することができるか、などの問題を1つずつクリアしなければいけません。
債権者と自由に交渉できる任意整理とは異なり、自己破産は裁判所を利用して厳格に手続きが進められるものです。
したがって、任意整理後に返済することが難しくなった時は、債務整理に強い弁護士に相談をして、自己破産・再和解・追加介入・個人再生の4つの選択肢の中から債務者の生活再建にとって適切なものを提案してもらいましょう。
相談が早ければ、滞納ペナルティを回避や軽減することができ、それだけ解決もスムーズです。