債務整理

債務整理するのはクズ?という誤解について徹底解説します

インターネットで調べてみると

  • 「債務整理をするのはダメなこと」
  • 「借りたお金は必ず返すべき」
  • 「きちんと返せないのはクズだ」

といった意見が多く見られます。

このような考えから、債務整理の手続きに踏み出せずにいる方も少なくありません。

しかし、債務整理をすることは決して恥ずかしいでも、クズなことではありません。債務整理は、借金としっかり向き合い、再出発のための第一歩であり、借金に悩む状況から解放され、新たな生活を始めようとする前向きな行動なのです。

この記事では、債務整理に関する誤解や偏見を解消し、合わせて誤解の理由や原因について解説します。

債務整理は、計画的に行えば後悔のない選択ができます。まずは、自分の状況を見直し、適切な手続きを選ぶことが重要です。あなたの未来をより良いものにするために、前向きに考えてみてください。

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債務整理をする人は決してクズではない理由

債務整理は法的に認められた手続き

収入だけでは返済が難しいほどの借金を抱えると、人生に絶望感を感じる方は多いでしょう。しかし、そんな簡単に未来を諦める必要は全くありません。

借金救済制度」や「借金減額措置」といった言葉をインターネットで見たことがある方も多いと思います。中には、「本当にそんな制度があるのか?」や「詐欺ではないのか?」と疑問を持つ方もいらっしゃるでしょう。

実際のところ、この借金救済制度とは、法律に基づいて借金問題を解決するための制度であり、「債務整理」を指します。

これは「国が認めた救済制度」であり、債務整理を通じて借金を減らしたり、ゼロにすることが可能なのです。(参照:「破産法」「民事再生法」 e-GOV法令検索より引用)

「借金を減らせるなんて怪しい」と思う方もいるかもしれませんが、これは合法的な手段であり、安心して利用できます。

実際、借金返済に困っている方を救うことを目的とした国の制度で、年間約200万人以上がこの制度を利用しているとされています。

このように、借金救済制度の仕組みや利用条件について正しい知識を持つことが、誤解の解消につながる第一歩となります。債務整理を理解し、借金の減額や問題の根本的な解決を目指していきましょう。

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自力で返済をすることは必ずしも簡単ではない

次に、借金をしたからには債務整理などせずに自力で返すべきだ、という意見についてです。

これは確かに、道徳的には正しいご意見かもしれません。ただ、現実的な問題として、債務整理をせずに借金を完済するのは大変に難しいことであるということを無視しすぎているような気がします。

当サイトでも「借金がいくらまでなら完済可能?債務整理が必要?金額別で紹介」「債務整理しないで借金を完済する方法!自力での完済できるかの判断基準を紹介」などで解説をしてきた通り、必ずしも自力返済をするのは容易ではありません。

例えば、借金80万円を完済するためには、以下のような返済プランが考えられます。

元金800,000円
年利18%(利息制限法に基づく最大利息)
返済額30,000円
返済期間約3年
支払総額(利息+元金)約1,030,000円

借金80万円(年利18%で計算)を完済するためには、毎月30000円を約3年返済し続けなければなりません。この間、支払う利息額は累計約230,000円ほどです。

しかし、3年間もの間、毎月30,000円を準備するのは決して簡単ではありません。

「たった30000円ぽっち返せないのか!やっぱりクズだ!」と思う方もいるやもしれません。ですが、株式会社SBI新生銀行の実施した「2024年会社員のお小遣い調査」によりますと、「お小遣い額の毎月平均額は、男性会社員の場合は39,081円。女性会社員は34,921円。」との結果が出ています。

一般的な会社員にとっても、30,000円という金額は一か月間に自由に使える金額の75%以上の金額に当たり、決して少額ではないことが分かるでしょう。

なお、日本弁護士連合会が2020年に実施した「破産事件及び個人再生事件記録調査」によりますと、破産者の負債の中央値は400~500万円最頻値は200~300万円程度となっており、元金80万円という金額は、債務額としては決してそこまで高額ではないという点を指摘しておきたいと思います。

このように、元金が80万円という比較的少額であっても、自力返済は決して簡単ではないのです。さらに高額な借金の完済を自分の力だけで行おうとするのは、より難易度の高いことだとわかるでしょう。

そのため、借金を完済することが出来ない債務整理が必要となるのです。にもかかわらず、債務整理をクズだと断じてしまうのは少し早計ではないかと思ってしまいます。

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債務整理=自己破産ではない

また、債務整理=自己破産というイメージが強すぎるというのも、債務整理はクズだというイメージを助長する理由の一つでしょう。

つまり、「自己破産をすることは借金の踏み倒しであり、債権者に対して損をさせている背信行為である」「借りたお金を返さないで許されるのはズルい、クズだ」という意見につながるということです。

ですが、債務整理には自己破産以外の手続も存在します。決して、債務整理=自己破産ではなく、返済を前提とした手続きも存在するのです。

例えば、債務整理の中には、借金の利息をカットしたり、返済条件を緩めることで、借金を完済する任意整理と言う手続きもあります。これは、元金は返済するのですから、債権者にとっては貸したお金は返ってきているということになります。決して、踏み倒しが成功しているというわけではなく、返済条件を緩和したにすぎません。

そもそも、さきほどもご紹介した日弁連の「破産事件及び個人再生事件記録調査」では、借入れから申立てまでの期間で最も多いのは借入期間が5年以上の債務者でした。これは、言い換えれば5年もの間「お金を借りて、返して、また借りて……」を繰り返し、消費者金融等に利息を払い続けているということを意味します。それだけの利息を取ってるのですから、債権者側には十分すぎる利益が既に出ている可能性もあります。

このように、債務整理には自己破産以外の手続も存在しており、中にはちゃんとお金を返すという手続きもあるのです。債務整理はズルいわけでもなく、必ずしも、債権者に損をさせるようなものではないことをご理解ください。

借金と向き合うことは問題を解決しようとする意思の表れ

上では、債務整理を選ぶ人を「クズ」と断定するのは間違いだという理由について解説してきました。

繰り返しになりますが、債務整理は借金を減らしたり免除したりすることで、新たなスタートを切るための国が定めた制度です。この制度を利用することで、生活を大きく変え、立ち直ろうとすることは、責任を持って自分が抱えた借金に正面から向き合う行為です。

これは、借金問題を放置するより断然マシな態度だと言えるのです。

実際、「債務整理をしないで借金完済を目指すことは可能?ポイントと注意点を解説」で解説したように、自身の収入での返済が苦しくなり、その結果として返済を滞らせ、借金と向き合わずに放置してしまう方も見受けられます。

まず、借金を放置しても根本的な解決にはならず、自身の放置という行動により状況は悪化するだけです。一般に、2~3ヶ月以上の滞納が続いてしまうと、債権者(お金を貸した側)から一括請求されてしまう可能性があります。それでも放置し続けていると、債権者から裁判を起こされてしまい、元金とは別に遅延損害金についても請求され、給料や財産を差し押さえられる可能性があります。

この様な最悪の結果になる前に、債務整理で借金返済の道筋をつける必要があるのです。

また、借金滞納の末に闇金や犯罪に走るというケースもあり得ます。近年流行している闇バイトに手を染める方の中には、借金で首が回らず高額バイトに目がくらんだ方も含まれているといいます。(沖縄タイムス「借金返済に困る債務者を「運び屋」の闇バイトに 雑誌に現金を忍ばせ郵送・公園のベンチに置く ヤミ金事件の摘発逃れか」)

さらには、すべてを放り投げて夜逃げをする方も、正確な統計情報はないものの、確実に存在するのです。

借金問題に困ってしまい、問題から目を背けたり、犯罪に走るのと比べれば、債務整理は大変に責任感の強い選択だと言えるでしょう。

債務整理が恥ずかしいと思われるのは何故?

債務整理を選択することは恥ずかしい事ではありません。

任意整理をはじめ、債務整理は「借金に困っている人を救済する制度」となります。

基本的に弁護士や司法書士に依頼して行うものとなりますが、法を基に借金の減額交渉を行います。

その為、恥ずかしい事ではありませんし、ましてや違法行為などではありません。

にもかかわらず、債務整理が恥ずかしい、クズだといわれるのはなぜなのでしょうか?少し深堀してみましょう。

借金はイメージが悪く、だらしない?

まず、借金をする人のイメージが悪いというものが考えられます。借金をする人間はだらしがないというイメージを持つ方もおられるでしょうし、債務整理をクズだという人の中には借金でトラブルを抱えたことがあり、その際にお金を貸している相手にひどい仕打ちを受けたことがあるのかもしれません。

彼らのイメージはもしかすると、漫画に出てくる債務者のようなものなのかもしれません。

ですが、実態は少し異なります。債務者の多くは、生活苦や所得が足りないということが理由で借金をしているのであり、贅沢や浪費、ギャンブルなどの理由での破産は、思ったより数が少ないのです。

先ほどから何度もご紹介している日本弁護士連合会が2020年に実施した「破産事件及び個人再生事件記録調査」によりますと、破産の原因に関するトップ5は以下の通りです。

  1. 生活苦・低所得: 61.69%
  2. 病気・医療費: 23.31%
  3. 失業・転職: 17.58%
  4. 事業資金: 16.13%
  5. 負債の返済: 20.48%

一方で、漫画に出てくる債務者のイメージに近いであろう、浪費・遊興費やギャンブルは、

  1. 浪費:11.37%
  2. ギャンブル:7.18%

と、低所得者の半数にも及びません。言い換えれば、多くの人は生活に困窮したため借金をしてしまうというのが実情であり、だらしがないから借金をしているという理由として挙げた方は、想像以上に少ないのです。

因果関係が逆転している

債務整理がクズ、と言う意見に関しては、因果関係が逆転しているというしてきができるかもしれません。これは少し悪い表現かもしれませんが、倫理的、道徳的に問題がある方が債務整理をしている場合が含まれているということです。

債務整理が失敗するとどうなる?失敗の原因と失敗しやすい人の特徴とは?」「債務整理の費用が払えない時は、分割や後払いできる?対処法を解説」でご紹介したような事例の中には、確かに倫理的、道徳的に問題がある方が含まれているのは事実です。それは否定のしようがありません。

ですが、それはあくまで因果関係が反対で「債務整理がクズだ」という理論は成立しません。

他人に借金の相談をするのが恥ずかしい

当事務所に相談をされる方の多くは、借金返済のことで頭が一杯になり、精神的にも肉体的にも疲れしまっている方が多いです。

借金を重ねて返済が困難になった理由は人それぞれですが、多くの方は

「収入が減ってしまい生活費を補うため」
「予期せぬ入院費などの急な出費が必要であった」

等、やむを得ない理由の方が多いです。

ショッピングやギャンブルなどの浪費で借金をするような、お金にだらしがない人というような一般的に持たれているイメージに当てはまるよう方は皆無と言っていいです。

しかしながら、このような一般的なマイナスのイメージから、相談することをためらってしまう方が多いのが現状です。

借金について相談をしようと、何度も迷って予約をし、やっぱりキャンセルしようかと・・・悩みながら相談に訪れる方も多いです。

私も、借金問題を扱う前は、「借金=ギャンブルやショッピング依存」という刷り込まれたイメージを抱いていておりました。

しかし、依頼人に実際に会い話を聞く中で、借金をしたくてしている人はおらず、このイメージは間違っていたことを思い知らされました。

頼れる人がおらず、やむを得ず最終手段として、お金を借りた方が大半です。

借金問題を相談することは恥ずかしいことなんて何もないのです。

相談を恥ずかしがっていて状況が悪化してしまう方が問題と言えます。

相談してマイナスになることはひとつもないのですから、恥ずかしがらずに、まずはご相談くださればと思います。

まとめ

多くの人は、債務整理をすることは恥ずかしいことだと考えがちです。借金をしたからには自力で返済すべきだと思い、債務整理に踏み切れない人も少なくありません。

しかし、債務整理は法的に認められた借金救済制度であり、前向きに問題解決に取り組む行動と言えます。
事例でも述べた通り、借金80万円を完済するには、毎月3万円を3年間払い続ける必要があります。これは一般的な会社員の小遣いの75%以上にも相当し、返済を継続することは容易なことではありません。さらに、債務整理には自己破産以外にも、任意整理など返済を前提とした手続きもあります。

借金問題に直面した際、それを放置したり、問題のある行動(闇金や闇バイト、夜逃等)に手を染めたりするよりも、債務整理を選ぶことは責任ある行動です。

たしかに、借金をする人のイメージが悪く、相談することに恥ずかしさを感じる人もいますが、多くの債務者は生活苦や病気、失業などやむを得ない理由で借金をしているのが実情です。

債務整理を恥ずかしいと思わず、国が用意した借金救済制度を活用することで、借金問題に真摯に向き合い、新たな一歩を踏み出すことができるのです。

  • 記事監修者
  • 弁護士 近藤 裕之
  • 翔躍法律事務所 所属
  • 第一東京弁護士会 所属
  • ※法律問題に関するテキスト監修に限る