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新NISAで人気の高い日本株銘柄5選|その実力を徹底的に解説します

新NISA制度が始まり、「投資を始めたいけど、どの株を選べばいいか分からない」と悩んでいる人は多いでしょう。特に、これから資産を増やしたいと考える人にとって、成長の期待できる銘柄選びは非常に重要です。

実は、大手証券会社が公開している人気ランキングを分析することで、多くの投資家がどのような銘柄を選んでいるか、その傾向がはっきりと見えてきます。これは、私たち個人投資家にとって、非常に信頼性の高い判断材料になります。多くの人が選んでいる銘柄には、それなりの理由があるからです。

この記事では、SBI証券、楽天証券、松井証券、野村證券といった主要な証券会社の人気ランキングを徹底的に分析しました。その結果、共通して選ばれている5つの銘柄がなぜ多くの投資家に選ばれているのか、その理由を財務データや株式の評価指標(PER、PBRなど)から詳しく解説していきます。

主要証券会社 NISA人気銘柄ランキング

主要証券会社 NISA人気銘柄ランキング

証券会社1位2位3位4位5位
SBI証券NTT三菱商事三菱UFJ
フィナンシャルG
日本たばこ産業トヨタ自動車
楽天証券NTT日本たばこ産業三菱UFJ
フィナンシャルG
三菱商事トヨタ自動車
松井証券NTT三菱UFJ
フィナンシャルG
日本たばこ産業三菱商事トヨタ自動車
野村證券NTT三菱商事三菱UFJ
フィナンシャルG
トヨタ自動車日本たばこ産業

※各ランキングのデータは集計期間や基準が異なる場合があります。最新の情報は各証券会社のウェブサイトでご確認ください。

新NISAの成長投資枠で買われる銘柄の特徴とは?

各証券会社のNISA人気銘柄ランキング(成長投資枠)から見えてくる共通の傾向は、多くの投資家が「安定性」と「高配当」を重視し、長期的な資産形成を目的としていることです。

具体的には、NTT三菱UFJフィナンシャル・グループ三菱商事日本たばこ産業トヨタ自動車といった、日本の基幹産業を担う巨大企業が、全ての主要証券会社(SBI、楽天、松井、野村)の保有残高や成長投資枠のランキングで共通して上位を占めています。

これらの企業は、通信、金融、商社、自動車といった、日本経済の根幹を支える成熟した産業に属しています。新興企業のように急成長はしないものの、事業構造が安定しており、景気変動の影響を受けにくいという特徴があります。

また、集計した5つの人気銘柄(NTT、三菱UFJフィナンシャル・グループ、三菱商事、日本たばこ産業、トヨタ自動車)の共通点として、配当利回りの高さが挙げられます。

2025年9月現在、日経平均株価の予想配当利回りは約1.5%〜2.0%程度で推移しています。これに対し、人気5銘柄の配当利回りは以下の通りです。

  • 日本たばこ産業: 約4.42%
  • NTT: 約3.33%
  • トヨタ自動車: 約3.31%
  • 三菱商事: 約3.26%
  • 三菱UFJフィナンシャル・グループ: 約3.11%

ご覧の通り、これらの銘柄はすべて日経平均の平均配当利回りを大きく上回る水準にあります。この「配当利回りの優位性」こそが、長期的な資産形成を目指す多くの投資家にとって、これらの銘柄が特に魅力的である大きな理由です。

NISA制度を利用して投資を行う場合、配当金が非課税となるため、税金を気にすることなく再投資に回すことができます。高い配当利回りの銘柄に投資することで、より効率的に複利効果を享受でき、安定した資産の積み上げにつながります。

高い配当利回りや安定性に加え、PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)が適正な水準にあるという共通点があります。

2025年9月現在、東証プライム市場全体のPER平均は約16倍、PBR平均は約1.4倍で推移しています。これに対し、人気5銘柄のPER・PBRは以下の通りです。

  • NTT: PER 12.67倍 / PBR 1.40倍
  • 三菱UFJフィナンシャルG: PBR 1.28倍
  • 三菱商事: PER 18.99倍 / PBR 1.46倍
  • 日本たばこ産業: PER 16.93倍 / PBR 2.06倍
  • トヨタ自動車: PER 9.0倍 / PBR 1.6倍

これらの指標が示すのは、投資家がこれらの銘柄に対して、過剰な期待を込めたプレミアム価格をつけていないということです。

結論として、多くの個人投資家は、信頼性の高い企業に長期間投資し、高配当の株式で、安定した成長と配当収入を積み重ねることを重視していると分析できます。各社ランキングの共通性は、まさにこの堅実な投資トレンドを明確に示していると言えるでしょう。

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人気上位5銘柄を個別の銘柄を深堀り!

ここまでは、各証券会社が発表する、人気上位の5銘柄を紹介してきました。

ここからは、それぞれの特徴を「配当利回り」「収益の安定性」「PER・PBR」の観点から解説します。各指標は、長期投資における魅力度を測る上で重要な要素です。

NTT(日本電信電話)

NTT(日本電信電話)は、日本を代表する通信事業グループとして、国内通信事業(NTTドコモ、NTT東西)とグローバル事業を柱に、データやクラウドサービスなど幅広い事業を展開しています。

  • 予想配当額: 5.30円(1株あたり、2026年3月期)
  • 配当利回り(予想): 約3.33%
  • PER: 12.67倍
  • PBR: 1.40倍 ※上記PER・PBRは2025年9月4日時点のものです。

NTTの最大の強みは、収益基盤が極めて安定している点です。通信インフラという公共性の高い事業を核としているため、景気変動の影響を受けにくく、安定した売上と利益を継続的に確保しています。

年度売上高(兆円)前年比伸び率営業利益(兆円)前年比伸び率経常利益(兆円)前年比伸び率純利益(兆円)前年比伸び率
2025年3月期(予想)13.9+4.5%1.8-2.2%1.8-2.7%1.2-6.2%
2024年3月期13.3+1.5%1.840.0%1.85-0.5%1.28+5.8%
2023年3月期13.1+8.3%1.84+3.9%1.86+1.1%1.21+2.5%
2022年3月期12.1+1.7%1.77+12.0%1.84+13.6%1.18+8.3%
2021年3月期11.91.581.621.09

上記の表からもわかるように、売上高は着実に増加し、それに伴い各利益も安定的に推移しています。これは、長期投資において最も重要な「収益の予測可能性」が高いことを示しています。

NTTは、配当利回りが3%を超える高配当株でありながら、PERやPBRが市場平均と比較して手ごろな水準にあります。さらに、過去の財務データが示す通り、収益が極めて安定しているため、「安定した配当収入を長期的に享受したい」と考える投資家にとって、最も魅力的な銘柄の一つと言えるでしょう。

三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)

三菱UFJフィナンシャル・グループは、国内最大の金融グループとして、銀行、信託、証券、クレジットカードなど幅広い金融サービスを提供しています。グローバルな事業展開も大きな強みです。

  • 予想配当額: 70.00円(1株あたり、2026年3月期)
  • 配当利回り(予想): 約3.11%
  • PBR: 1.28倍 ※PERは金融業の特性上、一般的に非公表か変動が大きいためここでは記載していません。上記PBRは2025年9月4日時点のものです。

金融機関であるMUFGは「売上高」ではなく「業務粗利益」を主な収益指標としています。金利変動や海外事業の影響を受けるものの、その巨大な事業基盤を背景に安定した収益を上げています。

年度業務粗利益(兆円)前年比伸び率経常利益(兆円)前年比伸び率純利益(兆円)前年比伸び率
2025年3月期(予想)4.82+1.9%2.67+25.5%1.86+24.8%
2024年3月期4.73+5.1%2.13+108.8%1.49+33.5%
2023年3月期4.50+13.5%1.02-33.6%1.12-0.1%
2022年3月期3.96+1.0%1.54+34.1%1.13+45.4%
2021年3月期3.921.150.78

過去5年間の推移を見ると、特に直近2年間で経常利益と純利益が大幅な伸びを見せています。これは、国内の金利上昇や海外事業の好調が追い風となっていることを示唆しており、安定性に加えて高い成長性も期待できることがわかります。

MUFGは、国内銀行の中でもトップクラスの安定性と高い配当利回りを誇ります。PBRも健全な水準であり、金利上昇局面においては収益改善が見込まれるため、長期的な資産形成を目指す投資家にとって、ポートフォリオの中核を担うにふさわしい銘柄と言えるでしょう。

三菱商事

三菱商事は、総合商社として、天然ガス、産業用素材、石油・化学、金属資源、電力、食料、生活産業など多岐にわたる分野で事業を展開しています。特に非資源分野の強化により、収益基盤の安定化を図っています。

  • 予想配当額: 110.00円(1株あたり、2026年3月期)
  • 配当利回り(予想): 約3.26%
  • PER: 18.99倍
  • PBR: 1.46倍 ※上記PER・PBRは2025年9月4日時点のものです。

総合商社は資源価格や為替の変動を受けやすい側面がありますが、三菱商事は事業の多角化を進めることで、安定した高収益体制を確立しています。

年度売上収益(兆円)前年比伸び率営業利益(兆円)前年比伸び率経常利益(兆円)前年比伸び率純利益(兆円)前年比伸び率
2025年3月期(予想)18.0-2.7%1.1-9.8%1.1-9.8%1.0-15.9%
2024年3月期18.5-13.6%1.2-28.9%1.2-28.5%1.19+1.7%
2023年3月期21.4+31.3%1.7+36.8%1.7+37.0%1.17+28.6%
2022年3月期16.3+39.3%1.2+117.8%1.2+112.5%0.91+218.8%
2021年3月期11.70.550.560.28

過去5年間のデータを見ると、資源価格高騰の影響で2022年から2023年にかけて大幅な増収増益を記録しました。直近では反動減が見られますが、純利益は高水準を維持しており、安定した収益力が評価できます。

三菱商事は、その多角的な事業ポートフォリオにより、特定のリスクに左右されにくい強固なビジネスモデルを確立しています。配当利回りが高く、安定したキャッシュフローが期待できるため、長期的な資産形成を目的とする投資家から高い評価を受けています。

日本たばこ産業(JT)

日本たばこ産業(JT)は、日本を代表するたばこメーカーであり、海外でも積極的に事業を展開しています。また、医薬品事業や加工食品事業にも多角化しており、事業ポートフォオの安定化を図っています。

  • 予想配当額: 208.00円(1株あたり、2025年12月期)
  • 配当利回り(予想): 約4.42%
  • PER: 16.93倍
  • PBR: 2.06倍 ※上記PER・PBRは2025年9月4日時点のものです。

たばこ事業は国内外で安定的な需要が見込まれるため、景気変動に左右されにくい安定した収益基盤を持っています。加えて、海外事業の拡大や円安の恩恵を受け、収益は堅調に推移しています。

年度売上収益(兆円)前年比伸び率営業利益(兆円)前年比伸び率経常利益(兆円)前年比伸び率純利益(兆円)前年比伸び率
2025年12月期(予想)2.80+1.8%0.65+5.3%0.65+3.5%0.44+2.3%
2024年12月期2.75+6.2%0.62+8.7%0.63+10.5%0.43+10.3%
2023年12月期2.59+11.3%0.57+7.5%0.57+1.6%0.39+0.6%
2022年12月期2.33+1.4%0.53+4.9%0.56+12.3%0.39+16.0%
2021年12月期2.300.510.500.33

過去5年間のデータを見ると、売上収益、営業利益ともに安定した増加傾向が見られます。特に、2022年から2024年にかけての収益の伸びは、海外事業の拡大や為替の追い風によるものです。

日本たばこ産業は、4%を超える高い配当利回りという点で、インカムゲインを重視する投資家にとって特に魅力的です。安定した収益基盤と国際的な事業展開が、高い配当を支えています。PERやPBRも過度に割高ではなく、長期的に安心して保有できる銘柄として、NISAを利用する投資家からの支持を集めています。

トヨタ自動車

トヨタ自動車は、世界最大の自動車メーカーであり、多様な車種と高い技術力を強みとしています。「プリウス」に代表されるハイブリッド車に加え、電気自動車(EV)へのシフトも進めています。

  • 予想配当額: 95.00円(1株あたり、2026年3月期)
  • 配当利回り(予想): 約3.31%
  • PER: 9.0倍
  • PBR: 1.6倍 ※上記PER・PBRは2025年9月4日時点のものです。

トヨタ自動車は、世界的な販売網と生産体制を背景に、安定した収益を上げています。半導体不足やサプライチェーンの問題に直面しながらも、それを乗り越え、堅調な成長を続けています。

年度売上高(兆円)前年比伸び率営業利益(兆円)前年比伸び率経常利益(兆円)前年比伸び率純利益(兆円)前年比伸び率
2025年3月期(予想)43.5+2.0%4.3+9.9%4.3+7.5%3.5+9.4%
2024年3月期42.1+21.4%3.99+96.4%4.0+101.9%3.2+111.9%
2023年3月期34.6+18.4%2.73-14.3%2.99-12.1%1.94-12.3%
2022年3月期29.9+15.3%3.14+36.5%3.32+38.6%2.85+26.4%
2021年3月期25.42.192.492.24

過去5年間のデータを見ると、特に直近2年間で売上高と各利益が大幅に成長していることがわかります。これは、サプライチェーンの正常化や為替の追い風によるものです。

トヨタ自動車は、約3.3%の高い配当利回りに加えて、PER9.0倍という市場平均を大きく下回る割安感魅力です。世界的なブランド力と生産規模を背景に、高い収益安定性と成長性を両立させています。

長期的な資産形成を目的とする投資家にとって、ポートフォリオの中核を担うにふさわしい銘柄と言えるでしょう。