信用情報機関のCICとJICCに登録されている情報によると、一人あたりの平均借入額は約60~65万円です。
そうなると、「60万円程度の借金がある人は珍しくないわけだし、心配する必要はない」とも思ってしまうかもしれません。
しかし、借入額がそこまで高額ではないからと甘く見ない方が良いでしょう。
借金60万円の問題を解決するのは意外と難しく、借り入れが少額であることから心理的なストップがかかりづらいです。
また、少し状況が悪くなると多重債務へ陥る可能性もありえます。
本記事では
- 60万円の借金であっても、意外と完済をするのは難しいということ
- 借金問題を解決するためには債務整理が有効
- 債務整理注意すべきポイント
- どのような場面であれば債務整理をするべきか
- 適切な方法を選ぶ方法
について解説します。
借金60万円であっても自力完済は難しい?
借金60万円というのは、そこまで大きな金額ではないように感じます。
しかし、完済するには意外と努力が必要で、中には「払っても払っても、なかなか借金は減っていかない」という方もいるのではないでしょうか。
ここではまず、具体例として、毎月返済額ごとの返済シミュレーションをご紹介します。
返済シミュレーション①|月額1万円の返済計画の場合
借金60万円、利率が年利18%場合、最大で9000円の利息が発生します。
毎月の返済額が10,000円の場合、10,000円から9000円の利息が引かれ、元金に1000円しか当たってない計算となります。
そのため、返済には13年の時間と、総額950,000円の利息を付した、元金と利息の合計1,550,000円の返済が必要となります。
元金 | 600,000円 |
年利 | 18%(利息制限法に基づく最大利息) |
返済額 | 10000円 |
返済期間 | 13年 |
利息 | 約950,000円 |
支払総額(利息+元金) | 1,550,000円 |
返済シミュレーション②|月額2万円の返済計画の場合
返済原資を毎月20000円と設定した場合はどうでしょうか。
この場合、元金には毎月10,000円程度は返済に当たっており、3年半で借金は完済できます。
ただし、これには条件があり「この3年半の間、新たな借り入れを行わず、カードを使わない」ということが必要となります。
もし、カードを使ってしまえば、借金の残高が増えてしまい最終的には返済額は増加します。
元金 | 600,000円 |
年利 | 18%(利息制限法に基づく最大利息) |
返済額 | 20,000円 |
返済期間 | 3.5年 |
利息 | 約200,000円 |
支払総額(利息+元金) | 800,000円 |
返済シミュレーション③|月額4万円の返済計画の場合
毎月の返済額を40000円に設定した場合はどうでしょうか。
この場合、返済にかかる期間は1年半、トータルで支払う利息の額も約80,000円程度と、そこまで金額が大きくありません。
ただし、これはもちろん、「返済シミュレーション②」でもお伝えした通り、1.5年間はカードを使わず、新たな借り入れをしないことが前提です。
さらに、これを、1.5年続ければ完済が見えるのですが、金額を40,000円を毎月準備するというのは、簡単ではないこともあるでしょう。
元金 | 600,000円 |
年利 | 18%(利息制限法に基づく最大利息) |
返済額 | 40,000円 |
返済期間 | 1.5年 |
利息 | 約80,000円 |
支払総額(利息+元金) | 680,000円 |
【結論】借金60万円の自力返済は意外に難しい
上記のシミュレーションでも分かる通り、自力で返済するのが意外と難しいのは、「毎月の返済額fが少ない」ことや「借りて返してを繰り返しやすい」という問題があるためです。
①毎月の返済額が少ない
借金60万円の場合、毎月の最低支払額は、12000円程度とそこまで高くないことが多いです。
また、「毎月返済はしているから、そのうち完済できるだろう」と、安心をしてしまっている人もいるのではないでしょうか。
ですが、これは利息を差し引くと、数千円しか返済に当たっていない金額設定であるため、なかなか借金の残高が減っていかず、利息ばかりを引かれている状態になります。
そのため、どれだけ支払いをしても、借金はあまり減っていないのです。
②借りて返してを繰り返しやすい
60万円というのは、決して安い金額ではないですが、「少し頑張れば完済できるかも?」と思える程度の金額であることから、問題を軽く見てしまいがちです。
そのため、心理的に借り入れをストップしずらい傾向にあるため、「返済を行い、少し空いた限度額を再度借り入れて……」という負のループに陥りやすいのです、
借金問題を解決するためには債務整理が有効
では、借金60万円の問題を解決するためにはどうすればよいのでしょうか。
一つの解決策として、債務整理が挙げられます。
債務整理は、借金を減額したり、利息などを削減することで返済がしやすい状況を整えるための方法です。
そして、借金が60万円と比較的少額であっても、手続きを取ることは可能です。
もっとも、債務整理にはデメリットもあることから、手続きをするかはメリットと比較したうえで、十分に検討した方が良いでしょう。
借金が増える前に債務整理で問題の解決につなげる
債務整理とは、借金を少なくするために、法律を使って借金を整理することです。
利息制限法や破産法などの法律を使って、借金を減額したり、返済を免除したり、支払いの期間を延ばしてもらったりする手続きです。
これによって、借金を返すことが難しい人の経済状況を立て直すお手伝いをします。
債務整理には、「任意整理」「個人再生」「自己破産」といった方法があります。
これらを合わせて債務整理と呼んでいます。
借金60万円なら任意整理がベターな選択肢
特に自己破産がそうですが、債務整理には誤ったイメージを持つ方が多いように感じます。
また、「債務整理=自己破産」というようなイメージを持たれる方もおり、「債務整理は、数百万円の借金があるような多重債務者が行うものだ」と誤解している方もいるように感じます。
債務整理は「借金返済に問題を抱える人」であれば、借入金額に関係なく取ることが出来ます。
門戸は広く開かれており、借金60万円でも債務整理はできるということです。
任意整理をすれば利息が0%になる可能性あり
借りたお金が60万円残っている場合、借金を解決するためには任意整理という手続きが良い方法です。
任意整理は、借金の債権者と話し合って、利子を減らしたり、月々の返済額を軽減したりする計画を合意する手続きです。
もっとも、任意整理は「利息をカットした分、元金は返す」という約束をすることが多く、基本的には元金がカットされることはありません。
ですから、「利息分を削って、少し返済を楽にしてもらえれば、返済が続けられる」という借入額や、返済原資を準備できる状態であることが必要といえます。
ただ、自力で返済するよりは、返済する月額も、返済の総額も、返済期間も短くできる可能性があるため、手続きを取るメリットが大きいと言えるでしょう。
任意整理をした場合の返済シミュレーション
元金 | 600,000円 |
年利 | 0% |
返済額 | 17,000~10,000円(条件次第でさらに減額できる可能性あり) |
返済期間 | 3~5年(条件次第でさらに伸びる可能性あり) |
利息 | 0円 |
支払総額(利息+元金) | 600,000円 |
通常、任意整理では3~5年(36~60回)の間で返済を行うことが求められることが多いです。
元金を返済回数で分割した金額が、月々の返済額となります。
60万円の借金の場合、月々の返済額はおおよそ17,000円(36回払い)から10,000円(60回払い)ほどになる可能性が高いです。
ただし、具体的な金額や交渉の内容は、過去の借金の履歴や支払いの遅れがあるかどうか、契約期間の長さなどによっても変わってきます。
取引履歴が良好で契約期間も長い場合、5年を越える返済計画が認めてもらえるケースもあります。
特別な事情がある場合は法的整理も視野に入れる
任意整理には、「元金を返済する」という負担を負う必要があります。
そのため、「どうしても返済が出来ない」「返済をしてはいけない」といった以下のような特別な事情があるのであれば、法的整理を考えた方が良い場合もありえます。
法的整理とは、裁判所を通じて行う借金整理の方法で自己破産や個人再生などが含まれます。
自己破産は、借金を返済できない状況を裁判所に認めてもらい、借金を免除してもらう手続きです。
一方、個人再生は、借金の元金を少なくして返済する手続きです。
具体例①|生活保護を受給している、もしくは受給を検討している
生活保護の受給者は、任意整理を行うことが出来ないことが多いです。
なぜなら、生活保護費から借金を返すことが認められないためです。
そのため、生活保護受給している、または、これから受給を検討している人は、任意整理をするよりも、自己破産の手続きを取る方が良いと言える場合があります。
具体例②|けがや病気で失業し、復職のめどが立たない
失業状態にあり、復職が出来ない状態になっている人も任意整理は適切ではない可能性があります。
任意整理では、元金の返済を継続的に行うことが必要になるため、収入が全くないのであれば、任意整理を取ることが出来ないためです。
もっとも、生活保護とは違い、傷病手当や障害年金から借金の返済をすることは禁止されていませんから、収入があると言える場合は、任意整理を続けることも可能です。
債務整理にはデメリットもある
債務整理をすることで、借金の返済を容易にしたり、返済の免除を受けられることはここまで述べてきました。
しかし、債務整理もまったくのリスクなく取れる手続きではなく、デメリットもあります。
・債務整理の対象とした貸金の契約やクレジットカード等は「解約扱い」となり、新たな借り入れが出来なくなる
・信用情報に影響が出ることから、新規のカードの契約や、金銭消費貸借契約、車や住宅ローンが結べなくなることがある
・信用情報が回復するまで完済から最大5年の時間がかかる
・信用情報に影響が出ることで、他人の借金の保証人になれない
・自己破産の場合、手続き中は業務に就くことのできない職業や、資格が存在する
上記のようなマイナスの点もあるため、債務整理をするか、自分で借金を返すかは、要望や将来の計画に応じて柔軟に検討すべきです。
まとめ
・借金60万円の自力返済は意外に難しい
借金額が少額でも、自分で返済する際には予想以上の困難があり、借金が60万円であっても自力での返済は実は難しい
・借金問題を解決するためには債務整理が有効
借金が増える前に債務整理を検討し、問題を早めに解決することは重要です。
特に借金60万円の場合、任意整理が良い選択肢であり、利息を0%に減らしたり、返済額を大幅に軽減する可能性もあります。
一方、特殊な事情がある場合には法的整理も考慮すべきです。
・債務整理にはデメリットもある
もっとも、債務整理を行う際には、いくつかのデメリットも考慮しなければなりません。
信用情報に影響が出るため、新たな借り入れが難しくなったり、ローン契約が制限される可能性があります。
また、信用情報が元に戻るまでに時間がかかることや、他人の保証人になれなくなるリスクも述べました。
債務整理をするかどうかを考えるうえで大事なのは、自分の希望を明確にすると同時に、将来どのような状況でお金が必要になるかを考えることです。
たとえば、1年以内に住宅ローンや車のローンを組む予定があるなら、今すぐに債務整理をするのは控えた方が良いでしょう。
しかし、60万円の借金を債務整理して返済額を減らし、貯金を始めたいと思っているなら、悩む必要はありません。
「借金60万円をいつまでにどの方法で返済するのか」「債務整理前後の生活をどうしたいのか」という、返済と将来計画のバランスを考え、最適な選択をしましょう。