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債務整理

債務整理中でも借入はできる?借入のリスクは?デメリット・対処法を解説

「債務整理の手続き中、お金が足りなくなってしまった!」
「新たに借入をしたいが、借入してもいいのか、借入できる金融機関があるのか分からない。」

こんな状況でお困りではありませんか?

今回は、債務整理中の借入のリスクやデメリットを解説。

さらに、債務整理中の生活費や、急な出費にお困りの際の対処法もご紹介します。

債務整理中に借入はできるのか

金融機関からの借入は、お金が足りない時の最も有効な手段の一つです。

しかし原則として、債務整理中に借入はできません。

なぜできないのか、どうしてもできないのか、説明します。

借入できない理由

債務整理手続きを行うと、借金を減らす、もしくはなくすことができます。

これが債務整理をする大きなメリットです。

しかしその代わり、債務整理中であることが個人信用情報機関に事故情報として記載されます。

よく「ブラックリストに載る」と言われるのは、これのことです。

金融機関は、お金を貸す際に審査をします。

あらゆる金融機関が、審査の際にこの情報を確認することになります。

債務整理手続きをしていることが分かると、「契約通りにお金を返すことができなかった人=この人にお金を貸しても、返ってこないのではないか」と判断され、審査に落ちてしまうのです。

この登録情報は、債務整理手続き後一定期間が経過すると削除されるので、一生借入ができなくなるわけではありません。

借入できる場合もあるが……

原則として借入はできない、とお伝えしましたが、例外がないわけではありません。

大手の消費者金融は難しいですが、中小の貸金業者であれば、場合によっては借入できることがあります。

どうして借入できるのかというと、審査の方法や基準が違うためです。

大手の場合機械的な審査になるので、事故情報が記載されている時点で弾かれます。

ところが一部の中小の会社の場合、もちろん信用情報は確認されますが、その上で状況に応じて審査を通してもらえることがあります。

ただし、以下で詳しく説明しますが、債務整理中の借入はおすすめできません。

債務整理中に借入をしない方がいいのはなぜ?

では、どうして債務整理中の借入は望ましくないのでしょうか。

それはたくさんのリスクがあるからです。

考えられる主なリスクは以下の通りです。

リスク①危険な金融業者に引っかかってしまう

上述の通り、債務整理中でも借入できる貸金業者はありますが、その全てが正規の業者とは限りません。

闇金と呼ばれる、悪質で違法な業者が多く存在します。

闇金は審査をしない、もしくは正規の業者より優しい基準で審査を通し、それを売り文句にしています。

しかし借入をすると法外な金利で請求をし、親族や職場まで押しかけるなどの悪質な取り立てで借主を追い詰めます。

反社会的な集団が運営に携わっているケースが多いため、知らずのうちに犯罪の片棒を担がされてしまっていた、もしくは犯罪への協力をするように脅される、ということもあり得ます。

こういった闇金業者にとって、大手の貸金業者からお金を借りられない債務整理中の人は格好のターゲットになり得ます。

「ブラックでもOK」
「審査なし」
「専業主婦でも借りられます」

など、聞こえのいい言葉で利用者を募りますが、絶対に借りてはいけません。

近年ではSNSで闇金業者から直接連絡が来たというケースもあるそうなので、債務整理手続き中であることをSNSに投稿したことのある方は要注意です。

リスク②債務整理手続きに影響が出る

現在行っている債務整理手続きに影響が出る可能性があります。

債務整理には任意整理、個人再生、自己破産の手続きが存在します。

任意整理であれば債権者と交渉し和解する必要が、個人再生や自己破産であれば裁判所から認めてもらう必要がありますが、債務整理中に借入をしたという事実は、債権者や裁判所の心証を悪くします。

今ある債務を減らす、もしくは無くすことで生活の建て直しを目指しているはずなのに、さらに借金を増やしたことで債権者からの信用を失い、交渉が難しくなります。

さらに自己破産の場合、破産予定なのに借金をしたということが悪意と受け止められ、自己破産をしても免責が許可されない可能性があります。

このように手続きが難航すると、手続きにかかる時間や労力も増えることになり、場合によっては手続きのための費用がさらに増えることもあり得ます。

また、債務整理手続きの依頼を受ける弁護士や司法書士は、基本的に依頼者が自分の手続きの不利益になるようなことはしないという信頼を前提にして委任を受けています。

そのため、黙って借入をしたことが発覚し、手続きに影響が出た、もしくは出る可能性があると判断された場合、信頼関係の構築が不可能として委任関係を打ち切られてしまうことがあります。

そうすると、進めていた手続きが振り出しに戻ってしまいます。

リスク③さらに資金繰りが苦しくなる

新たな借入は、当然今ある借金をさらに増やすことになります。

何らかの手段で借入ができたとしても、それはいつかは返済しなければならなくなるお金です。

せっかく債務整理手続きによって生活を再建しようとしているのに、手続き後も新たな借金の返済に苦しむことになってしまっては意味がありません。

また、任意整理の場合、減ったとはいえ和解した債権者へ返済をする必要があります。

もしも返済が滞れば、もう一度交渉をやり直さなければなりません。

滞れば滞るほど、債権者に「この人は和解してもどうせ返済しなくなるから意味がない」と判断され、どんどん和解が難しくなっていきます。

このように、かえって債務整理前より生活が苦しくなってしまうかもしれません。

債務整理中にお金が足りなくなったら?

それでは、債務整理中にお金が足りなくなり、どうしても暮らしていけなくなった場合は、どうしたらいいのでしょうか。

貸金業者からの借入以外にも手段は存在します。

ただし、それぞれの状況によって利用できるものは変わるため、きちんと調べ、選ぶ必要があります。ひとつひとつ紹介していきます。

求職者支援資金融資制度

これは貸金業者ではなく、国からお金を借りられる制度です。

名前の通り、求職者を支援するために設けられています。

職を探しており、職業訓練受講給付金を受給する資格のある人に限定されますが、その必要があると判断されれば融資を受けることができます。

単身者は最高で月5万円、同居家族がいれば最高で月10万円まで借りることが可能です。

求職者と言っても、必ずしも無職でないと利用できないわけではありません。

働いていても、収入が一定額以下で、転職先を探している人でも利用できます。

貸付を受けるためには、ハローワークで必要書類を用意し、ハローワーク指定の金融機関(労働金庫)にて審査を受け、審査に通ることが必要です。

担保や保証人なしで、年3%の低金利で借入できることが大きなメリットです。

生活福祉資金貸付制度

こちらは、都道府県からお金を借入できる制度です。

低所得者、障害者、高齢者が安定した生活を送ることができるように用意されているもので、各都道府県の社会福祉協議会という機関が相談の受付から貸付まで行っています。

生活福祉資金には、いくつか種類があります。

大きく分けて総合支援資金、福祉資金、教育支援資金、不動産担保型生活資金の4つあります。

順に説明します。

総合支援資金

総合支援資金は、失業や収入の減少等で生活が苦しい人が対象です。

生活支援費という名目で、原則3か月の間、単身者は最高で月15万円、同居家族がいる場合は最高で月25万円の貸付を受けることができます。

また、社宅の賃貸契約に必要な資金として、住宅入居費を最高で40万円借入できます。

さらに、一時生活再建費というものもあり、こちらは就職や転職に必要な技能取得費用や債務整理費用など、生活再建のために一時的にかかる費用をまかなうために最高で60万円を借りられます。

これらの借入は、連帯保証人がいるなら無利子、連帯保証人がいない場合でも年1.5%の低金利です。

福祉資金

福祉資金は、資金の使い道が具体的に決まっている場合に借入ができます。

仕事に必要な道具の購入費用、怪我や病気の治療費用、住宅の転居費用など、必要なものと判断されれば貸付を受けられます。

上限額は、用途によって変わります。

連帯保証人がいるなら無利子、連帯保証人がいない場合でも年1.5%の低金利で借入できます。

教育支援資金

教育支援資金は、所得の低い世帯の子どもが必要な教育を受けられるようにあるものです。

教育支援費と就学支度費の2つがあり、教育支援費は就学中にかかる学費を、就学支度金は入学に必要な費用を借入することができます。

教育支援費の上限額は学校の種別ごとに異なり、就学支度金は入学時のみの1回限り最高で50万円です。

原則として連帯保証人なしで、無利子にて借入ができます。

不動産担保型生活資金

不動産担保型生活資金は、持ち家と土地があるものの収入の少ない高齢者が対象です。

居住用不動産を担保に、最高で月額30万円の貸付を受けることができます。

「リバースモーゲージ」形式とも呼ばれるこの貸付方法は、近年メディアで紹介されているので、耳にしたことがある方も多いかもしれません。

その他

また、この4つの他に、臨時特例つなぎ資金貸付制度というものがあります。

これは住居がなく、離職している人を対象に、条件を満たせば最高で10万円を連帯保証人なし、無利子で借入することができます。

いずれも、低金利、もしくは無利子で貸付を受けることのできる制度です。

全国の市区町村の社会福祉協議会で利用に関する相談を受け付けています。

母子父子寡婦福祉資金貸付制度

寡婦、もしくは20歳未満の子どもを扶養していてなおかつ配偶者のいない人、つまりシングルマザー、シングルファザーと呼ばれる人と、そしてその子のための制度です。

都道府県または市からお金を借りることができます。

内容は多岐にわたります。

「生活資金」

事情により収入が足りない場合の生活を安定させるために、寡婦と配偶者のいない親に貸付されます。

「医療介護資金」

必要な医療や介護などを受けるために、寡婦と配偶者のいない親またはその子に貸付されます。

「就職支度資金」

親もしくは子が就職する際に必要とする被服、車などを購入するために、寡婦と配偶者のいない親またはその子に貸付されます。

「技能習得資金」

事業を始める、もしくは就職するために必要な知識技能を習得するのに必要な資金として、寡婦と配偶者のいない親に支給されます。

「修業資金」

事業を始める、もしくは就職するために必要な知識技能を習得するのに必要な資金として、寡婦と配偶者のいない親またはその子に貸付されます。

「住宅資金」

住宅の建設、購入、補修、保全、改築、増築に必要な資金として、寡婦と配偶者のいない親に貸付されます。

「転宅資金」

住宅を移転するために必要な資金として、寡婦と配偶者のいない親に貸付されます。

「事業開始資金」

事業を開始するために必要な設備や機械、道具の購入資金として、寡婦と配偶者のいない親、福祉団体に貸付されます。

「事業継続資金」

事業を継続するために必要な運転資金として、寡婦と配偶者のいない親、福祉団体に貸付されます。

「就学支度資金」

就学や就業するために必要な資金として、寡婦と配偶者のいない親またはその子に貸付されます。

「修学資金」

高校、専門学校、短大、大学、大学院または専修学校の授業料、教科書代、交通費など修学に必要な資金として、母子家庭もしくは父子家庭の子に貸付されます。

「結婚資金」

母子家庭もしくは父子家庭の子、寡婦が扶養する20歳以上の子が婚姻する際に必要な資金として、寡婦と配偶者のいない親に貸付されます。

どれも原則として連帯保証人を必要としますが、その代わり連帯保証人がいれば無利子で貸付を受けることができます。

就学資金、就業資金、就職支度資金、就学支度資金以外の貸付は、連帯保証人なしで借りる場合年1%の金利で借入ができます。

上限額は内容により異なります。

住居確保給付金制度

賃貸住宅の家賃に関しては、住宅確保給付金制度を利用することもできます。

これは離職もしくは廃業後2年以内、もしくは個人の責任、都合ではなく給与が離職や廃業と同程度まで減少してしまった人を対象に、市区町村が家賃を支給するという制度です。

上限額は市区町村ごとに変わり生活保護制度における住宅扶助額と同じ、原則として3か月間支給を受けることができます。

市区町村から賃貸住宅の賃貸人や不動産媒介事業者へ直接支払われるという形式なので、利用者に直接お金が支給されることはありません。

支給を受ける条件の一つに、ハローワークへ求職申込をしている、企業等への応募を頻繁に行っているなど、就職活動に積極的であるというものがあります。

就職もしくは転職活動中で家賃に困っている方は検討されるのをおすすめします。

生活保護

生活保護の受給も選択肢の一つです。

とはいえ、これは財産や収入がない人が対象のため、返済能力のある任意整理や個人再生の手続き中の人ではなく、自己破産の手続きをしている人に絞られる方法になります。

ご存じの方も多いと思いますが、生活保護制度は、全ての国民が憲法で定められた「健康で文化的な最低限度の生活」を営むために、資産や能力等を全て活用してもなおそこまで達することが難しい人に対して国が保障する制度です。

あくまで最後の手段としてある制度なので、

「収入が一定以下で、持ち家や車などの資産を持っていない」
「頼れる親族もいない」
「事情があって働けないもしくは働いていても生活に足るだけの収入が得られない」
「その他の公的な援助や貸付を受けられない」

などあらゆる手段を尽くしても生活に困窮していると判断された場合に受給が認められます。

生活保護には、8つの種類があります。

「生活扶助」

食費、被服代、光熱費や水道代など、日々の暮らしに必要な資金が支給されます。

「住宅扶助」

家賃、地代、家の修繕費用、賃貸住宅の更新料、転居にかかる費用など、住宅にまつわる資金が支給されます。

「教育扶助」

子の学費、教科書等の教材の購入費、給食費、通学にかかる費用など、義務教育を受けるために必要な資金が支給されます。

「医療扶助」

病気や怪我をして病院の診察を受けた際の診察料、治療費、手術費用、処方された薬の代金など、かかった費用の実費を制度が負担します。

「介護扶助」

要介護者、要支援者が訪問介護や通所介護などの介護サービスを受けるためにかかる費用、必要な用具、住宅のバリアフリー化のための改修費用などが支給されます。

「出産扶助」

出産のための入院費用、ガーゼなど出産に使用する衛生材料の費用など、出産にかかる資金が支給されます。

出産する前の検診の費用や、出産後の子に関する医療費、生活費はそれぞれ医療扶助、生活扶助の方で支給されます。

「生業扶助」

仕事のために必要な費用、具体的には就職に必要な技能を習得するための費用、事業を行うための設備費や器具等の購入費などの資金が支給されます。

また、義務教育ではないため教育扶助に含まれない高等学校の学費についても、必要と判断されればこちらで支給を受けることができます。

「葬祭扶助」

親族の葬祭を行うために支給されます。

これらのお金は借入ではなく支給なので返済の必要はありませんが、受給するには様々な条件があります。

お住まいの地域の福祉事務所で相談を受け付けているので、需給を検討される方は一度相談してみるのをお勧めします。

善意銀行からの借入

善意銀行とは、各自治体で設けられている、その地域の住民や企業からの善意からの金銭、物品等の寄付を社会福祉のために役立てている団体です。

集めた寄付金を団体内で検討の上で高齢者、子ども、障害者のための福祉関係機関・団体に払い出したり、預かった物品を施設へ貸し出すもしくは贈ったり、イベントや催し物への招待といった形での寄付を該当の人々へ提供したりします。

そういった地域の社会福祉のための事業の一つとして、生活に苦しむ人にお金を貸したり、寄付品を提供したりすることもあります。

営利目的ではなくボランティアとして運営されている団体のため、無利子での貸付を行っているところが多くあります。

借入できる条件や金額は団体によって異なります。

親族や友人への相談

親族や友人、もしくは勤務先など、身近な人や組織に相談するという方法もあります。

貸金業者からの借入には当然信用情報の問題がありますし、借りる際の利率や返済期限なども、債務者側の意向に沿ったものになるというのはなかなか難しいものです。

しかし、債務者の人となりを理解してくれている、個人的に縁のある人や組織であれば、ある程度融通が利いた条件で資金援助をしてくれる可能性もあります。

ただし、そういった人からの借入という形になる場合は、注意点もあります。

任意整理は減額交渉を行う債権者を選ぶことができますが、個人再生や自己破産手続きは、企業であっても個人であっても全ての債権者を平等に扱わなければなりません。

そのため、手続き中の場合、知り合いだからといってその人への返済だけ特別扱いすることはできません。

その他の借入と同じようにその債務は減額されたり、免責されたりします。

そうすると貸してくれた人にとっては損になってしまうわけですが、法的な義務はなくなったとしても、手続きが終わった後で個人的に返済をするのは自由です。

それも身近な存在だからこそできるメリットと言えるでしょう。

以上の事情を説明した上でなら、借入ができるかもしれません。

しかし、親しい仲とはいえ、お金の貸し借りはトラブルにつながりやすい関係です。

今後のためにも、借入をする際にはきちんと契約書を取り交わすべきです。

弁護士・司法書士に相談する

これまで様々な方法を紹介しましたが、どの手段を取るにしても、債務整理手続きを依頼している弁護士もしくは司法書士に相談するのが重要です。

弁護士や司法書士は依頼者の財産や収支に合わせて返済計画を立てたり、交渉を行ったり、必要な手続きを行うので、そのさなかに把握していない借入が増えてしまうとこれまでの手続きが無駄になってしまうかもしれません。

上述した通り、依頼者との委任関係は互いの信頼関係で成り立っているため、相談なしでの借入は信頼関係を大きく損なったとして委任関係が終了する原因になりかねません。

必ず弁護士や司法書士に相談しましょう。

手続きを行ってきた中で依頼者の金銭状況にも詳しくなっているので、一番よい方法を提案してくれるはずです。

なかなか相談に乗ってもらえない、どうしてもやり方が合わないという場合は、別の弁護士や司法書士に変えるという手段もあります。