債務整理をすると車を所有している場合、その車が引き上げられる可能性があります。
しかし、仕事で使うからどうしても車を残す必要があったり、地域の事情で車がないと生活ができないということもあり得ます。
また、「債務整理を行っている最中に、車のローンを組めるのか」「債務整理後、何年くらいで自動車ローンを組めるようになるか」といった疑問が解消されないまま、債務整理を行うのは不安があるのは当然です。
そこで、本記事では、債務整理をしながら車を残す方法や、債務整理後に車の購入やローンの審査を通るための方法について解説していきます。
債務整理しても車を残せるか
自動車ローンを債務整理の対象にすると、車を引き上げられる
住宅や車などの金額の大きな買い物をする場合、多くの人々はローンを利用して分割払いで購入することが多いでしょう。
そして、毎月一定額の返済を行うことでローンを返済していきますが、支払いが困難になり債務整理の手続きを行う人も少なくありません。
ただし、注意が必要なのは、債務整理を行うと車が没収される可能性があるということです。
車が没収されるケースは、自動車ローンを組む際に「所有権留保」という担保が付与されている場合です。
所有権留保とは、支払いが完了するまで車の所有権を債権者である信販会社等に残す仕組みです。
これは、購入者がローンの返済を怠った場合に車を没収できるという利点があるため、ディーラー系やクレジットカード系などの信販会社でよく利用されている方法です。
そのため、所有権留保が付与されている車のローンを債務整理する場合には、車が没収される可能性を頭に入れておく必要があります。
債務整理しても車が引き揚げられない場合もある
もっとも、所有権留保が付いていない場合、債務整理をしても車は引き揚げられることはありません。
例えば、銀行からマイカーローンを受けて購入した車の場合、一般的には所有権留保はつかないため、自動車の名義人は購入者になります。
そのため、債務整理をしても車を残すことができます。
ただし、審査は審判会社と比べて厳しいことが多く、ディーラーから契約書や見積書を受け取ったうえで、銀行に持参し、審査を受ける必要があるなど、手間や時間がかかります。
そのため、審判会社系の自動車ローンと比べると、あまり多く利用されているとは言えない状況です。
車をローンで購入する際に所有権留保が付いているかどうかは、契約書を確認することで明らかになります。
契約書に所有権留保の項目がない場合は、ローンを組む際に車が担保として差し押さえられていないことを意味し、車に所有権留保が付いていないことが確認できます。
事故で廃車にしたり、売却して手元にない場合
車が事故で廃車になったり、売却されて手元にない場合は、引き揚げの問題は発生しません(実際に手元にないため引き揚げることは不可能です)。
ただし、車が手元にない場合であっても、ローン会社とのトラブルが生じる可能性があるため、注意が必要です。
所有権留保がある車を勝手に処分する行為は、契約上禁止されているローン会社の「所有権侵害」となるからです。
そもそも、所有権留保がある場合、車検証の名義人はローン会社になるため、一般的には所有者が勝手に廃車にしたり車を売却することはできません。
しかし、車検証の名義は本人であり、契約書にのみ所有権留保が記載されている場合、本人が勝手に廃車や売却を行うことが可能な場合があります。
そのため、ローン会社に黙って車を売ったり廃車にしたりして、あとからそれが発覚し、トラブルになるということはあり得るのです。
事故による廃車やローンの返済困難からの売却を考えても、無断で処分せずに、必ずローン会社と相談するべきです。
また、そのようなトラブルを引き起こしかねない不誠実な行動を取ると、債務整理への悪影響を及ぼす可能性があります。
例えば、任意整理の交渉が拒否されたり、個人再生計画に反対されたりするなど、債務整理が失敗するリスクが生じます。
また、自己破産の場合、不適切な資産の処分と見なされたり、ローン会社から損害賠償を請求されたりする可能性もあります。
その結果、免責されない非免責債権となる場合もあります。
手続き別|車を残しながら債務整理をする方法
任意整理で車を残す方法
任意整理とは、借金問題を解決するために、弁護士や司法書士を介して債権者と交渉し、借金の返済条件や金額の見直しを行う手続きのことです。
債務者と債権者が合意に達することで、利息の減額、返済計画の変更や一部の債務の免除などが行われるのが一般的です。
任意整理は、車を所有したままで債務整理を行うことができる最も簡単な債務整理です。
なぜなら、任意整理の場合は、自由に債務整理の対象とする会社を選ぶことが出来るため、車の引き上げをされないで、債務整理手続きを進めることが出来るのです。
自動車ローンは任意整理の対象から除外する
先述の通り、債務整理によって車を失う原因は、車のローンを債務整理する際に、所有権留保という担保を付けているローン会社を債務整理の対象としてしまうことで、車が引き上げられるためです。
任意整理は、自己破産や個人再生と異なり、全ての債権者に対して行う必要はありません。
つまり、多重債務の状態にある場合でも、特定の債権者のみを対象に選択的に任意整理を行うことが可能です。
したがって、車を引き上げられたくない場合は、車のローンを債務整理の対象から外し、他の債権者に対してのみ任意整理を行うことにより、引き揚げを回避することが出来ます。
これにより、車を所有したまま債務整理を進めることができます。
自動車ローンと同じ会社でクレジットカードを作っている場合
しかし、ここでひとつ注意が必要な点があります。
ある信販会社に対して任意整理を行うと、その会社が保有する全ての債権が任意整理の対象となるということです。
例えば、A社で自動車ローンと、その他のキャッシングローンやクレジットカードの契約をしている場合、原則として車のローンだけを除外して、他のキャッシングローンやクレジットカードの部分だけを任意整理することはできなくなってしまいます。
したがって、一部の債権(例えば車のローン)を除外して任意整理を行うことは、原則として許容されないのです。
ただ、すべての会社で車のローンとその他の借り入れを区別できないわけではありません。
信販会社によっては、車のローンを除外し、クレジットカードローンのみを任意整理の対象とすることに債権者が同意してくれるというケースもあり得ます。
これはあくまで例外的なケースですが、うまくいけば、車を残しつつ、借金を減額できる可能性があります。
ですので、気後れせずに弁護士や司法書士に、相談をしてみることをおすすめします。
個人再生で車を残す方法
個人再生とは、裁判所を通じて、借金を減額する再生計画を立案し、認可をもらって減額された借金を返済する手続きです。
この手続きでは、減額の基準額があり、最低100万円、最大で10分の1の大幅な元金の圧縮が可能となります。
この手続きは自己破産と異なり、財産の処分や清算が必須でないため、自動車を保有したまま債務整理を行うことが出来る場合があります。
しかし、いくつかの注意点があります。
以下で、詳細に解説してゆきます。
個人再生するとローンの残っている財産は処分しなければならない
個人再生の場合、車のローンが完済されているか、まだ残っているかによって、対応が異なります。
個人再生を行う場合、未だにローンの残っている財産や資産は通常、ローン会社によって競売されたり引き揚げられたりします。
したがって、所有権留保された車にローンが残っている場合は、個人再生の手続きの中で引き揚げられることが一般的です。
では、既にローンを完済した車の扱いはどうなるのでしょうか。
自己破産の場合は、破産者の財産や資産は、生活に必要な一定の財産(自由財産)を除いて、破産管財人によって売却されます。
その売却によって得られた金銭が債権者に返済されることになります。
従って、ローンの有無にかかわらず、自己破産の場合は車を残すことが難しいです。
一方、個人再生の場合は財産や資産は強制的に売却されることはありません。
言い換えると、個人再生の場合は、財産や資産を必ずしも売却する必要はなく、所有し続けることが可能となります。
完済した車を残すときの注意点
もっとも、個人再生において車を保有する場合、以下のような注意点があります。
まず、車を所有するとなると、維持費やガソリン代、駐車場代、車検代などの一定の支出が必要となります。
これによって、借金返済に充てることができるお金が減少してしまうと、再生計画の債務返済が困難になり、再生計画が承認されないリスクがあります。
また、清算価値保障原則にも注意が必要です。
債務者が自己破産をして財産・資産を清算すれば,最低でもその財産・資産価値分は支払いを受けられます。
しかし、個人再生の場合には,換価処分が行われないことから、支払いすら受けられなくなってしまうというのでは,結果として自己破産よりも個人再生の方が、支払総額が下がってしまう場合があり得ます。
これでは、債権者にとって納得できないでしょう。
そこで,個人再生の場合でも、「自己破産の手続きをしていたのであれば支払われていたであろう財産・資産の価値分は、債務者が弁済しなければならない」とされています。
これを、清算価値保障原則といいます。
具体例として、再生債務者Aが小規模個人再生を申請し、最低弁済基準額が100万円だったとします。
そして、200万円の価値の車を所有していたとします。
この場合、清算価値保障原則により、再生債務者の債務返済額は最低でも200万円以上でなければならないということです。
車の価値を考慮して個人再生の配当額が決定されるということになるのです。
このため、個人再生の手続き時に、高額な財産を手元に残すことは、清算価値保障原則により、返済最低額を引き上げる原因となりえます。
せっかく苦労して個人再生を行っているのに、借金の減額が認められる範囲が狭まり、支払額があまり減らず、手続きをしても大きな効果が得られない場合があり得ることには注意しましょう。
ローン返済中でも別除権協定で個人再生する
また、例外的に、車のローン返済中でも個人再生を行うことのできる方法があります。
「別除権協定」です。
別除権協定とは、別除権者(所有権留保などの権利者)との間で特別に締結する契約のことです。
個人再生における別除権協定では、「一定金額を支払う代わりに、別除権(所有権留保に基づく権利)を行使しない」という約束を求めます。
具体的には、事前にローン会社と合意し、
「毎月〇〇円ずつローン返済をする代わりに、車を回収しない」
という条件を設けることで、個人再生によるローンの減額が行われても、別除権協定で約束された金額をローン会社が受け取ることができます。
この仕組みにより、車を回収せずに保持することが可能となります。
ただし、個人再生における別除権協定は例外的な措置です。
例えば、自分の保有する車で、配達業やタクシー業を営んでいる債務者が経済的に再生するためには、車が不可欠な資産といえるため、保有を認めるという場合が考えられます。
他にも、身体上の問題でどうしても車が必要な債務者の場合、車を引き揚げるよりも利用させ続ける方が利益となる場合があります。
そのため、このような例外的なケースにおいてのみ、裁判所が別除権協定を認めることがあります。
なお、上記のように、生活や職業にかかわる場合に別除権協定は認められます。
単に娯楽や買い物のためといった理由では、別除権協定を締結することは認められません。
自己破産で車を残す方法
自己破産は、手元にある財産、資産等を売却清算して、債権者に分配することで、現在の給与や収入、資産状況では借金の返済ができないことを裁判所に認めてもらい、借金の返済を免除してもらう手続きです。
そのため、基本的には、車を保有したまま自己破産をすることは難しいのが現実です。
しかし、例外的に、手元に車を残せる場合があり得ます。
以下で詳細に解説します。
自己破産をすると車の保有は難しい
自己破産の場合であっても、個人再生の場合と同様に、車のローンが完済されているか、まだ残っているかによって、対応が異なります。
自己破産の手続きでも、ローンの残っている財産や資産は通常、ローン会社によって競売されたり引き揚げられたりします。
したがって、所有権留保された車にローンが残っている場合は、手続きの中で引き揚げられることが一般的です。
では、現金で一括購入した車やローンを完済した車の場合はどうでしょうか。
個人再生の場合は、手元に残せましたが、自己破産の場合は異なります。
自己破産は、すべての資産や財産を清算することが条件だからです。
そのため、自動車が処分の対象になるかは、手続きの際に自動車の価値がどれだけ残っているかによって決まります。
自己破産で車を残せるケースとは?
自己破産の目的は、破産者を救済し再スタートを支援することでもあるため、生活に必要な最低限の財産を残すことができるようになっています。
そして、破産財団に組み込まれず、破産者が自由に利用できる財産を「自由財産」と呼びます。
自己破産後の生活に必要な最低限の費用や生活必需品、仕事に必要な道具などがこれに該当します(破産法第34条3項)。
一般的に、車は自由財産に含まれません。
ただ、裁判所によっては、売ってもお金にならない、評価額が低い車については例外的に自由財産として扱う基準が設けられています。
このように自由財産の範囲を広げるための裁判所独自の基準を「換価基準」と呼んでいます。
車の価値が20万円以下の場合、ローンが残っていない場合には自己破産しても手元に車を保持することができる可能性があります。
通常、初年度登録から7年以上経過した一般車は、査定額が20万円を超えることはまれです。
したがって、ローンが残っておらず、車の価値が20万円以下であれば、手元に車を残すことができる可能性が高いでしょう。
一方、車の価値が20万円を超える場合、新車や高級車などに該当する場合、破産管財人によって車が処分される可能性があります。
債務整理中や債務整理後に車のローンを組むためには
ここまでは、既に車を保有している人を念頭に、債務整理が現在保有している車に与える影響について解説してきました。
しかし、借金をしている人は、全員が車を持っているわけではないでしょう。
今は車を持っていなくても、将来的には自分の車を持ちたいと思う方もおられるかと思います。
ここからは、今は車を持っていないけれど、将来的には購入を考えている人に向けて
「債務整理中や、債務整理後に、自動車ローンを組むことが出来るかどうか」
「出来るとしたらどのようなローンを組むのがよいか」
「ローンを組めなかった時の別の方法はないか」
について、詳細に解説してゆきます。
自動車ローンでよく出てくる3つの種類について
①ディーラーローン
ディーラーローンとは、ディーラーが提携している信託会社やクレジットカード会社、保証会社などが提供する融資方法であり、購入する車が担保となります。
手続きが簡便であり、購入時の手間を軽減したい人や銀行系マイカーローンの利用が難しい人に適しています。
ディーラーローンには、の代金を全額借り入れて、契約期間内で分割返済する「フルローン」と借入期間後の想定下取り額(残価)を最終回の返済に据え置き、残りの金額を分割返済する「残価設定ローン」の2種類があり、金利や利用条件が異なります。
自分のものにしたい場合はフルローンがおすすめであり、定期的に車を買い替えたい場合は残価設定ローンが適しています。
②銀行系マイカーローン
銀行系マイカーローンとは、銀行(信用金庫や労働金庫を含む)が提供する、自動車関連の利用に特化した目的別ローンです。
銀行系マイカーローンの主なメリットは「金利の低さ」「所有権留保がついていない」という二点です。
一方、銀行系マイカーローンには、「借入までに時間がかかる」「ディーラーローンや自社ローンと比べると審査が厳しく、手続きも複雑」というデメリットもあります。
③自社ローン
自社ローンとは、信販会社を通すことなく、販売店が独自に分割支払いを受け付ける仕組みです。
販売店が提供する支払方法の一種であり、ローンと呼ばれていますが、厳密には金融商品ではありません。
このため、金融商品の審査とは異なり、「審査を通りやすい」と言われています。
ただし、利用する際には販売店の審査基準をクリアする必要があります。
信用情報は自動車ローン審査でも照会される
銀行や信販会社を通すカーローンやディーラーローンは、債務整理中に審査に通る可能性が高くありません。
これは、これらの融資先が信用情報を重視するためです。
信用情報は、個人の信用履歴を管理するために「信用情報機関」と呼ばれる専門機関で管理されています。
信用情報機関には、「JICC」、「CIC」、および「KSC」という3つの種類があります。
債務整理を行うと、信用情報機関に金融事故情報として登録されます。
いわゆる「ブラックリスト」というものです。
銀行系カーローンやディーラーローンの審査では、まず信販会社が申し込み者の信用情報を調べます。
そして、その結果を基に「長期間にわたって返済を続ける能力があるか」を判断します。
債務整理の手続きの記録があると、安定した返済ができないと見なされる可能性が高いのです。
現在でも安定した収入がある場合でも、信用性に欠けると判断されることがあります。
そのため、債務整理中に銀行系カーローンやディーラーローンで融資を受けることは難しいと言えるでしょう。
審査が通るかは債務整理中と債務整理後で異なる
自動車ローンの審査が通るか否かは、債務整理中と債務整理後で異なります。
債務整理中の場合、基本的には組むことが出来ないという風に考えておいて間違いないでしょう。
通ったという例を聞いたことがないわけでもありませんが、非常に例外的なケースと言ってよいでしょう。
一方で、債務整理が終了した人に関しては、自己破産をしたのか、任意整理をしたのかといった手続きの種類によっても異なります。
また、現在の残債務がどの程度残っているかによっても、評価は変わるでしょう。
例えば、
「任意整理をしたが、借金は0円になったAさん」
「債務整理をしたことがないが、借金が300万円あるBさん」
「特定調停をして、1社は完済したが、まだ、3社から計150万円の借金があるCさん」
彼らのいずれが、一番信用できそうでしょうか。
おそらく、Aさんでしょう。
確かに信用情報には事故情報が登録されていますが、借金がないというのは、自動車ローンの審査の際には、当然考慮される事情になり得ます。
債務整理後5年以上経過で組める可能性あり
また、事故情報は未来永劫に残り続けるようなものではありません。
事故情報は一定期間が経過すると消去されます。
もし過去に債務整理を行った場合でも、必要な期間が経過し信用情報から事故情報が消去されていれば、金融機関やローン会社には債務整理の事実は伝わりません。
ローン審査に影響を受けず、結果的にローンを利用することができる状態に戻ることができます。
以下の表は、信用情報機関の名称と業務範囲と、事故情報の登録期間の目安です。
・信用情報機関の名称と業務範囲
全国銀行個人信用情報センター(KSC) | 銀行、信用金庫、信用組合、農協 |
株式会社日本信用情報機構(JICC) | 貸金業者(消費者金融など) |
株式会社シー・アイ・シー(CIC) | クレジットカード会社 |
・事故情報の登録期間の目安
KSC | JICC | CIC | |
任意整理 | 5年 | 5年 | 5年 |
個人再生 | 10年 | 5年 | 5年 |
自己破産 | 10年 | 5年 | 5年 |
ブラック期間が消去されるまでの期間は個別の状況によって異なるため、これらの期間はあくまで目安となります。
人によっては債務整理が終わって2,3年のうちにローンが組めたということもあり得ます。
逆に、5年間しっかりとローンが組めなかった人も存在します。
つまり、「完済後5年経たないと自動車ローンを利用できない」ということではないので、注意が必要です。
任意整理中や任意整理完済後の自動車ローンの審査に通るポイント
自社ローンなら通る可能性がある
自社ローンとは、一般的な自動車ローンとは異なり、販売店が独自に提供するローンのことです。
これは、信販会社を介さずに、販売店自身が分割払いを提供する購入方法を指します。
簡単に言えば、「販売店が車の購入代金を一時的に立て替える仕組み」です。
通常の自動車ローンやカーリースでは、信販会社の審査を通過することがローンを利用する条件となります。
その際に、信用情報機関の紹介を行うことから、事故情報が審査に影響するというのは既にお話した通りです。
一方、自社ローンでは、ローンと呼ばれていますが、厳密には金融商品ではありません。
従って、信用情報機関を通さないで、事故情報を確認されることが少なく、影響が小さいと言えます。
また、販売店が独自の基準で顧客の信用状況を審査し、直接購入者に融資します。
そのため、ディーラーローンや銀行系マイカーローンの審査よりも容易に通過することが大きな特徴です。
自社ローンを利用する際の注意点
もっとも、審査が通りやすいということは、それだけ販売店はリスクを負うということですから、通常のローンよりも販売店に利益のある条件であることが多いです。
いい条件付けられないなら、そもそもリスクを負って審査の緩いローンなんて作りませんから。
それは、ローンを組む側からすれば、デメリットもあるということにつながります。
具体的には、以下のような注意点があると言われています。
・高額な手数料が発生する場合がある
自社ローンでは金利がない代わりに手数料や保証料が車の価格に上乗せされることがあります。
事前に手数料や保証料の金額を確認し、総額をシミュレーションして検討する必要があるでしょう。
・申し込める金額が低く分割払いの回数も制限される
自社ローンでは通常のローンよりも申し込める金額が低くなり、返済期間も短い場合があります。
希望の車種を購入できるだけの金額を借りられるか、返済が困難にならないかを注意しましょう。
・利用できる店舗や車種が限られる
自社ローンを利用できる販売店が限られるため、選択肢が制約されます。
また、高額な車種や新車の購入は認められないことが多いため、中古車や安い車種から選ぶことが多くなります。
当然、中古車には修理費用がかかるなどのリスクも伴いますので、注意が必要です。
・車の名義が販売店側になる
自社ローンで車を購入すると、返済が完了するまで車の名義は販売店になります。
さきほどから何度も出てくる「所有権留保」です。
そのため、途中で売却することができず、販売店が倒産した場合は残債を一括で返済しなければなりません。
・GPSや遠隔制御装置の設置
これは稀なケースと言われていますが、一部の販売店では、返済が滞った場合に車を差し押さえるためにGPSや遠隔制御装置を設置する場合があります。
取り外しには費用がかかることや、いつでも場所を確認されてしまうという制約を受けることになる点に留意しましょう。
以上のポイントに留意することで、自社ローンを利用する際のリスクを最小限に抑えることができます。
債務整理をしていない会社で申し込む
信用情報の事故情報や、ローンの契約内容、利用状況は、各債権者の情報提供により信用情報機関にも記録されているということは、上に書いた通りです。
ただし、注意すべきポイントは他にもあります。
それは、信用情報機関の記録とは別に、「社内ブラック」と呼ばれます。
お金を貸す金融業者や、ローンを認める審判会社の立場としては、一度でも金融事故を起こした人とは再びお付き合いをしたくはないと考えています。
当然、自己破産や任意整理により、貸したお金を回収できなかったり、本来得られる利息をカットされるというのは、債権者にとっては最も避けたい事態です。
従って、社内ブラックを整備することで、過去に事故情報に該当するような問題を起こした人の記録を残すと言われています。
社内ブラック情報の保有期間については明示されておらず、信用情報機関の情報が消えた後も、信販会社の内部には金融事故の記録が残ると言われています。
例えば、Aさんが債務整理を行い、B社の借金を完済から5年が経ちました。
その場合、信用情報から事故情報の記録が消えて、C社ではお金を借りたり、ローンを組めました。
しかし、債務整理を行ったB社では、審査で落とされてしまった、というケースも起こり得るということです。
また、信用情報機関には記録されていない情報も、カード会社だけが記録しています。
例えば、過去に返済を滞ったり、カスタマーセンターへの問い合わせ態度が悪かったり、自己破産や任意整理によって残債の支払いが免責された場合などにも、「社内ブラック」として記録されます。
その後、同じ信販会社でローンを組む、借入を行うことは非常に困難となります。
そのため、債務整理を行った会社で、再度自動車ローンを組むのは非常に困難です。
過去に債務整理を行った会社とは、二度とお付き合いできないものと腹をくくって、別の会社へ審査を申し込みましょう。
保証人を用意する
通常、車のローンでは保証人は必要ありませんが、過去にローンの返済が遅れるなどの金融事故を起こした履歴が信用情報に残っている場合、保証人が必要になることもあります。
また、債務整理をすでに行っている人も、例えば住宅ローンや学資ローン、エステ、教材、携帯電話の分割払いなどのローンの申し込みに保証人が必要になることがあります。
保証人は、借主が返済不能になった場合に代わりに返済する責任を負う人のことです。
保証人には通常の「保証人」と「連帯保証人」の2種類があります。
保証人は借主に返済能力がない場合に代わりに返済する責任が生じますが、連帯保証人は借主と同等の責任を負います。
連帯保証人は、借主の状況に関係なく代わりに返済しなければなりません。
一般的には、以下の要件を満たす場合に、保証人として認められることが多いようです。
・65歳未満の成人
未成年の方は保証人になることはできません。
また、年齢が高すぎる場合も保証人になれないことがあります。
・安定した雇用形態で一定の収入がある
収入の高さは審査に通る可能性に影響を与えます。
複数の保証人が候補にいる場合は、収入の高い方を選ぶ方が好ましいです。
・金融事故の履歴がないこと
自己破産や債務整理、返済遅延などの履歴が信用情報に残っている場合、保証人としては審査に通りにくくなります。
また、保証人自身が返済に困るほどの借入れを抱えていたり、他の借入れの保証人になっていたりすると、審査に通りにくくなります。
返済が滞っていない場合は問題ありませんが、多額の借入れや多重債務の状態では保証人にはなれません。
また、反社会的勢力との関わりがないことも条件とされることがあります。
頭金を多く用意してローン額は低く抑える
ほとんどの場合、カーローンを利用して車を購入する人は、購入費用の一部を頭金として支払いますが、債務整理後の人にも、頭金を積むことは有効です。
頭金を多く積むことで、カーローンの借入額を減らすことができます。
頭金は車の本体価格から差し引かれるため、頭金が多いほど、自動車ローンの借入希望額が少なくすることができます。
そのため、債務整理中であっても自動車ローンの支払いが可能だと考えられやすくなります。
また、審査においても、一定の額の頭金を用意できるということは、計画的な資金準備が返済能力の判断材料として考慮され、カーローンの審査に良い影響を与える可能性があります。
さらに、一定以上の頭金を積んだ場合、貸付金利の優遇措置が適用されることもあります。
頭金の金額は基本的には自由に決めることができますが、一般的には車の本体価格の2〜3割程度が一般的ですが、一部の人は、費用の合計の端数だけを頭金として支払って整数の金額でカーローンを組んだり、事前にカーローンの借入額を決めて、購入したい車の本体価格との差額を頭金で補うなど、自身のマネープランに合わせて頭金を用意する方法を選択することもあります。
規模の大きい中古車販売店を選ぶ
債務整理中にカーローンを組む際に、規模の大きい中古車販売店を選ぶのが良いでしょう。
まず、全国的に展開している大規模な中古車販売店や地域でも大きな販売店では、多様な中古車の在庫を取り扱っています。
そのため、幅広い車種やグレードの中から選ぶことができます。
また、豊富な在庫から選ぶことで、リーズナブルな価格で良質な中古車を見つけることができます。
中古車の価格は新車に比べて抑えられていることが多く、予算に合った車を選びやすくなります。
さらに、大規模な中古車販売店は、カーローンの申し込みに関する手続きや経験が豊富です。
そのため、債務整理中であっても迅速かつスムーズにカーローンの申し込みができます。
信用調査や審査のプロセスも円滑に進められることがあります。
規模の大きい中古車販売店を選ぶことで、豊富な在庫からリーズナブルな価格で良質な中古車を選ぶことができます。
また、カーローンの申し込みにおいてもスムーズに進められるため、安心して手続きを行うことができます。
短期間で複数のローン審査に申し込まない
債務整理を行い、審査が通るかに不安要素がある人は、しばしば「数撃ちゃ当たる」と思い、複数のローンに同時に申し込みをしたり、また、「絶対に借りなければならない」という状況にある焦りから、連続して申し込む傾向があります。
このような状態のことを、「申し込みブラック」と呼ぶことがあります。
申し込みブラックとは、短期間(例えば1〜3か月)の間に複数の金融機関に対してローンやキャッシングの申し込みを行い、その結果審査に通らなくなる状態を指します。
申し込みブラックという状態は、個々の金融機関やカードローンの種類によって微妙に異なるかもしれませんが、一般的には「1ヶ月から3ヶ月の間に」「3社以上」の業者に申し込むことで発生すると言われています。
そのため、「多くの申し込みをすればどれかは受かるだろう」という考え方は非常に危険です。
正しい方法は、1つの金融機関に申し込みをしてから次の申し込みをするということです。
多数のローン申し込みを繰り返し行うと、信用情報において「信用度低下」の要因となる可能性があります。
これは、他の金融機関がリスクを回避するために審査を厳しくすることにつながるかもしれません。
結論としては、短期間で複数のローン審査に申し込むことは慎重に考えるべきです。
信用情報機関には申し込みの記録が残り、審査に影響する可能性があります。
審査に申し込む前に仮審査を利用する
債務整理中に自動車ローンを組む際には、仮審査を利用することをお勧めします。
仮審査は事前に行われる簡易的な審査のことです。
別名「事前審査」とも呼ばれます。
仮審査では、ローン申し込み者の年収や属性、勤続年数などの情報を基に、申し込まれた金額が借入条件と適合しているかどうかがチェックされます。
仮審査は必須ではありませんが、ローン審査に通る可能性を簡単に確認するための便利な手段です。
・仮審査の時間は比較的短い
仮審査の時間は比較的短く、結果はメールなどで当日に通知されることもあります。
審査時間が短く即日結果がわかるため、迅速な判断が可能です。
・信用情報に履歴が残らないため、影響が少ない
仮審査の結果は信用情報に履歴が残らない場合が多いため、仮審査の結果そのものが将来の信用評価に影響を与えることはありません。
これにより、複数の金融機関で仮審査を受けて比較検討することができます。
・頭金や借入額の設定に活用できる
仮審査の結果を基に、頭金の設定や借入額の見直しを行うことができます。
借入可能額や返済条件に応じて計画を立てることで、自分に適したローン条件を探ることができます。
以上の理由から、債務整理中に自動車ローンを組む際には、仮審査を利用することが有益です。
仮審査は迅速な判断ができる上に信用情報への影響も少ないため、カーローンを検討する際に積極的に活用しましょう。
他社の借入れを完済してから申し込む
銀行の自動車ローン審査では、他社からの借入が多い場合、審査に通過できないことがあります。
ただ、借入の種類によっても審査に影響を及ぼすか否かは変わります。
例えば住宅ローンであれば何の問題もありません。
問題となるのは、消費者金融や銀行のカードローンなど、キャッシングを目的とした借入です。
一般的には、このような他社借入が3本以上ある場合、審査に通過することが難しい傾向にあります。
複数のカードローンを持っている人々は、1本のローンの返済を他のローンから行い、2本目が限界に達すると、3本目といったように借金を繰り返す傾向があるからです。
他社借入が多い場合、収入以外の借入金から返済を行う可能性があると考えられてしまい、審査に通過するのが難しくなります。
したがって、借入の数を減らす、他社の返済を終わらせた状態で審査を行うことを推奨いたします。
もし、自力での返済が困難な場合、債務整理をすることで借金を完済し、その後に自動車ローンを組むというのが望ましいでしょう。
任意整理中に車が必要な場合の対処法
家族名義で自動車ローンを組む
自分自身でローンを組むことができない場合、配偶者、両親、または子供に頼んで車のローンを組み、その車を利用する方法があります。
家族間での車の共有は一般的なことであり、「父親がカーローンを組み、所有者も父親ですが、実際に使っているのは子供」というケースはよく見られます。
所有者は法的に車の所有権を持っています。
そのため、車を自由に売却したり、廃車にしたりすることができます。
一方、使用者は実際に車を使用する人を指し、車の税金などの責任は使用者が負うことになります。
所有者と使用者が異なっていても、通常は車の使用において大きな不都合はありません。
所有者が他の人であっても、使用者が自分自身であれば、自宅の車庫に車を置き、24時間365日、自由に車を利用することができます。
ただし、注意点もあります。
親の代わりに子供がローンを組むケースも考えられますが、許されるのはあくまで「自動車を共有すること」であり、名義貸しは法律違反になる恐れがある行為です。
また、ローンを組んでもらったお礼として、親が金銭を渡したり、子供が謝礼を要求したりすると、犯罪となる可能性もあります。
そのため、リスクを避けるためにも体面を整える必要があります。
一括払いで購入する
債務整理をすると、ローンを組む際の審査に通りづらいということは、すでに何度か述べてきました。
となると、一括払いであれば、ローンを組む必要がないため、自動車の購入が可能となります。
一括払いでは金利がかからないため、総支払額がローン払いよりも少なくて済む場合があります。
また、ローンを組まずに一括払いすると、毎月の返済に追われる必要がありません。
さらに、一括払いで車を購入すると、車の所有権は購入者自身にあります。
返済中のローンでは所有権がローン会社にあることが多いため、自由に売却することができません。
一括払いならば、いつでも自由に車を売却したり廃車にしたりすることができます。
もっとも、中古車の一括払いは、販売店にとってあまり好ましくないと言われています。
これは、あくまで販売店側の事情ですが、販売店側にとっては、ローンを組んでもらった方が利益率が高くなるという事情があるため、一括払いは少し嫌がられるということはあるようです。
第一に、販売店にとっては、金利がとれるため、まずはそれが販売店の利益となります。
また、中古車を購入したお客さんがローンを組んだ場合、販売店はローン会社からの紹介料を受け取ることができます。
さらに、ローン契約数のノルマがある場合、販売店や営業スタッフはローン契約件数を増やすことで利益を得ようとします。
ただし、上記の理由はあくまですべて、販売店側の事情であって、購入者側には関係のない話です。
気後れする必要もありませんので、ご安心ください。
カーリースを利用する
自動車ローンの審査が通らない場合は、カーリースの利用なども検討された方が良いかと思われます。
カーリースの場合であっても、審査は必要ですが、以下のような以下のような対策をすることで、審査が通る可能性があり得ます。
・車のグレードを下げる
車種のグレードを下げることで、月額費用を抑えることができます。
審査に通らなかった車種で支払いが難しいと判断された場合でも、グレードを下げることで支払いが可能と見なされることがあります。
支払いのしやすさを考慮し、グレードを下げることで審査に通りやすくなるかもしれません。
・頭金を支払う
カーリースでは頭金なしで新車に乗ることができる場合もありますが、頭金を支払うことで月額の利用額を減らすことができます。
車種のグレードを下げたくない場合でも、頭金を多く支払って月額の利用額を減らす方法を検討することで、審査に通りやすくなる可能性があります。
・自社で審査を行っているカーリース会社を探す
大手のカーリース会社ではなく、自社で独自の審査を行っているカーリース会社を探す方法もあります。
一部のカーリース会社では信販会社を利用せず、個人信用情報機関への照会も行わない独自の審査を行っている場合があります。
そうしたリース会社ならば、ブラックリストに登録されていたとしても審査に通る可能性があるかもしれません。
ただし、利用金額の制約やサービスの質について注意が必要です。
レンタカーを利用する
債務整理の経験がある場合でも、レンタカーを借りることが可能です。
レンタカーの貸し出しは、審査を不要としており、また、債務整理の履歴は免許証に記載されることはありませんので、その点の心配もありません。
ただし、レンタカーは通常カード払いが原則となっていることが多いです。
そのため、債務整理の手続きを行ってから時間が経っていない場合には、カードを使用して車を借りることは難しいでしょう。
また債務整理の手続き中にカードを使用すると、詐欺行為と見なされる可能性がありますので注意が必要です。
もっとも、レンタカー会社によっては、本人確認書類を提出することにより、現金払いやデビットカード払いを受け入れてくれる場合があります。
そのため、レンタカーを借りる場合は、事前に現金払いが可能であるかをレンタカー会社に相談し、現金払いでの借り入れを検討する方が安全です。
まとめ
・所有権留保の付いている自動車は、債務整理を行ってしまうと引き揚げになる可能性がある
・任意整理の手続きから自動車ローンを外したり、すでにローンを完済しているものであれば、自動車を手元に残しながら債務整理が可能な場合がある
・債務整理後にローンを組むのは難しいが、自社ローンを利用することで自動車を分割購入することが出来る
・ただし、自社ローンは手数料や種々の制約があり、慎重に検討するべき
・家族にローンを組んでもらったり、レンタカーを借りることで不都合を回避できる