債務整理

膨らんだ借金はどれだけ減額できるのか?債務整理を比較しよう!

リボ払いや分割払いにしたり、返済のためにキャッシングしたりしてしまうと、気づいた時には借入が大きくふくらみ、借金地獄に陥ってしまいます。

大きくふくらんだ借金を返済していくには、自力では非常に難しく、債務整理の検討が必要になってきます。

ここでは、債務整理をすることで、借金がどれだけ減っていくのか、解決することはできるのか解説していきます。

債務整理の種類

ひとことに「債務整理」といっても、どのような種類があり、それぞれどんな手続きなのでしょうか?

まずは、債務整理の基本を説明します。

すべてに共通して、「個人信用情報機関」に事故情報が入るため、クレジットカードの利用や、新たな借入などができなくなります。

ローンの審査にも通らなくなるというデメリットもあるので、慎重に検討しましょう。

任意整理

任意整理は、裁判所を通さず、債権者に将来利息のカットを交渉する手続きです。

「借金」とは「元金」と「利息」で構成されています。

返済してもなかなか元金が減らないのは、返済した金額は、まず利息に充当されるからなのです。

この利息をカットすることで借金の総額を減らすのが「任意整理」です。

任意整理は将来利息のカットだけでなく、過払金が発生していれば、返還請求をして残債に充当させますが、金額によっては手元に現金が戻ってくることもあります。

また、月々の返済についても、長期分割の交渉を行い、毎月の負担を軽くすることも可能です。

減額できるのは「利息」のみなので、減額幅は小さいですが、確実に支払っていきやすくなり、無理なく完済を目指すことができます。

個人再生

個人再生は、裁判所を通じて、1/5~1/10まで(債務額により弁済額が変わる)圧縮し、再生計画に基づいて返済をしていく手続きです。

大きな特徴は、住宅を残せることです。

自己破産では、住宅の手放しが必要ですが、個人再生は住宅ローンを払っていきながら手続きできるので、住宅を残せる可能性があります。

借金を大幅に減らせる上に、住宅も残せるので、任意整理では解決できない金額まで借金がふくれてしまった場合、自己破産の前に検討するといいでしょう。

しかし、個人再生は債務整理の中では比較的条件が厳しく、難しい手続きでもあります。

再生計画案通りに、毎月きちんと入金ができることを裁判所に認めてもらう必要があり、安定した収入は必須です。

また、裁判所を介するため、「官報」という、裁判所の発行する機関誌に手続きをしたことが掲載されます。

自己破産

自己破産は、裁判所に、自力での返済が不可能であることを認めてもらい、税金や養育費など一部を除いた借金の支払いを免除(免責)してもらう手続きです。

借金全額の支払い義務がなくなり、借金が0円になるので、減額幅ではナンバーワンです。

自己破産では住宅や車など、自分名義の財産の手放しが必要になります。

住宅の手放しで引っ越しを余儀なくされるため、家族と暮らしている場合には、家族にも影響が出てしまうので、慎重に考える必要がありますね。

また、全ての財産を手放してしまっては、生活ができないため、99万円以下の預貯金や、20万円以下の清算価値の財産、家財道具などは手元に残せます。

財産の手放しや、一部の職種に制限がかかってしまいますが、年収以上に借金がふくれてしまった場合には、生活再建のために有効な手続きです。

それぞれの解決事例

債務整理の種類とそれぞれの特徴があることがわかったら、実際、どれくらい減額できるか気になりますよね。

それぞれの手続きでの減額事例を紹介します。

任意整理

毎月の支払いが半減した事例

30代男性/営業職

キャバクラ通いがやめられず、合計4社から借り入れを重ねてしまい、気付いた時には、車のローンも含めると650万円まで借金がふくれていました。

月々の返済額も12万円・・・。

生活が苦しくなっていたため、「借金減額診断」という広告を見て弁護士に相談し、任意整理を決意しました。

車を残したいと相談したところ、任意整理は手続きする業者を選べると教えてもらったので、車のローン会社以外の業者の手続きを依頼しました。

将来的な利息はかからなくなり、月々の返済額も約半分に減らしてもらえたので、生活を立て直すことができました。

過払金で借金を全額返済できた事例

60代男性/無職

平成5年から数年間、5社の消費者金融から借りては返し、借りては返すを繰り返していました。

若い頃は景気がよく、その頃のお金の使い方が染みついてしまっていたのが原因だったと思います。

その後、平成29年に退職金で3社は完済できましたが、2社で150万円の借金が残ってしまいました。

年金で返していくことに不安を感じていた頃、CMで見かけた「過払金」が、自分も該当するのではないかと思い、相談したところ400万円近い過払金が発生していたことがわかりました。

そのおかげで、借金も完済でき、手元に現金が戻ってきたので、貯金にまわすことができました。

個人再生

住宅を残して650万の借金を130万円に減額できた事例

40代/男性/物流業

8年前、結婚を機に住宅をローンで購入しました。

当初は夫婦共働きでローンを返済していく予定でしたが、子供が生まれ持病があることがわかり、妻が働けなくなりました。

家計が赤字になり、数社のカードで生活費を補うようになりました。

そんな中、コロナ渦で営業職の私は営業に出られず、大幅に減収してしまいました。

当然、返済が難しくなり弁護士に相談をすることにしました。

・病気の子供がいるため、現在の住まいから引っ越すことは考えられず、自己破産は避けたい

・借入れたばかりの業者もあり、任意整理だと月々の返済額が下がらない

ということで、すすめられたのが個人再生でした。

個人再生によって、住宅ローンを返済しながら、他の650万円の借入を130万に圧縮して3年間で払っていくことになりました。

住宅に住み続けながら、完済を無理なく目指していけるので個人再生をしてよかったです。

FX投資でできた800万円の借金を3年で完済できた事例

40代/女性/商社

友人からすすめられ、FX投資を始めました。

利益が出ていた時期もあり、欲が出てしまい、さらに投資額を増やしていくようになりました。

損失で貯金が残りわずかになってしまったにもかかわらず、「取り戻せるから大丈夫だろう」と軽い気持ちで借入をして投資に使うようになりました。

気が付いた時には800万円を超えていて驚きました。

収入はそれなりにありましたが、さすがに自力で返済するのは難しいと思い弁護士に相談をしました。

安定した収入があることから個人再生をすすめてもらい依頼をしました。

結果的には800万の借金が160万まで減額され、3年間で完済することができました。

自己破産

800万の借金をゼロにし、養育費が払えるようになった事例

    飲食店を経営していましたが経営に行き詰まり、赤字が続いたため店を閉めることにしました。

    結果的に800万円の借金が残ってしまいました。

    再就職も難しく、運送のアルバイトで得た収入で借金の返済をしていましたが、生活もままならなくなり、5年前に離婚し、離れて暮らす子供への養育費も滞るようになってしまいました。

    どうにもならず、弁護士に相談し、自己破産の手続きを選びました。

    特に財産もなかったため「同時廃止」の形で免責がおりました。

    今まで返済に充てていた収入で養育費も支払うことができ、生活も楽になったので、今は再就職に向けて準備をしています。

    任意整理後、自己破産で解決した事例

    40代/女性/飲食業

    生活費の補填でクレジットカードを使い続けた結果、400万円ほどまで借金がふくらんでしまいました。

    月々の返済がついにできなくなり、任意整理を開始しました。

    しかし、コロナの影響で収入が減り、それすらも払うのが難しくなりました。

    任意整理を依頼した弁護士事務所に相談し、自己破産で解決していくことにしました。

    交通の便の悪い地域に暮らしていたこと、高齢家族の通院という事情を考慮して、自家用車は残せるようにしてもらえたため、大きく生活に影響を及ぼすことなく手続きができました。

    それぞれの懸念点

    債務整理は借金を解決するのにとても有効ですが、それぞれの懸念される部分にも触れてみましょう。

    任意整理

    家族には内緒にできる?

    裁判所からの書類なども届かないので、支払いを滞らせなければ知られることはありません。

    しかし、クレジットカードの利用ができなくなり、不審に思われることはあります。

    可能であれば、家族には話しておいたほうがいいかもしれませんね。

    誰でも手続きできる?

    任意整理は、安定した収入があればアルバイトやパートでも手続きが可能です。

    財産は残せる?

    任意整理では、財産を処分する必要はありません。

    仕事に影響はない?

    任意整理をすることで影響の出る職はありません。

    賃貸物件は借りられる?

    金融業者が確認できる信用情報は賃貸の審査では確認できないため、基本的には問題なく契約できます。

    例外として、家賃保証会社が信販系(クレジットカード会社)の場合は、信用情報の共有があるため審査に通らない可能性が高くなります。

    個人再生

    家族には内緒にできる?

    同居家族の場合は難しいかもしれません。

    家計収支は生計をともにする家族の収入も含めた、世帯全体のもので提出をするため、家族の協力が必要になります。

    また、財産の手放しにより、家族にも影響が出る可能性も否定できません。

    誰でも手続きできる?

    再生計画案に沿って3~5年で確実に返済を行う必要があるので、安定した収入があることが絶対条件です。

    財産は残せる?

    基本的には手放しになると考えたほうがいいでしょう。

    しかし、ローンの残っている住宅は、住宅ローン特例により住宅は残せる可能性があります。

    車やバイクはローンを完済し、所有権が自分にある場合、その財産としての価値によっては残せる可能性があります。

    仕事に影響はない?

    個人再生をすることで影響の出る職はありません。

    賃貸物件は借りられる?

    金融業者が確認できる信用情報は賃貸の審査では確認できないため、基本的には問題なく契約できます。

    例外として、家賃保証会社が信販系(クレジットカード会社)の場合は、信用情報の共有があるため審査に通らない可能性が高くなります。

    自己破産

    家族には内緒にできる?

    同居家族の場合は難しいかもしれません。

    家計収支は生計をともにする家族の収入も含めた、世帯全体のもので提出をするため、家族の協力が必要になります。

    また、財産の手放しにより、家族にも影響が出る可能性も否定できません。

    誰でも手続きできる?

    裁判所に、本当に「返済が不可能」だと認められる必要があります。

    また、免責不許可事由というものがあり、ギャンブルや浪費が原因の借金の場合、免責されない可能性があります。

    財産は残せる?

    基本的には手放しが必要になりますが、99万円以下の預貯金は残すことが可能です。

    仕事に影響はない?

    一部の職業は免責がおりるまで就業ができなくなります。

    警備員や保険募集人(営業)、弁護士などの、いわゆる士業がそれに該当します。

    賃貸物件は借りられる?

    金融業者が確認できる信用情報は賃貸の審査では確認できないため、基本的には問題なく契約できます。

    例外として、家賃保証会社が信販系(クレジットカード会社)の場合は、信用情報の共有があるため審査に通らない可能性が高くなります。

    どの債務整理を選べばいい?

    債務整理の種類によって向き不向きがあります。

    それぞれ、どのような人が向いているか解説していきます。

    任意整理が向く人

    ✅返済は出来るけれど、できれば返済を減らしたいと思っている人

    ✅利息ばかりを払っていて、元金が減っていない人

    ✅家族に知られず手続きしたい人

    ✅年収の1/3~1/2ほどの借金がある人

    毎月の支払いや元金が減らないことへの不安がある場合、まずは任意整理を検討するといいでしょう。

    個人再生が向く人

    ✅(自分名義の)ローン返済中の住宅がある人

    ✅収入が安定している人

    ✅元金が高額な人

    住宅ローン以外にも高額の借金がある場合、住宅を残せる可能性のある個人再生を検討してみるといいでしょう。

    自己破産が向く人

    ✅収入の1.5~2倍以上の借金がある人

    ✅すでに返済が滞って、返す目途がついていない人

    ✅返済のために新たに借り入れをして自転車操業になっている人

    ✅収入が少ない人

    (低所得世帯の場合、法テラスでの手続きができる可能性があります。)

    すでに返済ができなくなり、収入から返済できる目途がつかない場合、自己破産を検討してみるといいでしょう。

    早めに弁護士・司法書士に相談しよう

    自分だけでは、どんな債務整理が合っているのか判断が難しく、間違った選択でさらに生活が苦しくなる可能性もあります。

    債務整理のプロである弁護士や司法書士に早めに相談し、自分に合った債務整理を提案してもらいましょう。

    • 記事監修者
    • 弁護士 近藤 裕之
    • 翔躍法律事務所 所属
    • 第一東京弁護士会 所属
    • ※法律問題に関するテキスト監修に限る