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債務整理

債務整理をすると保証人はどうなる?関係について解説します

借金の保証人になると、もし債務者が返済できなくなった時には、代わりに借金を払わなければなりません。しかも、債務者が債務整理を始めると、保証人は必ず代位弁済を求められます。

とはいえ、保証人に迷惑をかけずに借金問題を解決する方法がないわけではありません。

借り換えローンの利用や、身内に肩代わりしてもらうことで、保証人への影響を回避しつつ、借金を減らすことも可能です。
ただし、これらの方法にもデメリットがあるので注意が必要です。


そこで今回は

  • 民法上定められた保証人の責任、権利
  • 債務整理が保証人に与える影響
  • 保証人に迷惑をかけずに借金を整理する方法

などについて詳しく解説します。

保証人が債務整理をしたケースについては、以下の記事で詳しく解説しています。合わせてご参照ください。

連帯保証人が自己破産したらどうなる?債務者への影響を解説します主債務者が借金の返済が出来なくなってしまうと、債権者は返済の催促を連帯保証人に行います。しかし、連帯保証人であったとしても自己破産の手続きは裁判所で行うことが出来ます。 今回の記事では、連帯保証人の自己破産について説明していきます。 ...

保証人とはどのような人なのか

保証人とは、債務者が借金を返済しない時に代わりに支払う責任を負う人

民法第446条では、保証人というのは、主たる債務者(=契約の中心となる人)がその債務を果たさない時に、その履行をする責任を負う者だと定義されています。

(保証人の責任等)
保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う。

民法第446条「保証人の責任等」(e-Gov 法令検索より引用)

簡単に言えば、保証人とは、債務者が借金を返済しない時に代わって支払う義務がある人のことを指すのです。

例えば、子供が車を買った際に、父親が保証人になるケースを考えてみましょう。

契約の主体(=主たる債務者)は子供で、父親は保証人です。

そして、子供がローンを支払わない時には、保証人である父親は、子供の代わりに車のローンを支払わなければなりません。

保証契約はどのようにして成立するのか

保証契約は、債権者と保証人との契約によって成立します。保証契約は、書面や電子記録のような形で残さなければ、その効力は生じません。(民法第446条第2項)

2 保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。
3 保証契約がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その保証契約は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。

民法第446条「保証人の責任等」(e-Gov 法令検索より引用)

また、保証人は行為能力者、未成年や後見が必要な人ではいけません。また、弁済能力が十分な人でないと保証人にはなれません。

(保証人の要件)
第四百五十条 債務者が保証人を立てる義務を負う場合には、その保証人は、次に掲げる要件を具備する者でなければならない。
一 行為能力者であること。
二 弁済をする資力を有すること。

民法第446条「保証人の要件」(e-Gov 法令検索より引用)

保証人に認められた権利とは?

では、保証人にはどのような権利が認められるのでしょうか?

まず、保証人には民法第452,453条では、

  • 「検索の抗弁権」
  • 「催告の抗弁権」

という2つの権利が与えられています。

(催告の抗弁)
第四百五十二条
債権者が保証人に債務の履行を請求したときは、保証人は、まず主たる債務者に催告をすべき旨を請求することができる。ただし、主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、又はその行方が知れないときは、この限りでない。
(検索の抗弁)
第四百五十三条
債権者が前条の規定に従い主たる債務者に催告をした後であっても、保証人が主たる債務者に弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、債権者は、まず主たる債務者の財産について執行をしなければならない。

民法第452条民法第453条(e-Gov 法令検索より引用)

難しい言葉ですが、簡単に言うと、

アイコン名を入力

「借金している人(主たる債務者)にまず請求してください」

アイコン名を入力

あの人はお金を持っている。

簡単に取り立てられるからそちらに請求してください

ということを、借金取りに言える権利のことです。ただし、主たる債務者が自己破産をした場合や、行方不明の時には、催告の抗弁は利用できません。

なお、保証人が主たる債務者の借金を肩代わりして支払った場合、保証人は主たる債務者に対して、肩代わりした借金を支払うように請求することが出来ます。これを求償権(民法第第459条)と言います。

(委託を受けた保証人の求償権)
保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、主たる債務者に代わって弁済その他自己の財産をもって債務を消滅させる行為(以下「債務の消滅行為」という。)をしたときは、その保証人は、主たる債務者に対し、そのために支出した財産の額(その財産の額がその債務の消滅行為によって消滅した主たる債務の額を超える場合にあっては、その消滅した額)の求償権を有する。

民法第459条「委託を受けた保証人の求償権」(e-Gov 法令検索より引用)

「連帯保証人はやめておくべき」と言われるのはなぜか

ここまでは、保証人の責任や権利について解説をしてきました。

では、よく似た言葉に連帯保証人というものがありますが、これは何が違うのでしょうか?

また、よく「連帯保証人はやめておくべき」と言われますが、これはなぜなのでしょう。

その理由としては、いくつかの点が考えられます。

まず一つ目は、他人の借金を肩代わりさせられるリスクを負うということです。

これは保証人と同様です。

通常の保証人と大きく違うのは、「検索の抗弁権」「催告の抗弁権」が認められない権利があるという点です。

(連帯保証の場合の特則)

保証人は、主たる債務者と連帯して債務を負担したときは、前二条の権利を有しない。

民法第454条「連帯保証の場合の特則」(e-Gov 法令検索より引用)

連帯保証人には、この検索の抗弁権と催告の抗弁権が認められていません。そのため、借金の支払いが滞ると連帯保証人には反論の余地がありません。保証人がお金を持っていようがいまいが関係なく、連帯保証人は支払いを求められてしまうのです。

このような理由で、連帯保証人になることは避けるべきだと言われているのでしょう。

債務整理とは「約定通りの返済ができなかったということ」

ここまでは、連帯保証人とはどのような人で、どんな義務があるのかについて説明してきました。

簡単に言うと、「保証人は主たる債務者が支払いをできなかったときに借金を代わりに支払う人」と言うことでした。

では、主たる債務者が債務整理を開始した場合、どうなるのでしょうか?

結論を先に言うと、保証人が主たる債務者に代わって借金を代わりに支払うことになります。

つまり、債務整理は、支払い不能を理由に行われる手続きであり、支払いができていないことそのものです。ですので、債務整理をすると保証人は主たる債務者が支払いをできなかったときに当たります。

したがって、そのため、金融機関や貸金業者は保証人に支払いを求めることになります。

具体的には、弁護士や司法書士が債務整理の手続きを進め、金融機関に保証人についての通知を送った場合や、破産手続きや再生手続きが始まったときに、支払い不能になったと判断されます。ですので、そのあとすぐに、保証人に請求をされてしまうのです。

このように、保証人が関与している債務整理では、保証人や連帯保証人への請求は避けられないのです。

保証人に迷惑をかけずに借金を減額する方法はないのか

上記で述べた通り、債務整理を始めた場合は、主たる債務者が債務を果たさなかったケースに当たり、金融機関は保証人に代わりの支払いを求めます。

では、債務者としては、保証人に影響を与えずに借金を減らしたり、支払えるようにする方法はないのでしょうか?

主な方法としては、4つ考えられます。

  1. 借り換えローン等を活用する
  2. 身内や会社などに肩代わりしてもらう
  3. なんとか自力で払う
  4. 任意整理を行う


ここからは、それぞれの方法について解説していきます。

なお、債務整理をしないで借金完済を目指す方法については、以下の記事に詳しく書いてありますので、ご参照ください。

債務整理をしないで借金完済を目指すことは可能?ポイントと注意点を解説債務整理は借金問題を解決するための手段の一つにすぎず、借金完済のためにはほかの方法も存在します。 ただし、債務整理以外の方法で借金完済を目指すことは決して簡単ではなく、最終的には計画が破綻してしまう方も多くおられます。 本記事では、債務整理以外の借金返済の方法やポイント、注意点や失敗例について解説をしていきます。...

方法①|借り換えローン等を活用する

保証人への影響を避ける方法として、「借り換えローン」と「おまとめローン」を利用するのが一つの手です。

これらのローンは、銀行や信金等の金融機関や消費者金融からお金を借り、借金をまとめて一括返済し、借りたお金を金融機関に返済するしくみです。

この方法を使えば、保証人のいる借金を完済し、新たな借金を金融機関に返済することになります。

これにより、保証人への影響を回避できます。

これらの方法のメリットは、まず金利の引き下げや返済額の削減です。

低金利のローンに切り替えることで、月々の返済額が下がります。

また、複数の借入れを1本化することで、返済の管理がしやすくなります。

さらに、手数料の節約や返済期間の短縮も可能です。

おまとめローンを利用することで返済総額が増えることも……

一方、デメリットとしては、過去に延滞の履歴がある場合や借入れが多い場合は、新たなローンを組むことや審査に通るのが難しいことがあるという点が挙げられます。

また、返済期間を延ばすことで、総支払額が増える場合もあります。

つまり、金利を下げる一方で、返済期間を長くしすぎると結果的に支払い総額が増えてしまう可能性があるのです。

このように、借り換えやおまとめローンでは、金利を下げたり返済額を減らすことで借金を完済しやすくできる上に、保証人への影響も最小限に抑えられます。

その一方で、審査を通すのが難しいことや、返済期間の延長により総利息額が増加した結果、返済総額が増えてしまうというリスクがあることには注意が必要です。

方法②|身内や会社などに肩代わりしてもらう

第二に、「借金を身内や会社などに肩代わりしてもらう」ことが考えられます。
借金を肩代わりしてもらうことで、借金を一括で返済できます。

そのため、元々の保証人(通常は家族や友人)に負担をかけずに済みます。

また、保証人の信用情報や財政状況への影響を最小限に抑えられます。

さらに、身内や親族、会社に肩代わりしてもらう際は、基本的に利息をつけることはほとんどありません。

そのため、返済負担が軽減され、返済計画も立てやすくなり、日々の生活に対する不安も小さくなるでしょう。


したがって、借金を身内や会社などに肩代わりしてもらうことは、多くの場合、ありがたい支援となります。

肩代わりはけっしていいことではない


しかしながら、このような選択には慎重な判断が欠かせません。


まず第一に、借金を肩代わりしてくれる相手との関係性にひびが入る可能性があるという点です。


昔から、「金の切れ目が縁の切れ目」と言います。

それほど金銭関係は人間関係に悪影響を与えるのです。

そのため、借り入れに際しては、綿密な話し合いや明確な合意が必要です。

また、肩代わりしてくれる人や会社の財政状況が変わるリスクもあります。

お金を貸してくれるタイミングでは、大抵の人が羽振りがよいのです。

ですが、その後に肩代わりしてくれた相手が経済的な困難に直面した場合、「すぐに借金を返してくれ!」と言われるということは、よくあります。

そのため、支援を受ける際には相手の財務状況やリスクをよく理解し、安定したサポートを受けられるかどうかを慎重に考える必要があります。

このように、借金を他者に肩代わりしてもらうことは、一時的な解決策かもしれません。

ですが、デメリットも多数あることから、慎重な検討が必要になるでしょう。

方法③|自力で返済しきる

誰にも頼らず自力で借金を返す、と言う方法もあります。

つまり、「収入を増やして収支を改善して、自力で借金を返しきる」という王道の返済方法です。

もっとも、これが通用するのは「返済可能な金額」に限られるでしょう。

一般論として、借金の総額が年収の3分の1を越えている場合は、債務整理を考えた方が良いと言われています。

借金の総額が年収の3分の1を越えたら絶対に自力返済は無理というわけではありません。

ただし、この金額を越えているなら、債務整理をした方が効率的に、自力返済よりも負担が少ない形で返済が出来るというケースがほとんどです。

こちらの記事で、債務整理をしないで借金完済を目指すために必要な返済額などをご紹介しています。合わせてご参照ください。

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方法④|任意整理を行う

最後に、任意整理を行うことを考えてもよいかもしれません。
任意整理は、日本の個人が自己破産や民事再生などの法的手続きに頼ることなく、負債を整理する手段の一つです。

任意整理とは、債務者(借金をしている人)と債権者(借金を受けている人や機関)が直接交渉し、返済利息や毎月の返済額など、借金の返済条件を有利に変更してもらう手続きです。

まず、債務者は弁護士や債務整理専門の司法書士などの債務整理ができる専門家と相談し、交渉の準備をします。

その後、債務者と債権者は借金の金額や返済条件などを話し合い、合意に達します。

合意が成立したら、支払い計画を作成し、それに基づいて債務者が返済を行います。

保証人に迷惑を掛けず、他の借金を整理できる

任意整理のメリットには、整理する対象を選べるということが挙げられます。
これは、自己破産や個人再生のように、すべての借金を対象としなければならない手続きにはないメリットです。

債務整理をする対象を選べることで、保証人が付いている借金を対象から外しつつ、その他の借金を債務整理できます。

これにより、効果的に借金を減らすことができるなど、負担が小さいのが特徴です。

また、任意整理によって、利息を免除させたり、毎月の返済額を下げられる可能性が高いため、おまとめローンのように利息が発生するために返済期間が伸びるというデメリットも回避できます。

任意整理には注意点も……


ただし、デメリットが全くなく債務整理ができるわけではありません。
デメリットとしては、おまとめローンや身内からの借り入れとは違い、信用情報に影響があります。

そのため、任意整理が終わってから数年間は新たな借り入れが難しくなります。

また、債務者と債権者の合意により和解が成立する必要があります。

ですので、これまでの利用履歴や取引期間などによっては、交渉が難航する場合があることなども問題点として挙げられます。

まとめ

連帯保証人は、主債務者が借金を返済できない場合に、その債務を肩代わりする義務を負います。

債務整理を行うと、約定通りの返済ができなかったとみなされ、金融機関等から保証人に代位弁済を求められます。そのため、保証人に迷惑をかけずに債務整理をすることはできません。

ただし、保証人への影響を避けながら借金を解決する方法はあります。

応報としては、借り換えローンの利用や、身内等に肩代わりしてもらうことなどが考えられます。

また、債務整理であっても、任意整理であれば、保証人のいる借金を整理対象から外すことで、保証人への影響を最小限に抑えつつ、他の借金を整理できる可能性があります。

ですが、これらの方法にはそれぞれ、メリット・デメリットがあります。

ですので、自分の状況に合った方法を慎重に選ぶ必要があります。借金問題を抱えている場合は、一人で悩まず、専門家に相談することをおすすめします。

適切な債務整理の方法を選択し、保証人との関係性にも配慮しながら、前向きに問題解決に取り組むことが大切です。

  • 記事監修者
  • 弁護士 近藤 裕之
  • 翔躍法律事務所 所属
  • 第一東京弁護士会 所属
  • ※法律問題に関するテキスト監修に限る