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債務整理

債務整理の進め方、債務整理の手順や効果について

進め方

債務整理には、大きく分けて任意整理、個人再生、自己破産といった手続きがあります。

それぞれ別の手続であることから、借金減額の効果や進め方、かかる期間が異なります。

そこで、本記事では、債務整理の手続きごとの効果や進め方についてご説明します。

債務整理手続ごとの内容や効果

任意整理

任意整理は、裁判所を通さずに、債務者(借金をしている人)と債権者(お金を貸した人や会社)と交渉し、借金の返済条件を再設定する手続きです。

一般的には、弁護士や司法書士を代理人として行うことが多いです。

具体的には、代理人弁護士・司法書士が、債権者に借金の返済プランを提案します。

例えば、利息を減らしたり、毎月の支払い金額や返済の期間を変更したりすることで、債務者が返済可能であるプランを提案するのです。

債権者がこれを認めて合意に至れば、その返済プランに従って返済を再開することとなります。

任意整理のメリット

任意整理のメリットは、「利息が減ることで、借金を返す総額が減ること」です。

仮に、借金80万円を年利15%で支払おうとすると、最大で利息は1万円近くかかります。

ですが、意整理をすることで利息をなくせば、返済総額の減少や返済期間の短縮と言った効果を得られます。

このように、個別の状況に合わせて支払いの条件を変更できるので、借金を返す負担が軽くなります。

また、裁判所を通さずに手続きができるため、早く柔軟に問題を解決できます

裁判所を通じて行う法的整理(自己破産や個人再生)の場合は、すべての借金を対象として債務整理を行わなければならず、特定の債権者を除外することはできません。

これにより、例えば家族や会社から借金をしている場合は、それらも債権者として含めなければなりません。

他にも、法的整理の場合は、同居している家族の収入などを含めた家計収支を裁判所に提出する必要があることから、家族に内緒で進めることはかなり難しいと言えます。

一方で、任意整理の場合、一部の借金のみを対象とすることが出来るため、家族や会社からの借り入れを除外して、消費者金融やクレジットカードのみの債務整理をすることが出来ます。

さらに、本手続では家族や会社の協力が必須ではないため、内緒で手続きを進められるケースも多いです。

任意整理のデメリット

一方、デメリットもあります。

まず、任意整理することで、信用情報に事故情報が記録されることとなります。

そのため、一定期間新たな借り入れが難しくなる場合があります。

また、債務整理の対象となったカードやキャッシングについては、契約が解除されたり、サービスの利用が制限されることとなります。

さらに、債務整理の対象外のカードやキャッシングにも信用情報が悪影響を及ぼすリスクがあり、こちらも契約の更新や信用情報の定期確認の際に、限度額を縮小されたり、利用停止になる可能性があります。

個人再生

個人再生は、裁判所を通じて行う「法的整理」の一種類です。

任意整理と異なり、裁判所を通さないと行えないという点が大きな違いです。

個人再生は、借金の内、一部を返済することで残りの借金を免除してもらうことのできる手続きです。

具体的には、借金を5分の1程度に減額して返済をする計画を作成し、債権者に認めてもらったうえで裁判所がその計画を許可します。

その後、返済が完了した段階で残りの借金の支払いを免除してもらえるという手続きです。

個人再生のメリット

個人再生にはいくつかのメリットがあります。

まず、任意整理とは異なり、利息のみならず、借金の総額が減らされるため、大幅な借金の減額が期待できます。

また、自己破産と異なり、ローンが残っていない財産は売却する必要がないため、貴重な財産を守ることができます。

さらに、自宅ローンが残っている自宅を保持しながら手続きを進められる点も大きな魅力です。

加えて、職業に関する制限がないため、職業に影響を受けることなく手続きを進めることができます。

個人再生のデメリット

一方で、個人再生にはいくつかのデメリットもあります。

まず、手続きが複雑であることです。

任意整理でも述べた通り、裁判所に対して書類を多数提出しなければなりません。

加えて、同居家族や会社からの書類も提出する必要もあることから、家族や会社に内緒で進めることが出来ない場合があります。

また、全ての債権者を平等に扱わなければならないため、特定の債権者(家族や会社、知人など)を除外することが出来ず、個人再生をしていることを秘密にできないなど、プライバシーが保たれないリスクがあります。

さらに、すべての債務整理に共通ですが、個人再生を行うことで信用情報に影響が及び、将来の金融取引に影響を与える可能性があります。

加えて、財産が多い場合は借金の減額幅が小さくなる可能性があり、借金問題の解決が難しくなる場合があります。

詳しい計算方法は、「債務整理手続きごとの進め方|個人再生」で解説するので、ここでは割愛します。

自己破産

自己破産は、借金問題を解決する手段の一つです。

手持ちの財産や資産を処分・清算しても借金を完済できない状態であることを裁判所に認めてもらい、借金の返済を免除する手続きです。

この手続きでは、借金額の大きさや支払い能力を考慮しない点が個人再生や任意整理と異なり、裁判所の免責許可さえ得られれば、借金を返済せずに済み、借金の負担から解放されます。

ただし、自己破産手続には強力な効果が認められる反面、手続きを利用するためには特別の制約があるということには注意が必要です。

まず、所有する財産の処分が必要であるという点です。

また、個人再生と異なる点として、借金を作った理由やお金の使い方などを調査され、無茶苦茶な借り入れや詐欺的な借り入れ、ギャンブルや投資に使った場合には破産が認められない場合があります。

さらに、自己破産手続き中には職業制限や居住制限、郵便物の閲覧などの制限もあります。

任意整理の進め方

任意整理の手続きは以下のような進め方で進みます。

①相談と委任契約の締結

任意整理を開始するためには、通常、弁護士や司法書士を代理人として行います。

そのためには、まず、相談窓口へ問い合わせをし、任意整理に関する委任契約を結びます。

そして、必要書類(例:本人確認書類や契約書等)を提出し、契約を締結します。

②債権者への通知

委任契約が成立すると、弁護士や司法書士は債権者に対して、依頼を受けた旨を通知します(受任通知)

これにより、債務者に対しては督促が停止し、以後、代理人と債権者がやり取りをするようになります。

③債権調査

代理人に対して、債権者が取引履歴などを開示します。

これにより、債権調査が行われ、過払金や時効の有無などが確認されます。

④交渉

債務が残存していることを確認したら、債権者との交渉を行います。

利息の免除や返済期間の延長など、返済額を軽減する条件が求められます。

⑤和解書の締結

債権者と代理人が返済条件に合意したら、和解書を交わします。

これにより、任意整理の内容が確定します。

➅返済の再開

和解内容に基づいて返済を再開します。計画通りに返済を行い、借金の完済を目指します。

個人再生の進め方

(1)依頼~個人再生申立までの進め方

個人再生は裁判所に本人自ら申し立てをすることが出来ます。

ですので、弁護士や司法書士に依頼せずに進めることも可能ではあります。

ただし、一般的には、書類や手続きの複雑さから委任契約を交わすことがほとんどです。

② 次に、債権者に対して代理人からの通知が送られ、債務者の状況調査や過払い金の計算などが実施されます。

債務の詳細調査が完了し、個人再生の申立書類の準備が行われます。

これには、家計の収支や所有する財産の調査、それらを裏付ける書類の作成が含まれます。

その後、債務者の住所地を管轄する地方裁判所に個人再生の申し立てが行われます。

(2)個人再生申立~返済開始までの進め方

個人再生申し立て後の進め方は以下の通りです:

① 再生手続きの開始

個人再生の申立が受理されると、裁判所が再生手続きを開始します。

この段階で、個人再生委員の選出や履行テストが行われることがあります。

個人再生委員は再生計画案の作成や申立人の支援を担当する人のことです。

債務者の支払能力をテストしたり、再生計画案作成のために面談を行います。

これをクリアすると、個人再生手続きが正式に開始されます。

なお、裁判所によっては、代理人弁護士や司法書士がいる場合は、これらの履行テストなどは省略されるという運用をしているところもあります。

② 再生計画案の提出

再生手続き開始後、裁判所は金融機関に再生計画の開始通知書を送付し、債権者に再生計画案の提出を求めます。

これにより、債権額が確定し、再生計画案が作成されます。

この、再生計画案を作成する際に、「最低弁済額」を算定することとなります。

最低弁済額とは

最低弁済額とは、個人再生で最低限支払わなければならない金額です。

2つの方法で決まります。

  1. 「最低弁済額基準」(総借金額から決める方法)
  2. 「清算価値保障基準」(持っている財産の価値から決める方法)

これらうちで、より大きい金額が最低返済額になります。

例えば、400万円の借金がある場合

①「最低弁済額基準」では100万円が最低返済額になります。

一方、もしも借り主が150万円の財産(車や株式、生命保険など)を持っている場合

②「清算価値保障基準」では150万円が最低返済額になります。

そして、この場合、「清算価値保障基準」の方が高額であるため、最低返済額は150万円になります。

したがって、400万円の借金を150万円に減額、これを支払うことで借金を完済でき、250万円の借金を減らすことができるのです。

【最低弁済額基準】
確定した借金の額最低弁済額
100万円以下そのまま
100万~500万円100万円
500万~1500万円5分の1
1500万~3000万円300万円
3000万円~5000万円10分の1

③ 債権者の議決

再生計画案を作成したら、次は、債権者に再生計画案について決議を求めます。

これは、債権者に再生計画案を承認するかどうかを決定する手続きです。

これらの決議は書面によって行われます。この際に、

  1. 反対した債権者の人数が、総債権者の半数以上だった場合
  2. 反対した債権者の債権総額が総債務の半額以上だった場合

という条件のどちらかを満たすと、再生計画は認可されません。

少しわかりづらいので具体的に3つの事例でお示しします。

債権者債権額
消費者金融A社300万円
消費者金融B社200万円
クレジットカードC社150万円
信販会社D社100万円
個人E1000万円
計5社計 1650万円

という会社から借り入れをしていたとします。

・ケース1
債権者債権額再生計画の賛否
消費者金融A社300万円反対
消費者金融B社200万円反対
クレジットカードC社150万円反対
信販会社D社100万円賛成
個人E1000万円賛成
計5社計 1650万円 

この場合、反対した人数が5票の中3票が反対をしています。

ですので、反対した債権者の債権総額が650万円でも、再生計画は否決されます。

・ケース2
債権者債権額再生計画の賛否
消費者金融A社300万円賛成
消費者金融B社200万円賛成
クレジットカードC社150万円賛成
信販会社D社100万円賛成
個人E1000万円反対
計5社計 1650万円 

この場合、反対したのは5票中1票だけです。

ですが、債権額の約60%を占めるEが反対をしてるので、再生計画は否決されます。

・ケース3
債権者債権額再生計画の賛否
消費者金融A社300万円反対
消費者金融B社200万円反対
クレジットカードC社150万円賛成
信販会社D社100万円賛成
個人E1000万円賛成
計5社計 1650万円 

この場合、反対は5票中2票で過半数が賛成しています。

また、反対債権者の債権総額は500万円(約30%)です。

そのため、再生計画は可決されます。

④ 再生計画案の認可

債権者の議決が可決されると、次に、裁判所に再生計画案が提出されます。

ここで、裁判所が再生計画案の認可または不認可を決定します。

⑤ 再生計画の実行

裁判所で再生計画が認可されたら、その計画に基づき、債務者は各債権者に対して返済を開始します。

通常、返済期間は3年です。

自己破産の進め方

(1)依頼~自己破産の申し立てまでの進め方

依頼から申し立ての進め方は、個人再生とほとんど同じです。

なお、自己破産も本人自ら裁判所に申し立てることが出来ます。

ただし、個人再生と同様に、弁護士や司法書士に依頼をするのが一般的です。

自己破産には2種類の手続がある?

自己破産をする場合、同時廃止事件と管財事件という二つの異なる手続が存在します。

同時廃止事件は、ほとんど財産がない場合や破産理由の詳細な調査は必要がない場合などに選ばれます。

手続きが開始されると同時に終了し、裁判官の判断で再度面接が行われ、その後、免責の許可が出されます。手続きが迅速に終わるため、「同時廃止」と呼ばれます。

一方、「管財事件」は、売却や清算しなければならない財産がある場合や、借金の返済方法に問題がある場合に選択されます。

破産管財人が財産の査定や処理、破産者の調査を行い、その後、債権者の集会で結果を報告し、裁判所が免責の可否を判断します。

このように、大きく手続きの進め方が異なることから、以下、同時廃止事件と管財事件に分けて解説します。

(2)同時廃止事件の場合の進め方

①破産手続きの開始

まず、債務者が裁判所に破産を申し立てます。

同時廃止事件は、債権者に分配するほどの財産がない場合に選ばれます。

②裁判官との面接

次に、債務者は裁判官と面接を行います。

この面接では、債務者の財産状況や破産の経緯について説明します。

本来は、面接後に裁判官は再度審尋を行います。

同時廃止事件の場合は、裁判官との面接と免責審尋が同時に行われることもあります。

この審尋の結果、債務者に対する免責が許可されるかどうかが決定されます。

③破産手続きの終了

裁判所が「同時廃止事件が妥当」と判断すると、破産手続きが開始されたと同時に終了します。

これは、債権者に対する財産の分配がないことを意味します。

免責の許可が出されると、債務者は一定の期間内に債務から解放されます。

(3)管財事件の場合の進め方

①破産管財人の選任

管財事件となった場合では、裁判所が破産管財人を選定します。

この管財人が、破産者の財産の査定や売却、清算処分などを担当します。

なお、管財人は、債務者が裁判所に納めた予納金から報酬を受け取ります。

報酬の額は、負債の状況や裁判所の基準によって異なります。

一般的には30万円から50万円程度です。

②財産の査定と処分

管財人が選定されると、本格的に破産手続きが開始されます。

まず、管財人は破産者の財産を査定し、適切な方法で処分します。これには、財産の売却や清算が含まれます。

③破産者の免責不許可事由の調査

財産の処分の他に、管財人は、破産者の行動や財務状況を調査し、免責不許可事由があるかどうかを確認します。

免責不許可事由がある場合、破産者の免責が認められない可能性があります。

④債権者集会と報告

管財人が財産の処分や免責不許可事由に関する調査を終えると、次に、債権者に調査結果を報告するための債権者集会が開かれます。

この集会では、財産の査定結果や清算処分の内容が債権者に報告されます。

⑤裁判所による免責の判断

債権者集会後、裁判所が破産者の免責を判断します。

破産者の行動や財務状況、管財人の報告などを考慮して、免責の可否を決定します。

➅免責許可決定

免責が許可されると、債務者は借金の支払い義務から解放されることとなります。

まとめ

債務整理には、任意整理、個人再生、自己破産の3つの手続きがあります。

任意整理は、裁判所を通さず、弁護士や司法書士が代理人となって債権者と交渉し、利息の減額や返済期間の延長などを行う方法です。

個人再生は、裁判所を通して借金を大幅に減額し、残りの債務を分割で返済する方法で、一定の財産を守りながら借金問題を解決できます。

自己破産は、裁判所の許可を得て、すべての借金の返済を免除してもらう方法ですが、財産を処分する必要があります。

これらの手続きにはメリットとデメリットがあり、その進め方も異なります。

債務者の状況に応じて、適切な手続きを選択することが重要です。

弁護士や司法書士などの専門家に相談し、アドバイスを受けながら手続きを進めることをおすすめします。