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債務整理

任意整理で返済額はどれくらい減る?具体的にシミュレーション

減る

任意整理とは、借金の返済にかかる利息をカットした上で、無理なく返済できる金額にまで月々の返済額を調整する手続きです。

任意整理では、借金の元本が大きく減ることはないかもしれません。

しかし、任意整理をすると、利息や遅延損害金がカットされるので、返済総額が大幅に減額される場合が多いです。

また、月々の返済額を減らして、返済期間を延ばすことで、余裕をもって返済ができるようになる場合もあります。

本記事では、任意整理でどれくらい返済額減るのかについて解説します。

任意整理で返済額を減る理由、その仕組みとは

任意整理は、個々の債権者と直接交渉をして、利息や損害金の免除や減免を受けた上で、借金を長期間(概ね3~6年程度)かけて分割払いするという内容の和解を締結するものです。

したがって、任意整理によって減らせる返済額には、「総返済額」と「毎月の返済額」という2種類があります。

それぞれどういった仕組みなのか詳しく説明します。

利息や遅延損害金が減る

総返済額とは、借金の完済までに支払う元金、利息および遅延損害金の合計額です。

任意整理では、この内、利息と遅延損害金を「総返済額」から減ることとなります。

「総返済額」からカットできる利息とは、特に「将来利息」のことになります。

将来利息は、完済するまでに発生し続ける契約で定められた通常の利息です。

利息や遅延損害金が減ることで返済が楽になる

借入時の契約により、本来であれば完済に至るまで利息を払い続けなければなりません。

借金を返済している人は、月々「元本と利息」を合わせて払っているはずです。

任意整理すると、

今後の返済にかかる「利息」分をカットできて「元金のみの返済」でよくなります。

将来利息がなくなる分、総返済額が大きく減り、毎月の返済も楽になります。

そして、返済を滞納している場合は、「遅延損害金」を支払わなければなりません。

任意整理をすることでこれも免除される可能性もあります。

本来なら、返済の遅れを解消するまで遅延損害金を払い続けなければなりません。

このように、任意整理の和解が成立し、将来利息・遅延損害金が減ることで、

元金の返済に注力できる可能性が出てきます。

元金は減らせないケースが多い

ただし、任意整理では原則として元金自体を減らすことはできません。

この点については注意が必要です。

また、「経過利息」と呼ばれる利息については、減額されないことがあります。

経過利息とは、任意整理の手続きを開始した後、和解時までに発生する通常の利息です。

債権者によっては経過利息だけは、支払うように要求してくるケースがあります。

さらに、任意整理をしても、和解締結までの遅延損害金の支払いに応じないといけないことも多いです。

したがって、多くの場合、和解が成立した時点ではじめて返済総額が確定します。

過払い金がある場合

2008年以前から借金をしている場合は、過払い金が発生している可能性があります。

当時は、利息制限法が定める制限利率を超過するような、

非常に高い利率で貸付が行われていました。

制限利率を超過する利息は、本来払う必要のないものといえます。

したがって、利息制限法を超える利息を払っていた場合は、

過払い金の返還請求ができます。

過払い金が返ってくることになれば、

残っている借入元金の一部または全額と相殺することができます。

利息や遅延損害金だけではなく、元金まで減額することができるのです。

また、元金より過払い金の方が多い場合には、

残債を0円にした上で、払いすぎた分を返してもらえます。

任意整理で減る月々の返済額

任意整理をすると、「月々の返済額」が減ることもあります。

これにより、毎月の負担を減らし、生活を楽にできる可能性が高いです。

月々の返済額は支払期間で変わる

支払期間を何か月に設定するかによって、毎月の返済額は変わってきます。

任意整理により将来利息が免除されている場合は、返済期間を延ばしても総返済額は増えません。

それなので、月々の返済額は単純に以下の計算式で算出することができます。

毎月の返済額=総返済額÷支払期間に対応する月数

たとえば、総返済額が200万円の方が、支払期間を5年に設定すると、

毎月の返済額は33、300円程度になります。

長期の分割払いについて債権者の合意が得られた場合、

月々の返済額を減らすことができるのです。

通常、任意整理後の返済期間は3~6年間の範囲で設定します。

毎月の負担を抑えたいなら、支払期間をできるだけ長くしてもらった方が良いでしょう。

また、返済期間中に、不測の出費で返済が困難になってしまう可能性も否定できません。

毎月の返済額を決める際には、不測の事態が起きても大丈夫な金額を選びましょう。

その方が、借金を完済できる可能性が高まります。

任意整理は債権者との交渉である点に注意

任意整理は債権者と直接交渉し、合意することで借金の減額を図るものです。

そのため、債権者との交渉能力が重要となります。

このことから、任意整理をする多くの方、は専門の弁護士や司法書士に依頼されます。

支払方法について、債権者の合意が得られないと、任意整理は行えません。

多くのクレジットカード会社や消費者金融は、毎月の支払額があまりに少額になる支払に対しては、合意をしません。

たとえば「毎月500円ずつ支払う」などの条件では、合意してもらえない可能性が高いと言えます。

毎月一定額以上の支払は必要になるので、必ず支払期間を5~6年まで延ばしてもらえるとは限りません。

支払期間と毎月の返済額を決める際には、債務者の支払能力と債権者の意向をうまく調整する必要があります。

任意整理によって減額できる総返済額は?

ここまでは、任意整理をすることで、利息や返済額が減らせるということを説明してきました。

では、具体的に、どのくらいの変化が起きるのでしょうか?

そこで、債務額が50万円の場合と100万円の場合で、

任意整理後の毎月の返済額がどうなるのかをシミュレーションしてみました。

なお、金額の計算にはこちらのウェブサイトを利用しています。

債務額50万円の場合のシミュレーション

任意整理をしない場合のシミュレーション

50万円の借入を金利18%、36回払い(3年間)元利均等方法で返済をする場合
元金500,000円
利息150,721円
総返済額650,721円(元金分500,000円+利息分150,721円)
月々の返済額18,076円
50万円の借入を金利18%、60回払い(5年間)元利均等方法で返済をする場合、
元金500,000円
利息261,781円
総返済額761,781円(元金分500,000円+利息分261,781円)
月々の返済額12,696円

任意整理をする場合のシミュレーション

任意整理をする場合、原則として、利息・遅延損害金をカットしてもらい、元金だけを分割払いしていく内容での和解を目指します。

そこで、総返済額は元金の50万円と仮定しましょう。

返済回数が36回(3年間)での分割払い
元金500,000円
利息0円
総返済額500,000円(元金分500,000円+利息分0円)
月々の返済額13,888円
返済回数が60回(5年間)での分割払い
元金500,000円
利息0円
総返済額500,000円(元金分500,000円+利息分0円)
月々の返済額8,333円

このように、任意整理をすることで、元金のみの支払いでよくなります。

また、任意整理をすると、返済期間は変わらず、毎月の返済額は大きく減ります。

債務額100万円の場合のシミュレーション

任意整理をしない場合のシミュレーション

100万円を借り入れて金利15%、36回払い(3年間)元利均等方法で返済をする場合
元金1,000,000円
利息247,934円
総返済額1,247,934円(元金分1,000,000円+利息分247,934円)
月々の返済額34,665円
100万円を借り入れて金利15%、60回払い(5年間)元利均等方法で返済をする場合
元金1,000,000円
利息427,378円
総返済額1,427,378円(元金分1,000,000円+利息分427,378円)
月々の返済額23,789円

このように、5年間での支払いの場合は、利息分で約43万円も支払うことになります。

任意整理をする場合のシミュレーション

返済総額は元金の100万円と仮定します。

50万円のシミュレーションと同様に、和解締結までに発生した利息や損害金については、計算の便宜上、ここでは無視します。

返済回数が36回(3年間)で和解できた場合
元金1,000,000円
利息0円
総返済額1,000,000円(元金分1,000,000円+利息分0円)
月々の返済額27,777円
返済回数が60回(5年間)で和解できた場合
元金1,000,000円
利息0円
総返済額1,000,000円(元金分1,000,000円+利息分0円)
月々の返済額16,666円

となります。

以上のシミュレーションからも分かることとして、

任意整理前の借金額が大きいほど、また、約定の金利が高いほど、

任意整理後に減少する額が大きくなります。

また、手続前の返済回数が少ない(毎月の返済額が大きい)場合も、

任意整理による大きなメリットを受けられます。

一定以上の返済回数で合意をすることにより、

毎月の返済の負担を減らすことができるからです。

任意整理による借金減額が適している人

任意整理に適さないケース

任意整理をすると、毎月の返済額を減る可能性はあります。

しかし、任意整理では元金の額を減ることはありません。

元金の額が大きい場合は、どれだけ金額が減るとしても、

どうしても月々の返済額が払えない額になってしまうことがあります。

したがって、借金が多額の場合は、任意整理での解決は難しくなってきます。

また、任意整理では、利息や遅延損害金を減免できることに一番のメリットがあります。

そのため、利息の高い消費者金融やクレジットカード等を利用している場合、

任意整理により返済総額が減る可能性が期待できます。

反対に、もともとの利息の低いローンの場合は、利息が減る効果を実感しにくいです。

特に、自動車ローンや奨学金等は金利が5%未満であることも多いため、減額には適さないケースが多いと言えます。

任意整理に適している人

任意整理による解決が適していのは、以下のような人です。

  • 毎月一定以上の収入がある人
  • キャッシング、消費者金融、銀行のカードローンなどの高金利のローンを利用している人
  • 毎月の返済額が高額になっていて厳しいが、返済額が減ることで返済が可能支払える人

月々の返済額について、弁護士・司法書士とよく相談して、任意整理が実行できるかどうか考えてみましょう。

任意整理をしても返済が困難であると判断したなら、他の方法も視野に入れて検討してみましょう。

任意整理以外の債務整理では返済額がどれくらい減る?

借金問題の解決手段としての債務整理には、任意整理以外にも

  • 「個人再生」
  • 「自己破産」

という方法があります。

任意整理よりも「個人再生」や「自己破産」のほうが、総返済額が減る割合が大きいです。

ここからは、個人再生や自己破産を行った場合、月々の返済額がどうなるのか解説します。

借金の元金が減る個人再生

「個人再生」は、返済不能の状況に陥るおそれがある人が、裁判所に申立てて認可を受けることで、総返済額を減らしてもらう手続きです。

この手続きを取ると、債務額が5分の1~10分の1程度にまで減る可能性があります。

ただし、債務額に応じて、債権者に対して支払わなければならない「最低弁済額」が定められています。

なお、財産の合計額(清算価値)が最低弁済額を超える場合、財産の合計額が弁済額として算出されます。

※小規模個人再生の場合

個人再生における「最低弁済額」

債務額最低弁済額
100万円未満債務額の全額 (減額なし)
100万円以上500万円以下100万円
500万円を超え1500万円以下債務額の5分の1
1500万円を超え3000万円以下300万円
3000万円を超え5000万円以下総額の10分の1

※債務額には住宅ローンは含まれない

債務額が300万円で小規模個人再生手続を行えば、総返済額は100万円、月々の返済額は2万7、778円に減ることとなります。

債務額が600万円の場合は、最低弁済額は債務額の5分の1となる120万円に減ります。

また、月々の返済額は3万3333円に減ることとなります。

残った債務は、原則として3年、特別な事情のある場合は、最長5年間で分割返済することになります。

返済を免除される自己破産

自己破産は、裁判所を通じて、債務者のすべての債務の支払義務を免除してもらう手続です。

多額の債務があって、自己の収入では完済の見込がなく、返済不能の状態になった人が利用する手続きとなります。

自己破産の場合、裁判所が免責の許可を決定すると、総返済額も月々の返済額もゼロになります。

ただし、免責されない種類の債務があり、借入原因によっては免責が許可されないこともあります。

そして、債務者は所有している財産を清算しなければならず、基本的に住宅や自動車などは処分されて債権者への返済に充てられてしまいます。

そのため、自己破産がその人に適した手続きかどうかは、専門的な知識に基づいて、慎重に判断した上で進めなければなりません。

また、自己破産や個人再生は、裁判所を介した手続きとなるので、煩雑な書類のやり取りが必用となります。

したがって、自己破産や個人再生についても、基本的には、弁護士や司法書士に依頼をして手続きを行うことが必用となります。

まとめ

任意整理により、借入金額が数十万円程度でも数百万円ある場合でも、総返済額と月々の返済額を大きく減らせる可能性があります。

総返済額があまり減らない場合でも、月々の返済額を減額できるだけで生活がずいぶん楽になるでしょう。

クレジットカードで買い物をした場合の立替金についても、リボ払いをするのであれば、基本的な考え方は同じです。

任意整理は、裁判所を介さない私的な整理手続で、自己破産や個人再生と比較して、ハードルが低いといえます。

自己破産や個人再生は避けたいとか、条件を見直せば返済をしていけるといった場合には、まず任意整理による解決を検討してみて下さい。

借入の状況によっては、返済額を大きく減額できます。

どのくらい借金が減るか知りたい場合には、債務整理を専門としている司法書士や弁護士に問い合わせれば、だいたいの額はすぐに教えてもらえます。

借金問題で悩んでいる人は、早期に弁護士・司法書士に相談し、任意整理で解決できるのか、個人再生や自己破産といった別の方法を選択するべきなのかを検討することをお勧めします。