市役所
債務整理の相談を考える際には、
まずは弁護士や司法書士などの法律専門家が思い浮かびます。
しかし、他にも相談できる場所がないというわけではありません。
国や地方自治体の生活相談窓口や福祉課、社会福祉協議会などに、
法律問題の相談窓口を設置しているケースもあります。
市役所で相談する利点は、
無料で専門家に相談できること
公的融資制度のアドバイスを受けられる点です。
ただし、無料相談を行っている専門家が必ずしも借金問題に詳しいとは限りません。
この記事では、市役所での債務整理相談のメリットや注意点について詳しく解説します。
市役所で債務整理相談は可能?

借金相談を考えるとき、まずは身近な人や、弁護士や司法書士と考えるでしょう。
ですが、実は市役所にも、窓口を設置しており、借金相談をすることができます。
その主な窓口として、生活相談窓口や福祉課、社会福祉協議会などが挙げられます。
また、金融庁が各市町村の消費生活センターと提携し、多重債務に関する相談窓口を設置しています。
市役所に消費生活センターが併設されている場合は、こちらでも相談が可能です。
借金問題を相談できる市役所は増えている
多重債務者とは、複数の金融機関から借金をしている人を指し、その数は減少傾向にありますが、2022年3月末時点で116万人に上ります。
また、我が国の消費者金融の利用者は少なくとも1400万人であり、多重債務者は200万人超との指摘があります。
これらの多重債務者の発生予防と、既存の多重債務者の支援を行うことを目的として、内閣府の多重債務者対策本部が2007年に設立され、「多重債務問題改善プログラム」が策定されました。
金融庁「多重債務問題改善プログラム」
このプログラムでは、改正貸金業法(上限金利の引下げ、総量規制の導入等)による貸し手の規制だけでなく、借り手対策が必要とされています。
具体的には、
- ・相談窓口の整備・強化
- ・セーフティネット貸付けの提供
- ・金融経済教育の強化
- ・ヤミ金の撲滅に向けた取締りの強化
などを政策の柱としています。
特に、相談窓口の整備・強化に関しては、
国・自治体・関係団体などの連携を強化しており、市役所を中心とした窓口整備や強化がされるようになったのです。
市役所で債務整理相談をするメリット
市役所での相談のメリット①|無料で気軽に相談ができる
まず、第一のメリットとして、無料で気軽に相談が出来るという点が挙げられます。
借金問題に悩む多くの人は返済が難しく、相談にお金を払う余裕がないかもしれません。
しかし、市役所での相談なら、無料で応じてもらえることが多く心配はありません。
また、家族や知人に相談しにくい借金の問題ではありますが、
「いきなり法律事務所や司法書士事務所に相談するというのは、やはり心理的なハードルや敷居が高い」
と感じてしまう方もおられるでしょう。
そのようなときには、身近な公的機関である市役所での相談ならば、心理的な抵抗が少なく、躊躇なく相談に行けるでしょう。
これにより、市役所が借金問題についての解決策を提示してくれたり、間を取り持って弁護士や司法書士、その他の専門機関などの取次をしてくれることにより、問題解決へ近づくことが出来るかもしれません。
なお、市役所での法律相談は無料であることから、
「無料とのことだけれど、ちゃんとした対応をしてもらえるのか?」
と不安を覚えるかもしれません。
ご安心ください。
市役所の開催する無料の法律相談であれば、専門の資格を有する弁護士や司法書士が相談を担当しています。
これは、前述の多重債務問題改善プログラムの一環として行われているものです。
弁護士会や司法書士会、法テラスから法律の専門家が派遣されます。
そのため、相談に対応し、法律の観点から、個別の事情に合わせた的確なアドバイスを提供してくれることが期待できるでしょう。
市役所での相談のメリット②|公的な融資制度や扶助制度の幅広いアドバイスを受けられる
借金相談をする方の中には、すでに生活に深刻な問題を抱えている方がいます。
率直にいうと、
「今月の家賃が支払えない」
「手元にほとんどお金がない」
「税金を滞納しており、差押えの危機にある」
といった状況に、既に陥っていることがよくあるのです。
このような方に対して、弁護士や司法書士は、借金問題の解決方法を提案することは可能ではあります。
ですが、生活に困っている方々に金銭援助を行うことはできません。
一方で、市役所などの公的機関では、相談内容に基づいて公的融資制度の案内を受けることができます。
公的な金銭の支援制度というと、「生活保護制度」が真っ先に思いつくかもしれません。
ですが、ほかにも利用できる方法はあり、
- 生活困難者が社会復帰に向けての活動をしやすいよう支援する生活困窮者自立支援制度
- 生活困難者や住民税非課税世帯に対して食品を提供することで飢餓を防ぐ食料支援事業
- 仕事と住まいの両方を確保、困窮状態に陥ることを防ぐ住宅支援給付金制度
などの情報提供、支援を受けられる可能性があります。
また、公的機関には様々な給付、融資制度が存在しており、
これらを利用することで、
家賃の滞納、再就職までの生活費などの直近の問題を改善できる場合があります。
市役所で受けられる支援策の例
緊急小口資金
内容 | 休業等による収入の減少で生計維持が困難な世帯に対し、緊急かつ一時的な貸付を提供。 |
貸付上限額 | 20万円以内 |
返済期限 | 2年以内、無利子・保証人不要 |
窓口 | 市区町村の社会福祉協議会 |
総合支援金
内容 | 失業者向けの生活再建費用の貸付制度 |
貸付上限額 | 単身世帯15万円以内、2人以上世帯20万円以内 |
返済期限 | 10年以内、無利子・保証人不要 |
窓口 | 市区町村の社会福祉協議会 |
内容 | 国民年金・厚生年金保険等の年金を担保に融資を受ける制度 |
融資額 | 要件に応じて決定、連帯保証人が必要 |
返済期限 | 年金から返済 |
窓口 | 受託金融機関 |
年金担保貸付制度
求職者支援資金融資制度 | |
内容 | 職業訓練受講中の生活費が不足する人に融資 |
融資額 | 月額5万・10万×訓練月数 |
窓口 | ハローワーク |
教育一般貸付
内容 | 教育ローン制度 |
上限 | 350万円まで、金利1.95% |
窓口 | 日本政策金融公庫 |
住居確保給付金
内容 | 収入減少により家賃支払いが困難な人に支給 |
支給期間 | 3カ月間(最大9カ月延長可) |
窓口 | 生活自立支援センター等 |
市役所で債務整理相談をする際の注意点

ここまで市役所での債務整理の相談についての利点を見てきました。
市役所での借金相談には利点がありますが、注意すべき点も存在します。
特に、債務整理を検討している場合は、市役所だけでは手続きが完結しないということを覚えておく必要があります。
次からは、市役所で借金相談をする際の注意点について解説します。
市役所での相談の注意点①|時間的、場所的な制限がある
役所での借金相談には、時間や場所に関するルールがあり、時には相談が制限されることがあります。
まず、市役所が行う法律相談は、日時や場所が指定される場合があり、事前の予約が必要なこともあります。
また、市役所での相談は通常、平日の9時から17時の間に限られています。
そのため、平日に仕事をしている方の場合は、気軽に相談に行けない事態も考えられます。
さらに、相談者の数が多い場合や、会場の都合で予約や相談時間に融通が利かないこともありえます。
これに加えて、具体的な条件は、町や市によって異なりますが、市役所の借金相談には利用可能な条件が設けられることがあります。
例えば、相談の時間も1回30分などが決まっているため、
「相談時間が短く、全部を相談する前に時間が終わってしまって、解決策が見つからなかった…」
ということも起こり得るのです。
市役所での相談の注意点②|相談可能な専門家を選べない
市役所での借金相談には、専門家を自由に選ぶことができないという問題点もあります。
日常生活の中で接する法律問題は多岐にわたります。
- 労働問題
- 金銭トラブル
- 男女問題
- 離婚や家族問題
- 慰謝料請求事件
- 損害賠償請求
- 警察沙汰
など、数え切れないほどのジャンルが存在します。
弁護士や司法書士も、、各人が得意な分野や取り扱う分野があるため、個々の専門性があります。
そのため、市役所の借金相談では、
- 担当する弁護士や司法書士が必ずしも借金問題に熟知していない場合
- 特定の相談内容に対応できない場合
もあることに留意する必要があります。
また、市役所の無料相談に、弁護士や司法書士が相談者に対してランダムに割り当てられるため、その人と相性が合わないこともあります。
市役所での相談の注意点③|借金問題が解決するとは限らない
市役所の借金相談は、安心感や将来の方針を考える手助けとして有益なアドバイスを提供しますが、それで借金問題が解決するわけではありません。
借金が返済不能な状況にある場合は、債務整理などの合法的な手段を検討する必要があります。
闇金からの借金で悩んでいる場合は、弁護士や司法書士と言った専門家を介して、問題に対処するしかありません。
市役所の借金相談は、無料で利用できて方向性を見極めることが出来るうえに、公的な支援制度を利用することも選択肢として考慮する上で有益です。
ただ、深刻な借金問題の解決のためには限界があり市役所の借金相談では全ての問題を解決できるわけではないという点がデメリットと言えます。
債務整理を検討しているなら債務整理を得意とする事務所に無料相談をするべき

【まとめ】
市役所では、最近では借金問題に関する相談窓口を設置する自治体が増えており、そこで多重債務の対策に取り組んでいます。このような取り組みにより、市役所には借金問題に関する相談が可能です。
市役所での債務整理相談には、いくつかのメリットがあります。
まず、相談が無料であり、気軽に利用することができます。
また、公的な融資制度や扶助制度に関するアドバイスを受けることもできます。
特に、経済的に困窮している方にとっては、市役所が即座に支援を提供している場合があり、生活が苦しい状況にある方にとっては有効な手段と言えます。
しかし、市役所での債務整理相談にはいくつかの注意点も存在します。
まず、時間的な制約があることが挙げられます。
また、相談できる専門家を選ぶことができないため、自身の状況に最適なアドバイスを得ることが難しい場合があります。
さらに、借金問題が解決するとは限らないこともありますので、その点にも留意する必要があります。
【最後に】
これまでに、市役所で債務整理相談を行うことの利点と注意点について解説してきました。
確かに、市役所等の公的機関で行っている法律相談でも、無料で借金問題の相談が可能であり、公的支援が提供されている場合もあります。
そのため、市役所での相談は有益であると言えます。
しかし、一方で、土日や祝日に相談が難しい点や、相談場所が限られているという欠点にも留意する必要があります。
さらに、市役所に相談しても、必ずしも借金問題が解決するとは限りません。
借金問題を解決したい場合は、弁護士や司法書士に債務整理を依頼する必要があります。
そのため、すでに債務整理を依頼しようと考えている、または前向きに検討している段階なら、債務整理を得意とする事務所に無料相談をすることも考えていいでしょう。
弁護士や司法書士に相談するなら、債務整理を得意とする事務所を選ぶべき
債務整理を得意とする事務所では
- 回数に制限なく無料で相談に応じてもらえる
- 18時以降や土日祝日などにも無料相談が可能、時間の融通が利きやすい
という点で、市役所の無料相談より優れている場面が多くあります。
加えて、債務整理を得意とする事務所では、担当する弁護士や司法書士が借金問題に詳しく、相談内容に対応できないというケースが少ないため、市役所の借金相談では得られない充実した相談時間を過ごすことができるでしょう。
最後に、債務整理を得意とする弁護士や司法書士に相談をすることで、そこからスムーズに依頼、契約に進むことが出来、債務整理手続きに移行することが可能です。
これによって、借金問題は大きく解決に向けて前進することでしょう。