委任契約
債務整理手続きの際、多くの方は弁護士や司法書士といった専門家に依頼して行います。
その際には、弁護士や司法書士と債務整理委任契約を結ぶこととなります。
この委任契約を結ぶことで、正式に弁護士や司法書士が債務整理手続きに着手します。
そして、督促のストップや支払いの停止など様々な効果を得ることができます。
この記事では、
- 債務整理の委任契約とはどのようなものか
- 手続きの流れとその効果
について解説します。
委任契約とは
そもそも委任契約ってなに?
委任契約は、一方の当事者が法律行為を相手方に委託し、相手方がこれを受け入れて効力を生じる契約です(民法643条)。
法律行為とは、法律行為とは、契約を締結するための意思表示などが該当します。
例えば、代理人に土地を買うようにお願いする委任契約では、土地の所有権が本人に移ります。
このように法律的な効果が発生することを法律行為といいます。
委任契約に似たものとして、準委任契約や請負契約があります。
準委任契約は、事実行為(事務処理)の委託を定めた契約です。
広範な業務委託に関連します(民法656条)。
また、請負契約は仕事の完成を約し、その成果に対して報酬を支払うという契約であり、仕事の完了が契約内容となります(民法632条)。
要するに
- ・委任契約は法的行為を委託すること
- ・準委任契約は事務処理の委託をすること
- ・請負契約は仕事の完了に対して対価を支払うこと
などと、それぞれ異なる法的性質と責任を伴います。
債務整理の委任契約は弁護士や司法書士に債務整理手続を行ってもらうこと
さて、具体的に債務整理の委任契約とはどのようなものでしょうか。
債務整理委任手続きとは「借金のある人が、債務整理手続きという法律行為を行うことを、弁護士や司法書士に委任し、これを弁護士や司法書士がこれを承諾することで成立する契約」です。
簡単に言うと、債務整理を依頼し、代理人となってもらうということです。
なお、委任契約では報酬は契約の成立条件ではありません。
ですから、理論上は無料で債務整理を依頼することもできるはずです。
ただ、あくまで成立条件ではないというだけで、報酬を契約の内容にすることは民法上でも認められています。
また、弁護士や司法書士も仕事を依頼しているわけです。
ですから、それ相応の費用や報酬を支払うのは、当然と言えば当然です。
債務整理委任契約の手続きの流れ
ここまでのまとめ
- 委任契約は法律行為を一方の当事者から相手方に委託し、その委任が受け入れられて法的な効力が生じる契約であり、民法643条で規定されています。
- この契約は法律行為を包括し、例えば代理人に土地の購入を依頼する場合など、法的な効果を伴う行為に用いられます。
- また、準委任契約や請負契約といった関連する契約も存在し、それぞれ異なる法的性質と責任を持っています。
債務整理委任契約とは
- 債務整理委任契約は、特定の法的手続きである債務整理手続きを、借金をしている人が、弁護士や司法書士といった専門家に依頼し、その依頼が承諾されることで成立します。
- 簡単に言えば、借金整理を専門家に依頼する契約です。
手続きの流れ
では、具体的に、どのような手続きの流れで、債務整理の委任契約を行うのでしょうか。
債務整理の委任契約には、以下の3つのステップがあります。
- ①弁護士や司法書士と面談を行う
- ②委任契約を締結する
- ③手続きがスタートする
以下、1つずつ詳細に解説していきます。
①弁護士や司法書士と面談を行う
弁護士や司法書士に債務整理の委任契約をするためには、まず、弁護士や司法書士と面談を行う必要があります。
ここで、債務の金額や支払額、契約時期、返済状況などを確認することで、適切な債務整理を提案とそれにかかる費用を説明することとなります。
弁護士や司法書士との面談は、直接に来書し、対面での面談を基本としています。
ただし、電話やwebシステムの利用により、代わりとすることが出来る場合があります。
なお、弁護士や司法書士との相談を考えているのであれば、
- ・利用している貸金業者名
- ・借入額
- ・契約期間
- ・返済の状況(問題なく支払っているのか、滞っているのかなど)
- ・相手方や裁判所から通知が届いていないか
などを、おおよそでいいので事前に確認していると、スムーズに面談が行えます。
②委任契約を締結する
面談後、債務整理を弁護士や司法書士に頼むことを決めたら、次に委任契約を結びます。
委任契約は口頭でも有効です。
ただし、通常は契約書を作成、署名して契約を成立させます。
契約書には委任契約の詳細や着手金などの費用に関する情報が記載されています。
その際に注意すべき点は、費用の点です。
まず、着手金などの費用が通常前払いとなることが多いということは、念頭に置いておきましょう。
また、一部の事務所では分割払いも許可していますが、その条件や回数は異なります。
支払額についても、債務整理の手続によって差があります。
例えば、任意整理や個人再生と言った借金の返済を前提とする手続きの場合は、
将来的に必要な返済額を基準にすることが多いです。
これは、将来的な債務整理の履行可能性のテストという側面があります。
一回の支払額については、十分に理解を深めて、納得した状態で契約をするべきでしょう。
そのため、契約書を詳細にチェックし、疑問点があれば専門家に質問しましょう。
これにより、依頼の条件や費用が明確になり、債務整理手続きが円滑に進行します。
③手続きがスタートする
委任契約が成立すると、債務整理手続がスタートします。
債務整理が開始されると、まず、弁護士や司法書士が相手方に対して「債務整理の依頼を受けた旨の通知」を貸金業者各社に対して送付します。
この段階で債務整理に関する各種の効果が発生するようになります。
一方、依頼をしたことにより、弁護士や司法書士に対して、着手金や事務手数料等の報酬の支払いも開始されます。
また、債務整理の進行段階に応じて、必要な資料や情報の提出を求められたり、手続きの進め方を決めるために、弁護士や司法書士からの連絡が来ることもあります。
債務整理は、弁護士や司法書士のみで勝手に進めることはできません。
依頼者には情報提供や方針の決定に関する相談、費用の支払いと言った義務の履行に応じる必要があります。
これらを無視して債務整理手続を進めることはできず、報酬支払い義務や情報提供の義務に応じないなどの契約違反を続けた場合は、弁護士や司法書士が契約を解除してしまうこともあることは、十分に理解してください。
債務整理委任契約の効果
次に、債務整理を弁護士や司法書士に依頼した場合に、どのような効果が得られるのかについて、解説します。
具体的には、以下のようなメリットを享受できるということがあります。
- 💡支払の督促の連絡がストップする
- 💡債務整理が終わるまで返済を止めることができる
- 💡債務整理に必要な手続きを弁護士や司法書士がサポートしてくれる
支払の督促がストップする
通常、借金を返済できなかったり、支払いが難しい場合、貸金業者からは通知や電話で支払いの督促が来ます。
しかし、弁護士や司法書士があなたの代理人になると、状況が大きく変わります。
弁護士や司法書士が代理人になると、債権者(貸金業者)に通知を送ります。
その結果、債権者からの督促や取り立てが一時的にストップします。
これは貸金業法で認められており、弁護士や司法書士に依頼した後は、貸金業者が債務者に対して法的に督促を行うことが禁止されます。
これにより、平穏な生活に戻り、将来の計画を冷静に立てる時間を持つことができます。
債務整理が終わるまで返済を止めることができる
債務整理を司法書士や弁護士に依頼する利点に「債務整理中に債権者への返済が一時停止できる」というものがあります。
これは、債務整理の期間中、各社への借金返済を一時停止できることを意味します。
では、なぜ返済が一時停止できるのでしょうか?
債務整理は簡単に言うと、借金の返済方法や金額を決めるための手続きです。
そして、債務整理の期間に代理人は、債権者との交渉をして返済条件を決めたり、
裁判所への自己破産や個人再生の申立を行うことで借金問題の解消方法を決めます。
つまり、債務整理期間中は、具体的な返済方法や金額がまだ確定していないのです。
そのため、返済方法が決まるまでは、借金の返済を停止することができるのです。
言い換えると、債務整理が完了し、正式に返済計画が確定するまで、
債権者には一時的に待ってもらうことになるのです。
これにより、債権者への毎月何万円という支払いをストップできるので、
その間に生活を立て直すチャンスが生まれます。
これが大きなメリットと言えます。
債務整理に必要な手続きを弁護士や司法書士がサポートしてくれる
債務整理は、借金の返済を楽にする効果がありますが、同時に複雑な手続きと専門的な法律知識が必要です。
そのため、一般の人が自分の力で単独で行うのは難しいです。
たとえば、自己破産や個人再生を申し立てる場合、裁判所に提出する書類を用意しなければなりません。
また、各債権者から借金の詳細を集め、自己破産手続き中であることを伝える必要があります。
これらの作業を自分でやろうとすると、多くの労力と時間がかかります。
さらに、支払いが遅れている債権者に連絡して待ってもらう交渉も必要で、これが気が重く感じられます。
しかし、弁護士や司法書士に債務整理を依頼すると、必要な書類を準備、作成してくれますし、自筆での記載が必要なものも書き方から丁寧に教えてもらえます。
また、債権者との連絡や交渉も代行してくれます。そのため、専門家に助けてもらうことで、時間や手間をを軽減し、自分の生活に集中しやすくなります。
まとめ
債務整理委任契約とは
委任契約は、一方の当事者が法律行為を相手方に委託し、相手方がこれを受け入れて効力を生じる契約です(民法643条)。
そして、債務整理委任契約は、借金問題を抱えた個人が、弁護士や司法書士に対して、債務整理手続きを依頼するための契約のことです。
債務整理委任契約の流れ
最初に、債務整理を必要とする個人は、弁護士や司法書士との相談や面談を行います。
この段階で、借金の状況や種類、金額、支払い状況などを詳しく確認し、その人に適した債務整理方法を提案します。
相談や面談には対面で行うことが一般的ですが、場合によっては電話やオンラインミーティングを通じて行うこともあります。
次に、債務整理手続きを進めるために、委任契約書を作成し、関係者の署名を得る過程があります。
この契約書には、債務整理に関連する詳細事項や、弁護士や司法書士への報酬に関する情報が含まれています。
そして、委任契約が成立すると、債務整理の実際の手続きがスタートします。
債務整理委任契約の効果
債務整理委任契約にはいくつかの重要な効果があります。
まず、支払いの督促がストップします。
弁護士や司法書士が代理人として介入すると、状況が大きく変わり、債権者からの督促や取り立てが一時的にストップします。
この効果により、精神的負担が軽減され、平穏な生活に戻る時間が得られます。
また、債務整理が終わるまで返済を停止できる点も重要です。
債務整理は借金の返済方法や金額を決定するプロセスであり、その期間中、具体的な返済方法や金額が確定していないため、借金の返済を一時停止できます。
この期間を利用して、生活を立て直すチャンスが生まれ、大きなメリットとなります。
最後に、債務整理に必要な手続きを弁護士や司法書士がサポートしてくれる点があります。
債務整理は複雑で専門的な手続きが必要ですが、専門家に依頼すると、必要な書類の準備や作成、記載方法の指導、債権者との連絡や交渉などを代行してくれます。