債務整理

債務整理をするのに条件はあるのか?

債務整理とは、借金の返済に悩んでいる方を救済するための制度です。

主に、任意整理個人再生自己破産という方法があります。

債務整理を検討しているが自分はできるのかを知りたいという方は多いです。

債務整理をするには条件はあるのでしょうか?

この記事でわかること💡

各債務整理手続きの条件について

手続きができない場合の解決方法

債務整理とは?

債務整理とは、返済が困難な借金の減額や免除、返済方法の決め直しをして生活を立て直していく手続手続きのことです。

債務整理には主に「任意整理」「自己破産」「個人再生」があります。

種類ごとにどのような手続なのか解説します。

任意整理

任意整理とは、債権者(貸金業者など)と直接交渉し、将来利息のカットや返済方法の決め直しをして毎月の返済の負担を軽くする手続きです。

「毎月の返済がしんどい」「完済がいつなのか分からず先が見えない」とお悩みの方は多くいます。

この原因は利息の存在です。

債権者との交渉で将来利息のカットしてもらうことで、返済した金額が元金に充てられるので借金の減りも早く、支払う総額を押さえることができます。

任意整理をすると借金を完済する見通しが立ちます。

任意整理の流れは、相談後、正式に依頼となれば債権者に受任通知(代理人として手続を始めることを知らせる通知)を送付し取立て・返済をストップさせます。

同時に債権者から取引履歴を取り寄せ、現在の借金の額がいくらなのか調査します。

この調査で利息を多く払いすぎていないかも調べます。

利息を多く払い過ぎていた場合に過払金が発生していれば元金を減額ができる可能性があります。

調査が終われば、現在の借金の額をもとに返済計画を立て、将来利息のカットや過払金があれば元金の減額を債権者と交渉をしていきます。

和解が成立すると和解内容の通りに返済を開始していきます。

返済期間はおおむね3年から5年です。

個人再生

個人再生とは、借金の総額を少なくし少なくなった後の金額を原則3年(最長5年)で分割して返済する再生計画を立て、裁判所に認めてもらう手続です。

借金の総額を5分の1から10分の1程度に減額することができます。

個人再生の流れは、相談後、正式に依頼となれば債権者(貸金業者など)に受任通知(代理人として手続を始めることを知らせる通知)を送付し取立て・返済をストップさせます。

同時に債権者から取引履歴を取り寄せ、現在の借金の額がいくらなのか調査します。

また、依頼者の収支や財産の状況などについても調査します。

調査後、必要書類を用意し申立書を作成し裁判所に提出します。

申立て後、個人再生手続きが開始されると借金の金額の調査が行われ金額を確定させます。

借金の金額が確定すると再生計画案を作成します。

この再生計画案を債権者が承認し、裁判所に認可してもらう必要があります。

再生計画案が認可されるためには確実に再生計画通りに返済できる見込みが必要です。

計画通りに返済できるかを確認する「履行テスト」というものがあります。

「履行テスト」とは、期日までに決められた金額の振込みを原則的に6ヶ月間行い問題なく返済ができるかを確認します。

この「履行テスト」をクリアし、再生計画案を債権者が承認し、裁判所に認可してもらえれば手続きは完了です。

再生計画案の通り返済をしていきます。

自己破産

自己破産とは、借金返済が難しい状況を裁判所に認めてもらい、借金の返済義務が免除される手続です。

自己破産の流れは、相談後、正式に依頼となれば債権者(貸金業者など)に受任通知(代理人として手続を始めることを知らせる通知)を送付し取立て・返済をストップさせます。

同時に債権者から取引履歴を取り寄せ、現在の借金の額がいくらなのか調査します。

また、依頼者の収支や財産の状況や借入理由などの事情についても調査します。

調査後、必要書類を用意し申立書を作成し裁判所に提出します。

通常なら裁判所は破産管財人(財産の調査などをする弁護士)を選任し、破産管財人が申立人の財産を調査し、換価・処分し債権者に配当します。

しかし、一定の財産がなく、債務が増えてきた経緯に大きな問題がないことが証明できた場合は、「同時廃止事件」として手続きが進みます。

「同時廃止事件」では、破産手続きの開始決定と破産手続きを終了させる廃止決定が同時に行われます。

開始決定が出た後に、債権者から免責についての異議申立などの意見を聞きます。

また、裁判所が必要と判断した場合は免責審尋(裁判官との面接)が設定されます。

免責審尋で裁判官は破産に至った事情や反省しているかを確認します。

このような手続きを経て問題がなければ裁判所は免責許可の決定を出します。

免責許可決定が出れば借金の返済義務は免除されます。

債務整理をするには条件はあるのか?

債務整理の種類によって、手続できる条件がそれぞれあります。

種類別にどのような条件があるのかと条件を満たさず手続きができない場合の解決策を解説していきます。

任意整理の条件

借金を3年~5年で返済できる安定した収入があること

任意整理は借金がある程度は減額されますが、借金を3年~5年程度で返済する手続きですので、ある程度の安定収入が必要です。

また、裁判所を通さない手続なので、債権者と交渉して和解に応じてもらう必要があります。

ある程度完済までの返済計画を立てられる状況でないと、債権者は交渉に応じてくれません。

そのため、安定した収入を得ていることが条件となります。

安定した収入を得ていれば、雇用形態に決まりはありません。

会社員だけでなくアルバイト・派遣社員・契約社員・個人事業主・年金受給者などであっても、任意整理が可能です。

また、専業主婦であっても夫に安定した収入があり返済できるのであれば任意整理が可能です。

今後も返済を続け意思があること

任意整理後に返済を途中で怠ると、通常は債権者から残額の一括返済を請求されてしまいます。

任意整理をすると将来利息がカットされる分だけ今後の返済額が減りますが、それでも長期にわたって返済を継続する必要があります。

そのため、完済するまで返済し続ける意思を持っていることが、条件となります。

個人再生の条件

債務総額が5,000万円(住宅ローンを除く)を超えていないこと

個人再生は、大企業なども利用する「民事再生」という手続きを簡略化し、一般の個人でも利用できるようにした手続きです。

そのため、債務総額が5,000万円(住宅ローンを除く)を超える場合は個人再生ではなく、民事再生や自己破産を利用することになります。

将来的に継続・反復した収入が得られる見込みがあること

個人再生は、再生計画通りに減額された借金を原則3年(最長5)年で返済をしなければなりません。

そのため将来的に継続・反復した収入が得る見込みが条件となります。

この条件は正社員でなければダメというわけではありません。

パートやアルバイトの場合も、長期間継続しての雇用実績があれば基本的には認められます。

しかし、短期間でアルバイトを転々としていたり、期間限定のアルバイトなどの場合は、認められない可能性があります。

個人事業主や年金受給者も基本的には認められますが、無職や専業主婦は認められないので利用ができません。

自己破産の条件

支払不能の状態であること

自己破産をするためには「支払不能の状態」であることが条件となります。

この「支払不能の状態」とは、現在の収入・財産では、全ての借金について支払うことができない状態が継続していることを指します。

支払い不能の状態かどうかは、借金の額、収入・支出の額、財産の額、家族構成、借金理由などで総合的に判断されます。

例えば、借金の額が収入より多い場合でも預貯金が十分あり返済できる見通しがあれば支払不能とはいえません。

借金理由が免責不許可事由に当たらないこと

免責不許可事由とは、自己破産で免責(返済義務の免除)が認められないケースとして、破産法に明記されています。

免責不許可事由

◎ギャンブル、投資、投機の借金

◎趣味、娯楽の借金

◎現金に換金するための借金

◎意図的に財産を隠して自己破産を申し立てる

◎特定の債権者にだけ優先して返済を行う

◎返済する意思がないのに自己破産を前提に借り入れる

◎裁判所に事実とは異なる説明を行う

◎7年以内に自己破産をしている

免責不許可事由に該当すれば基本的に自己破産はできません。

しかし、特段の事情がある場合は、裁判所の裁量によって自己破産が認められる可能性があります。

手続きできない場合の解決方法

任意整理ができない場合

1回も返済していない

借金を一度も借金を返済していない場合は、債権者が和解に応じてくれない可能性が大きいです。

借金を返済できないと分かっていながら借りたと思われるからです。

任意整理の交渉では、債権者は、債務者である依頼者に返済能力や意思があることを重視します。

返済を一度もしていない借金について任意整理をする場合には、一定期間返済の実績をつくってから手続をするほうがいいでしょう。

もし借入をする時点では、借金を返済する意思があったのに、病気や失業など、やむを得ない事情があった場合には、一度も返済していない場合でも、債権者に任意整理を受け入れてもらえるケースはあります。

借金額が大きすぎる

任意整理では、借金の大幅な減額はできません。

借金額が大きすぎると手続後の返済負担も軽減されない可能性があります。

年収の2倍を超えるような多額の借金を抱えている場合は、自己破産か個人再生を検討しましょう。

ローンで購入した商品の借金

ローンで商品を購入した場合も任意整理を行うことはできますが、債権者に購入した商品を返さなくてはいけない可能性があります。

車やパソコン、ブランド時計やバッグなどの高額な商品は、債権者に返却を求められる可能性が高いです。

任意整理は手続の対象とするローンを選ぶことができます。

任意整理はしたいが、商品を取り上げられるのが困る場合には、ローンを組んでいる債権者を任意整理の対象から外して手続きをしましょう。

個人再生ができない場合の解決法

住宅ローンを除く借金総額が5,000万円を超える

借金が5,000万円(住宅ローンを除く)を超える場合、個人再生ができません。

その場合は、自己破産ができる可能性があるので検討しましょう。

安定した収入がない場合

無職などで安定した収入がない場合、返済能力がないと判断されるので個人再生できません。

その場合は、自己破産ができる可能性があるので検討しましょう。

自己破産ができない場合の解決法

返済不能と認められない場合

裁判所が借金の総額や年齢、収入、支出、財産、健康状態といった状況から総合的に判断した結果、返済不能と認められない場合は自己破産ができません。

安定した収入があるという理由で返済不能と認められない場合は、任意整理か個人再生ができる可能性があるので検討しましょう。

免責不許可事由に該当する場合

免責不許可事由に該当することが自己破産できない場合は、借金をつくった理由は問われない任意整理か個人再生を検討しましょう。

制限を受ける職業・資格の場合

自己破産をすると特定の職業や資格が一定期間制限されるため、一時的に資格を失ったり、仕事ができなくなることがあります。

職業や資格を制限されるのが困るという方は、制限がない任意整理か個人再生を検討しましょう。

債務整理できる借金とできない借金

債務整理をすれば、すべての借金が減額できたり、免除されるわけではありませんので気をつけましょう。

債務整理できる借金とできない借金は下記があります。

債務整理できる借金

✅消費者金融での借入

✅クレジットカード会社のキャッシング・リボ払い

✅物品購入やサービス提供を受けるために組んだローン

✅銀行のカードローン

✅奨学金

✅債務整理したことのある借金

✅一括請求されてしまった借金

債務整理できない借金

✅税金

✅国民年金、厚生年金保険

✅下水道料金

✅養育費

✅従業員の給与

✅交通違反などによる罰金

✅故意または重過失による人の生命・身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権

✅悪意で加えた不法行為による損害賠償請求権

債務整理できる借金かできない借金かどうかは個別の事案により判断が微妙なケースもありますので専門家に相談しましょう。

  • 記事監修者
  • 弁護士 近藤 裕之
  • 翔躍法律事務所 所属
  • 第一東京弁護士会 所属
  • ※法律問題に関するテキスト監修に限る