競馬、競艇、競輪といったギャンブルには、高額な払戻金を得る夢があります。
しかし、その夢につけ込む「ギャンブル情報詐欺」が増えていることをご存じでしょうか。インターネットやSNSで「絶対当たる」「関係者からの裏情報」といった甘い言葉に誘われて、高額な情報料やツールを買ってしまい、大切なお金を失う人が後を絶ちません。誰もが被害者になる可能性があるからこそ、その手口を知り、自分自身を守る知識を持つことが非常に重要です。
こうした詐欺は、「誰でも簡単に儲かる」という、私たち人間の「楽して稼ぎたい」という気持ちを巧みに利用します。彼らは、巧妙な嘘や偽の実績を使って、あたかも確実な情報であるかのように見せかけます。実際に、公的機関である警察や国民生活センター、そして各ギャンブルの運営団体も、これらの悪質な詐欺について繰り返し警告を発しているのです。
この記事では、ギャンブル情報詐欺の具体的な手口や、詐欺師たちが使う言葉の裏側にある非合理性を解説します。そして、もし被害に遭ってしまった場合に、どのように対処すべきかについてもお伝えします。
目次
ギャンブル情報詐欺の正体とは?その手法を解説
ギャンブル情報詐欺とは?
多くの人が競馬や競艇などのギャンブルを楽しみ、一攫千金を夢見ています。その心理につけ込むのが「ギャンブル情報詐欺」です。この詐欺は、的中率が高いと謳う虚偽の情報を高額な料金で売りつける手口が基本です。
まず、詐欺師たちは、過去に的中したと見せかける偽の実績を捏造し、信じがたいほどの高い的中率や回収率をアピールして、利用者を巧みに引き寄せます。彼らは、「限定情報」や「今だけの特別プラン」といった言葉で、利用者の射幸心を煽ります。
次に、彼らは「デキレース」や「関係者からの裏情報」といった、一般には知り得ない情報を入手したと偽って勧誘を行います。最初のうちは、少額の情報プランで「的中」を演出し、利用者に信頼させてから、数十万円から数百万円に及ぶ高額な情報プランへと誘導します。また、資金の払い戻しを要求すると「1割の手数料がいる」「ミスが発生した」として送金を求められるというケースもあります。(読売新聞オンライン「副業サイトで「競馬投資」、最初は「馬券が的中」と2000円振り込まれたが…「手数料」906万円被害」)
高額な自動購入ツールによる詐欺とは?
ギャンブル情報詐欺の手口は進化しており、最近では「自動購入ツール」を使った詐欺が増加しています。これは、馬券や舟券を自動で買うソフトウェアやツールを、高額な値段で売りつけるものです。
詐欺師は、マッチングアプリなどで知り合った人物を通じて勧誘することが多く、「競馬を知らなくても大丈夫」「すぐに稼げる」といった言葉で、初心者をターゲットにします。(東京くらしWEB「SNSで知り合った人について行ったら競馬ソフトを購入することに!~事業者が勧誘目的を隠してSNSで近づいてくる場合があります~」)(朝日新聞「競馬ソフト販売、4100万円脱税容疑 勝ち馬予想 東京国税局が告発」)
ギャンブル詐欺に共通する手口
ギャンブル詐欺には、いくつかの共通する手口が存在します。これらを知っておけば、被害に遭うリスクを大きく減らせます。
まず、彼らは「〇〇公認」「関係者からの裏情報」「結果の決まってるデキレースがある」などと、公的な団体が関与しているかのように装い、魅力的な言葉を使って誘ってきます。
しかし、日本中央競馬会(JRA)のウェブサイトでも明確に警告されているように、「公認の予想会社」「JRA関係者からの情報」などと謳う業者は存在しません。(日本中央競馬会(JRA): 悪質な予想・情報提供業者にご注意ください!)こうした謳い文句は、すべて詐欺師が利用者を信用させるための嘘なのです。
次に、彼らが使う手口は、捏造された的中実績です。詐欺サイトは、過去のレースで的中したと見せかける偽の画像や数字を提示します。信じがたいほどの高的中率や高回収率をアピールすることで、利用者の期待を煽り、高額なプランへと誘導します。
不的中が続くと、別の情報会社へ誘導されることもあります。これは、最初の被害を隠し、さらなる金銭を騙し取るための常套手段です。
また、SNSやマッチングアプリ経由の勧誘も非常に増えています。警察庁も、見知らぬ人物からのSNSを通じた「もうけ話」には注意するよう警告しています。これらの手口は、利用者の夢や期待につけ込み、巧みに金銭を騙し取る悪質なものです。
このような詐欺は、公的機関からも繰り返し警告されています。警察庁は、SNSなどで見知らぬ人物からの「もうけ話」には注意するよう呼びかけています。(警視庁「その他の手口 | 特殊詐欺の手口等紹介」)また、国民生活センターも、情報商材トラブルの典型として、ギャンブル関連の詐欺について注意喚起を行っています。
このように、ギャンブル情報詐欺は、利用者の夢や期待を悪用し、虚偽の情報と巧妙な心理的トリックを使って、お金を騙し取る非常に悪質な犯罪なのです。
ギャンブル詐欺はどう見抜く?一例をご紹介
ギャンブル情報詐欺は「仕組み」から見抜く
ギャンブル情報詐欺に騙されないためには、彼らの謳う情報の「仕組み」そのものが非現実的であると理解することが重要です。
まず、「デキレース」や「八百長」は、公営ギャンブルではほとんどあり得ない話であるという現実を見ましょう。 公営ギャンブルは、競馬法やモーターボート競走法といった国の法律で厳しく管理されており、八百長行為は刑事罰の対象となるからです。(参照:競馬法 第5章「罰則」 モーターボート競走法第7章「罰則」)
また、レース期間中、競艇や競輪の選手は外部との連絡が一切遮断されるため、そもそも「関係者からの裏情報」が外部に漏れることは物理的にも困難です。
確かに、過去に競艇選手が競艇の順位操作をめぐる贈収賄事件で有罪判決を受けた事例があります。(朝日新聞「競艇不正、元選手に懲役3年の判決 「動機は身勝手」」)ですが、これは個人が不正に勝敗を操作しようとした単独のケースであり、レース全体を巻き込むような組織的な八百長ではありません。公営ギャンブルの厳格な監視体制のもとでは、個人の不正すら発覚してしまうのです。
次に考えてほしいのは、本当に儲かる情報なら、なぜ他人に教えるのかという点です。もし、ある情報が確実に当たるのであれば、その情報を使って自分で賭けるだけで大きな利益を得られます。しかし、その情報を他人に売って公開すれば、多くの人がその情報で賭けることになり、結果として、オッズは下がってしまいます。だとすれば、自分自身の利益を減らすことになるのです。
そもそも、情報サイトのビジネスモデルは、「情報が的中するかどうか」ではなく「情報を売りつけてお金を得ること」にあります。
彼らは、高額な情報プランを売って利益を出すことが目的なので、売りつけた予想が当たるか当たらないかなんて言うのは、詐欺師にはどうでもいいことなのです。
自動購入ツールは「ロジック」から見抜く
自動購入ツール詐欺を見抜くためには、その謳い文句の背後にある「ロジック(論理)」を冷静に検証することが不可欠です。
実際に自動購入ツールで成功を収めた事例は存在します。最近でも、払戻金95億円競馬利益18億円の申告しなかった中国人男性が税務調査で追徴課税をされた事例がありました。(日本経済新聞: 競馬利益18億円申告せず 中国人男性、払戻金95億円)
また、有名な「馬券裁判( 平成26(あ)948)最高裁判所第三小法廷判決」では、独自の予想ソフトで継続的に利益を上げた人物が、その利益を「事業所得」と認められました。
これらの成功例に共通する特徴は、多数の要素(ファクター)を緻密に精査したうえで、勝率や回収率がプラスになるように投票券を購入するという、極めて高度なロジックに基づいている点です。
例えば、過去のレースデータ、出走馬の血統、騎手・調教師の相性、天候、馬場状態など、膨大な情報を統計的に分析し、期待値(将来的に得られるであろう平均的な利益)を算出するような、専門的な手法が用いられます。これは、誰でも簡単に真似できるものではなく、専門家レベルの統計の知識と継続的なデータ収集を必要とします。
一方で、詐欺業者は「独自のアルゴリズム(計算方法)で勝つ」と説明しますが、そのロジックを具体的に説明することは決してありません。どんなファクターを利用したアルゴリズムを持ったプログラムかわからないような自動購入システムは、中身が分からない「ブラックボックス」なのです。
そのような「ブラックボックス」にお金を出すのは、ギャンブル以上に不確実性の高い行為だと言わざるを得ません。
もし、そのツールが本当に機能するなら、その開発者は多額の利益を上げているはずです。しかし、詐欺業者は「高額なツール」を売ることでしか儲けていません。これは、彼らのツールが役に立たないことを証明しています。
本当に儲かるシステムは、他人に教えたり売ったりしません。むしろ、他人にシステムを利用させれば、購入者が増えることでオッズが下がり、自分自身の儲けが減る可能性さえあります。
この基本的な自動購入ツールのロジックを理解すれば、詐欺師の言葉が虚偽であると見抜けるでしょう。
被害に遭った時の対処法
詐欺に気づいたらまずは証拠を残す
もしギャンブル詐欺の被害に遭ったかもしれないと感じたら、まずは証拠を残すことが最も重要です。すぐに次のことを行ってください。業者とのやり取りの記録、契約書、振込記録など、 すべてスクリーンショットを撮るか保存しておきましょう。
これらの証拠は、今後の相談や返金交渉に不可欠なものとなります。
証拠を保全したら、一人で悩まず、できるだけ早く専門の窓口に相談することが重要です。時間が経つと証拠が消えてしまったり、解決が難しくなったりする可能性があります。
警察や消費者センターへの相談が最善策
詐欺被害に遭った場合、被害届を提出するためには、最寄りの警察署へ相談に行く必要があります。詐欺師は次々と手口を変え、同じような被害者を増やそうとします。あなたが被害届を出すことで、新たな被害を防ぐことにも繋がるのです。
警察庁や国民生活センターの公式サイトには、具体的な被害事例や対策方法が掲載されています。これらの情報を参考にすることで、自身の状況を客観的に見つめ直し、適切な対処法を見つけることができるでしょう。
詐欺被害から回復するためには、金銭的な問題だけでなく、精神的なショックも乗り越えなければなりません。一人で抱え込まず、公的な機関の力を借りることで、より安全に解決へと向かうことができるでしょう。
詐欺師は、あなたの不安や孤独に付け込んできます。だからこそ、信頼できる専門機関を頼ることが、安全への一番の近道なのです。
返金交渉のためには弁護士や司法書士に相談を!
ギャンブル詐欺の被害に遭った場合、警察や消費者センターだけでは、お金を取り戻す返金交渉はできません。なぜなら、警察は刑事事件を扱い、返金を含む民事的な問題には原則として介入しないからです。また、消費者センターは、あくまで問題解決のための助言やあっせんを行うのが役割であり、法的な強制力はありません。
そこで、金銭的な解決を目指すなら、弁護士や司法書士といった法律の専門家に相談することが不可欠となります。彼らは、被害回復に向けた法的手続きを代行し、あなたの味方となってくれます。
弁護士は、加害者に対し損害賠償を請求したり、振込先の銀行口座を凍結するよう申し立てを行ったりすることができます。これにより、詐欺師が資産を隠すのを防ぎ、返金の可能性を高めます。一方、司法書士は、140万円以下の請求であれば、少額訴訟の代理人として活動するなど、解決に向けたサポートを提供してくれます。
詐欺被害は、お金を失うだけでなく、精神的なショックも伴います。詐欺師は、あなたの不安や孤独に付け込んでくるからです。
だからこそ、一人で抱え込まず、信頼できる専門機関の力を借りることが、安全への一番の近道なのです。専門家を頼ることで、金銭的な問題だけでなく、精神的な負担も軽減し、安全に解決へと向かうことができます。
詐欺師に立ち向かうには、法律の専門知識と交渉経験が不可欠です。被害回復のためには、信頼できる専門機関のサポートを最大限に活用しましょう。