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債務整理

任意整理をしたけれど返済が苦しい…和解案通りに支払えなくなった場合は任意整理から自己破産への切り替えを!

「任意整理をしたけれど返済が苦しい…今から自己破産できるのか?」

このような悩みを抱えている方もいるのではないでしょうか。

任意整理すると、将来利息をカットした上で返済期間の延長なども可能になるので、毎月の返済の負担を軽くすることができますが、通常は3年~5年にわたって返済の継続が必要となるので、事情によっては返済が苦しくなることもあります。

結論、任意整理をした後に返済しきれなくなった借金について、自己破産することは可能です。

しかし、任意整理後に自己破産をする場合は、注意しなければならないポイントがいくつかあります。

また、事情によっては自己破産しても解決できないこともあり、そのときは他の解決方法を検討しなければなりません。

この記事では、任意整理後の返済が苦しくなり、自己破産の申し立てを考えている方に向けて解説します。

任意整理と自己破産の違い

任意整理

「任意整理」とは、現在の支払いよりも負担を軽くするために、貸金業者やクレジットカード会社と利息のカットや分割回数(3年〜5年程度)について交渉し、今後の返済計画についての和解を結び、その計画を元に返済を続けて、借金を完済する手続きです。

また、これまでの取引を利息制限法の上限金利(15〜20%)で再計算する(引き直し計算)ことで借金を減額できる場合もあります。

自己破産とは

自己破産とは、裁判所に申立をして、返しきれなかった借金などの返済義務をなくしてもらう(法的には「免責」といいます)手続きです。

キャッシング、リボ払い、カードローン、住宅ローン、奨学金、未払い家賃や通信料などすべて免責の対象になります。

支払い義務がなくなるので、手続き後に支払いは残りません。

任意整理後に自己破産することは可能なのか?

任意整理をすることによって、将来利息のカットや返済方法の変更などによって、借金の返済を軽くすることができます。

しかし、病気や怪我、転職、突然の解雇などさまざまな事情によって、予定していた収入を得ることができず、返済を続けることが難しい状況になることもあると思います。

このような状況になった場合に、任意整理から自己破産に手続きを切り替えることによって、借金の返済負担から免れることができます。

返済が困難になった状況のままでいると、債権者から裁判を起こされ、給料や預貯金などの財産を差し押さえられてしまうリスクが出てきてしまいます。

このような事態に陥る前に、任意整理で和解した返済ができない状況になった場合には、早めに弁護士に相談をしましょう。

どのような対応ができるか、アドバイスをすることができます。

任意整理後に自己破産する場合の注意点

任意整理で返済したお金は戻らない

まず、任意整理ですでに返済しているお金は返金されないということを知っておきましょう。

例えば、300万円の借金がある状態で任意整理をし、50万円を返済した段階で自己破産に切り替える場合、返済済みの50万円を返金してもらうことはできません。

「返金されないなら、最初から自己破産をすれば良かった」と後悔するかもしれませんが、債権者が正当な権利行使によって回収したお金なので、債務者へ返金する義務はありません。

あくまでも、現在残っている負債をどのように処理するかという問題が残っているだけです。

上記の例では、残り250万円について、自己破産を申し立てることになります。

任意整理から自己破産を依頼する場合は別途費用がかかる

任意整理から自己破産に手続きを切り替える際に注意しなければならない点は費用面です。

初回の任意整理で司法書士や弁護士へ着手金・成功報酬を払っている場合でも、自己破産を依頼するときには別途着手金・成功報酬・裁判所への費用を支払います。

これは、任意整理を依頼していた同じ専門家へ自己破産を依頼する場合でも当てはまります。

自己破産手続きに必要な費用は以下の通りです。

同時廃止事件特定管財事件少額管財事件
予納金1~3万円程度50万円~20万円~
弁護士費用約30万円30万円30万円~

自己破産を依頼するだけでもこれだけの費用がかかりますので、任意整理の費用が無駄になるのは大きなデメリットとなります。

もちろん、任意整理後に問題が生じて自己破産を余儀なくされるケースでは仕方のないことですが、できれば最初から自己破産一本に絞って債務整理手続きに踏み出すことが理想です。

自己破産の一般的なデメリット

・財産を失う
・保証人に迷惑がかかる

自己破産には主に上記のようなデメリットがあります。

また、自己破産をしたという記録は、免責許可決定後、信用情報機関に5年から10年間記録が残り、その期間は新たに借金ができなくなり、ローンを組むことやクレジットカードなども利用できなくなります。

他にも自己破産の手続きをするには、不動産や車などの財産を手放さなければなりません。

借金の保証人がいる場合は、借金の返済の請求は保証人にいくことになり、 保証人に迷惑をかけてしまうことになります。

任意整理後に自己破産ができないケース

ギャンブルや浪費などの免責不許可事由がある

ギャンブルによる借金は自己破産によって免責が認められることは難しいです。

ギャンブルによる借金は免責不許可事由という支払い義務の免除(免責)が認められない事由に該当するため、自己破産を申立てても免責されない可能性があります。

しかし、ギャンブルによる借金でも、裁判所が「裁量免責」を認めた場合は自己破産によって支払い義務の免除(免責)を受けることができます。

裁量免責とは裁判所の判断によって下される支払い義務の免除であり、破産者が深く反省し、改善が見られるなどの事情が認められれば、免責不許可事由に該当する場合でも免責されることがあります。

自己破産は、借金で困っている人のための救済措置なので、免責不許可事由に該当するからという理由で全て免責を却下されるわけではありません。

免責許可を決定するのは裁判所であるため、深く反省し、生活を再建したいという強い意思を示すことで裁量免責を認めてもらうことができます。

任意整理中の返済に偏りがある

任意整理をした時に、全ての債権者と公平な和解をして返済を進めていた場合は問題ないですが、債権者によって返済に偏りがある場合は注意が必要です。

例えば、債権者が6社あり、5社とは任意整理をして借金を減額してもらったが、残り1社とは任意整理をせずそのまま返済している場合です。

6社全ての債権者と任意整理をしたとしても、一部の債権者とは早期に和解をして返済をして、残りの債権者とは交渉が長引いてしまい、返済が偏ってしまう場合も注意しなければなりません。

上記のように偏りがある返済のことを「偏頗弁済」といい、これも免責不許可事由のひとつになっています。

しかし、実務上は偏頗弁済をしていても、ただちに免責されないというわけではなく、偏頗弁済した金額を別途用意して全債権者へ公平に配当することを条件として、免責許可されるのが一般的です。

この場合も「管財事件」になります。

例えば、総額500万円あった借金のうち80万円を偏頗弁済していたケースなら、80万円を別途積み立て破産管財人に預け、破産管財人が配当を行います。

この場合、80万円を用意することができなければ、免責が得られないので、別の解決方法を検討しなければなりません。

保証人や担保が付いている借金がある

連帯保証人や抵当権・所有権留保などの担保が付いている借金は、任意整理の際にその借金を除外して手続をするのがほとんどです。

任意整理では、どの借金を整理するかを自由に選択できるので、このような処理をしても問題はありません。

しかし、自己破産の場合、「債権者平等の原則」を守らなければならないので、保証人や担保が付いている借金を除いて申し立てることはできません。

債権者平等の原則とは、全ての債権者を平等に扱わなければならない、ということです。

債務免除という利益を得る以上は、全ての債権者を手続きの対象としなければならないことになっています。

したがって、自己破産を申し立てる場合には保証人や担保が付いている借金も手続きに含めなければなりません。

そうすると、保証人は債権者から一括請求され、担保が付いている物件は取り上げられてしまいます。

保証人が返済できる場合や、保証人も債務整理をした上で返済する場合、担保物件も手放し可能な場合は、自己破産の申立てをすることができます。

しかし、これらのデメリットを回避したい場合は、他の解決方法を検討してみましょう。

資格・職業の制限がある

自己破産をすると一定期間できない職種として、よく挙げられるのは警備員・保険募集人・宅地建物取引士です。

宅地建物取引士は、宅建業法18条1項2号で「破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者は登録ができない」とされています。

同様の規定が、警備員は警備業法3条1項1号で、保険募集人は、保険業法297条1項1号で規定されています。

これらの職業は、他人の財産を預かり、管理する可能性があるため、自己破産をする場合は登録ができないとされています。

さらに、弁護士も自己破産をすると職業制限されます(弁護士法7条4号)。

しかし、上記のような登録が必要なものでも、看護師・医師・薬剤師のように、人の生命や身体への影響を考慮して資格・登録制となっているものについて制限はありません。

借金総額が少ない

自己破産をするには、「支払不能」または「超過不能」と認められる状態であることです。

具体的に借金の総額がいくらあれば支払不能・債務超過と認められるかについて、明確な基準はありません。

個別の事案ごとに裁判所が判断します。

おおよその目安として、手取り月収の10倍を超える借金があると支払不能・債務超過と認められる可能性があります。

例えば、手取り月収20万円の方であれば、300万円の借金を抱えていると自己破産できる可能性があります。

しかし、先に任意整理である程度まで返済し、残りの借金が100万円に減っている場合には、自己破産は認められない可能性が高くなります。

任意整理後に自己破産ができない場合の対処法

2回目の任意整理をする

任意整理に回数制限はないため、2回目、3回目であっても手続き可能です。

そもそも任意整理とは、債権者と債務者が交渉し、将来の利息をカットしてもらい、返済額を減額するものです。

つまり、1回目でも2回目でも、任意整理ができるかどうかは債権者次第であり、債権者の合意があれば何度でも任意整理をすることは可能です。

しかし、「一度和解したにも関わらず、延滞した」とう事実があるので、債権者としては何度も返済ができなくなる人の交渉には応じたくないと考えられることもあります。

そのため、2回目以降の任意整理は、最初の任意整理よりもハードルが上がることが多いです。

任意整理に応じてもらえた場合、

・分割回数が短くなる

・月々の返済額が前よりも高くなる

・頭金の用意を求められる

などの条件がつくことがあります。

個人再生をする

人によっては「自己破産したくない」と思う人がいます。

実際の不利益やかかる手間、費用などについては、自己破産でも個人再生でも大きく変わりませんが、それでもマイナスイメージの強い自己破産を避けたいと思われることが多いです。

また、世間体にこだわっていることもあります。

そのように、どうしても自己破産が嫌な場合は、無理強いしてすることはありません。

自己破産か個人再生か微妙なラインや個人再生でも解決可能なケースなどでは、個人再生を選択することが多いでしょう。

自己破産の免責不許可事由として「7年以内に自己破産の免責許可が確定していること」があります。

つまり、7年以内に自己破産をして免責決定を受けている場合、再度自己破産を申し立てても免責されないということです。

同じように、給与所得者再生を利用して再生計画案が認可され、返済を終えている場合には、再生計画案認可決定後の7年以内は自己破産できません。

個人再生で「ハードシップ免責」という特殊な方法で免責を受けた場合も、その後7年以内には自己破産が認められません。

これらにあてはまる場合、自己破産を申し立てても免責を受けられないのでは意味がありません。

個人再生をするか、7年経過するのを待ってから自己破産するか、どちらかを選ぶことになります。

まとめ

任意整理後に自己破産を申し立てることは可能です。

実際に自己破産に切り替えている方はたくさんいます。

任意整理の返済期間が3年~5年ほど続くのに対して、自己破産ではすべての借金が免除されるで、改めて自己破産をするメリットは非常に大きくなります。

ただ、ご自身のケースで自己破産ができるのか、自己破産をしても問題ないか、しっかりと確認する必要があります。

不安なときは一人で考えず、弁護士や司法書士へ相談し、正しい選択をしましょう。