ファクタリングは、売掛金等の売掛債権を使って資金調達する方法です。
以前からありましたが、近年非常に注目されている資金調達方法になります。
ファクタリングには様々な種類がありますが、今回は医療機関のみが利用できる診療報酬ファクタリングについて説明をします。
※この記事は、弁護士赤瀬康明(東京弁護士会)に監修して頂いております。
診療報酬ファクタリングとは
診療報酬ファクタリングとは、診療報酬債権を利用して行うファクタリングです。
診療報酬は、国民健康保険団体連合会(国保)・社会保険診療報酬支払基金(社保)から支払われます。
仕組みは、一般的な3社間ファクタリングと同じです。
一般的な3社間ファクタリングとは、ファクタリング業者とファクタリング利用者、取引先の3社で行われるファクタリングになります。
まずファクタリング利用者はファクタリング業者に売掛金を渡します。
そしてそのファクタリング業者は、お金をファクタリング事業者に渡すのです。
そして回収はファクタリング業者が直接取引先からおこないます。
ファクタリング業者が直接取引先から資金を回収できるため、貸し倒れのリスクが少ないため、手数料が低いのがメリットになります。
診療報酬ファクタリングは基本的にはこの流れと一緒です。
診療報酬ファクタリングを行いたい病院や診療所などは、診療報酬ファクタリングを取り扱っているファクタリング業者に申し込みをします。
申し込みを受けたファクタリング業者は、審査をして審査の結果、問題がなければ病院や診療所にお金を渡します。
そして、診療報酬の満期が来た段階でファクタリング業者は国保や社保からお金を回収する流れです。
では、この診療報酬ファクタリングには、一般的なファクタリングとは異なるどのようなメリットがあるのでしょうか?
診療報酬ファクタリングのメリットは5つ!
診療報酬ファクタリングの主なメリットは5つです。
・手数料が一般的なファクタリングに比べはるかに安い
・審査に落ちる事はまずない
・初月は2か月分の診療報酬を手にすることができる
・財務諸表を汚さずに利用することができる
・大手銀行の系列会社でも利用できる
診療報酬ファクタリングのメリットについてわかりやすく説明をしますね。
手数料が一般的なファクタリングに比べはるかに安い
診療報酬ファクタリングの、手数料の相場は0.25%からになっています。
一般的な3社間ファクタリングの場合、手数料が安い業者でも5%程度はかかることが一般的ですので、かなり手数料が安いです。
なぜ、これだけ手数料が安いかというと、一般的なファクタリングでいう売掛先が国保や社保になるからです。
国保や社保が潰れる事はまずありませんので、ファクタリング業者が回収できなくなるリスクはほぼゼロといえます。
回収することができないリスクがないので手数料も非常に安くなるのです。
審査に落ちる事はまずない
診療報酬ファクタリングの場合、先ほど説明した通り、売掛先が国保や社保になるので審査に落ちることはまずありえません。
ただし、診療報酬ファクタリングを利用する病院や診療所が、社会保険や税金を滞納している場合は、審査に落ちる可能性が非常に高くなりますので注意してください。
初月は2か月分の診療報酬を手にすることができる
診療報酬債権の現金化の一般的なスケジュールは以下のようになります。
・4月分の診療報酬を5月10日に請求
→6月25日に4月分の入金
・5月分の診療報酬を6月10日に請求
→7月25日に5月分の入金
つまり、診療報酬債権の現金化には約2ヶ月の時間がかかるのです。
このスケジュールを利用すると、初月は2か月分の診療報酬を手にすることができます。
なぜなら、通常の診療報酬の入金と同時に翌月分の診療報酬も当月に入金になるからです。
2ヶ月分の診療報酬をほぼ同時に手にすることができることは病院や診療所にとって大きなメリットになるでしょう。
この資金をもとに新しい医療器具を買うこともできます。
このように、初月の利用の場合、1度に大きなお金を手にすることができる事は診療報酬ファクタリングの大きなメリットでしょう。
財務諸表を汚さずに利用することができる
診療報酬ファクタリングは、財務諸表を汚さずに利用することができます。
診療報酬ファクタリングは、銀行融資やローンではないため、財務諸表に影響することがありません。
今後、銀行融資を受ける場合、財務諸表をきれいにしておくことは非常に大切です。
財務諸表を寄越さずに資金調達することができることは診療報酬ファクタリングの大きなメリットといえるでしょう。
大手銀行の系列会社でも利用できる
診療報酬ファクタリングは、大手銀行の系列会社でも利用することができます。
例えば三菱UFJ銀行の系列会社である三菱UFJファクターなどで利用することができますので大きな安心感があるでしょう。
大手銀行の系列会社でも利用することができる事は診療報酬ファクタリングの大きなメリットになります。
診療報酬ファクタリングのデメリットは5つ!
診療報酬ファクタリングの主なデメリットは5つです。
・一度使うとなかなか抜け出すことができない
・浪費をしてしまう可能性がある
・手数料が高いといっても受け取れる総額は減ってしまう
・社会保険料や税金を滞納している場合利用することができない
・診療報酬ファクタリングの利用が第三者に知られる可能性がある
診療報酬ファクタリングのデメリットについてわかりやすく説明していきますね。
一度使うとなかなか抜け出すことができない
これは、診療報酬ファクタリングだけにいえることではありませんが、一度ファクタリングを利用すると、なかなか抜け出すことができません。
例えば、初月にファクタリングを使用した場合、2か月分の診療報酬が入ることになりますが、翌月ファクタリングを使わないと一切お金が入ってこないことになります。
内部留保がたくさんあったり銀行融資などを受けることができれば問題ないかもしれませんが、そもそもそのような財務状態が良い病院や診療所は診療報酬ファクタリングを利用しないでしょう。
結局、翌月の資金繰りに困りファクタリングを利用し続けることになります。
診療報酬ファクタリングは、一般のファクタリングに比べ手数料が安いので、最初のうちは問題ないかもしれませんが、いくら手数料が安いといっても塵も積もれば山となるです。
どこかで、ファクタリング以外の資金調達をしないと必ず経営に行き詰まってしまう可能性があります。
浪費をしてしまう可能性がある
2ヶ月分の診療報酬が入ると、つい気が大きくなり無駄な出費をしてしまうかもしれません。
本来、必要ではない医療器具の買い替えを行ったりしてしまう病院や診療所は少なからずあるようです。
このように、浪費をしてしまう可能性があることは、診療報酬ファクタリングの大きなデメリットといえるでしょう。
手数料が高いといっても受け取れる総額は減ってしまう
診療報酬ファクタリングは、一般のファクタリングに比べ手数料が格安です。
しかし、いくら手数料が安いといっても、手数料がかかることに変わりはありません。
本来、ファクタリングを利用しなければ受け取れる金額より少なくなってしまうことは診療報酬ファクタリングを利用する大きなデメリットといえるでしょう。
社会保険料や税金を滞納している場合利用することができない
診療報酬ファクタリングは、一般のファクタリングと違って売掛先が国保や社保になるため、基本的に審査に落ちることはまずありません。
しかも、かなり掛け目も高く設定されていますので大きなお金を調達することができます。
しかし、どんな状況の病院や診療所でも利用できるものではありません。
例えば、税金や社会保険料の滞納を行っているといくら診療報酬ファクタリングといえども利用することができない可能性が高くなります。
なぜなら、診療報酬債権の差し押さえが行われる可能性が高いからです
いくら譲渡を受けた債権といえども、税金や社会保険料の支払いが未払い場合、国に譲渡せざるをえません。
このようなリスクがあるため、診療報酬ファクタリングといえども税金や社会保険料の滞納をしていると実施できない可能性が高いのです。
診療報酬ファクタリングを利用していることが第三者に知られる可能性がある
診療報酬ファクタリングの利用がばれる事は基本的にはありませんが、病院や診療所の関係者がバラさないとも限りません。
診療報酬ファクタリングを利用する病院や診療所は基本的に経営状況があまり芳しくないところです。
第三者に診療報酬ファクタリングの利用がわかってしまうと、経営状況を疑われることになってしまいます。
医薬品会社に知られてしまうと、取引を縮小されてしまう可能性がありますし、最悪の場合取引を停止されてしまう可能性もゼロではありません。
また、最悪の場合、銀行などの金融機関にも伝わってしまいローンの借り入れなどに影響が出てしまう可能性もあるでしょう。
100%第三者に診療報酬ファクタリングの利用を隠すことができない事は診療報酬ファクタリングの大きなデメリットでしょう。
まとめ
今回は、診療報酬ファクタリングのメリットやデメリットについて説明をしました。
診療報酬ファクタリングは、一般ファクタリングに比べてかなりメリットが大きいファクタリングになります。
一般的なファクタリングの手数料が高いため、利用をよく検討した方が良いですが、診療報酬ファクタリングについては、業者によってはかなり手数料が低いです。
今、多くの病院ではコロナウィルスの影響で経営状況が厳しくなっていることだと思います。
資金繰りを良くするために診療報酬ファクタリングについては、積極的な利用を検討した方が良いでしょう。
ぜひこの苦難を乗り切るためにも診療報酬ファクタリングの利用を検討してみてはいかがでしょうか。