「投資とギャンブルは同じ?」
そう思っている人は多いかもしれませんね。しかし、実はその考え方には大きな誤解があります。
もし、本当に投資がギャンブルと同じなら、長期的に資産を増やし続けることはできません。投資とギャンブルには、根本的な違いがあるのです。その違いを理解すれば、お金に対する考え方がきっと変わります。
この記事では、投資とギャンブルの決定的な違いである「ゼロサムゲーム」という考え方について、分かりやすく解説します。また、なぜ投資が社会にとってプラスになるのか、そしてどのような投資がギャンブルに近くなってしまうのかについても、詳しく紹介していきます。
目次
ゼロサムゲーム、マイナスサム、プラスサムって何?
ゼロサムゲームは誰かが勝てば誰かが負ける世界
ギャンブルと投資の本質的な違いを理解する上で、まず「ゼロサムゲーム」という考え方を押さえることが非常に重要です。これは、ゲームに参加した人たちの利益と損失の合計が、常にゼロになるという特徴を持っています。つまり、誰か一人が利益を得れば、その利益の分だけ、他の誰かが必ず損失を被る関係性です。全体の富の総量は一切変わることがありません。
たとえば、A君とB君がお金を100円ずつ出し合い、じゃんけんをして勝った人が全てのお金をもらうとします。この場合、A君が200円を得たら、B君は元々出した100円を失うことになります。
このように、誰かが得た利益は、必ず他の誰かの損失から生まれるのがゼロサムゲームなのです。
プラスサムはみんなが得する可能性のあるゲーム
一方で、ゲームに参加した人全員が利益を得る可能性のある「プラスサムゲーム」というものも存在します。これは、参加者が協力して新たな価値を生み出すことで、富の総量そのものがプラスに増えていくということです。
たとえば、みんなで協力して新しいカフェを作ったとしましょう。そのカフェが繁盛すれば、参加者全員が利益を得ることができ、社会全体の経済的な価値も増えます。このように、プラスサムゲームのの考え方は、投資の本質を理解する上で非常に重要なのです。
また、もうひとつ知っておくべき概念が「マイナスサムゲーム」です。これは、参加者全員の富の合計がマイナスになるゲームのことを指します。ギャンブルの多くは、このマイナスサムゲームに当てはまります。その理由は、次の項目で詳しく説明します。この3つのゲームの違いをまとめると、以下のようになります。
ゼロサムゲーム | マイナスサムゲーム | プラスサムゲーム | |
主たるプレイヤー | プレイヤー同士 | プレイヤー+胴元 | 投資家+企業 |
富の総量(パイの大きさ) | 常に一定 | 減少していく | 増加していく |
利益の源泉 | 他の参加者の損失 | 他の参加者の損失+手数料 | 新たな価値の創造 |
具体例 | ポーカー、麻雀 | 競馬、宝くじ、カジノ | 株式投資、ビジネス |
ギャンブルは「ゼロサム」「マイナスサム」の世界
胴元がいるギャンブルは全体で見たら必ず損をする
競馬や宝くじ、カジノなど、世の中にあるほとんどのギャンブルは、実は「マイナスサムゲーム」です。これは、ゲームを運営する「胴元」が、必ず手数料を取るためです。この手数料は「控除率」や「ハウスエッジ」と呼ばれており、参加者が賭けたお金の一部が胴元の取り分となります。
たとえば、宝くじの売上金の約40%は、胴元である国や自治体の取り分となり、その他のお金は運営資金などに充てられます。当選金として配られるのは、残りの46%ほどに過ぎません。この46%の奪い合いに勝利すれば、莫大な富を得られますが、全体を見たら大幅な控除を受けていることは分かります。
このように、参加者が賭けたお金の一部が必ず運営元に流れるため、参加者全体のお金の合計は確実にマイナスになります。つまり、参加すればするほど、みんなの富が減っていく仕組みなのです。
ギャンブルの種類 | 控除率(目安) | 引用元 |
宝くじ | 約54% | 総務省「宝くじ・公営競技・サッカーくじの実効還元率」 |
競馬 | 約25% | JRA「馬券のルール」 |
競輪・競艇 | 約25% | 総務省「宝くじ・公営競技・サッカーくじの実効還元率」 |
カジノ(ルーレット) | 約1.5% | 社会実情データ図録 |
プレイヤー同士の勝負でも利益は目減りする
それでは、ポーカーや麻雀など、プレイヤー同士で戦うギャンブルはどうでしょうか。これらのゲームは、参加者同士でお金を取り合うため、理論上はゼロサムゲームが成り立ちます。
たとえば、友達同士で麻雀を打つ場合、1人が勝つと、他の誰かがその分だけお金を失いますが、そのゲームには胴元が関与していないため、全体の富の総量は増えも減りもしません。
しかし、現実には、これらのゲームも「マイナスサムゲーム」に近づくことが多いです。なぜなら、ゲームをする場所代や手数料が発生するからです。
たとえば、カジノでポーカーをプレイする場合、ゲーム運営者は「レーキ」と呼ばれる手数料をプレイヤーから徴収します。また、雀荘で麻雀をする場合には、必ず場代がかかります。
これらの手数料がある以上、参加者が最初に持ち込んだお金の総額は、最終的にマイナスになります。したがって、誰かが勝ったとしても、全員が払った手数料の分だけ、全体として見れば損をしていることになります。
これらの理由から、ギャンブルは本質的に「ゼロサムゲーム」または「マイナスサムゲーム」であると言えるのです。
投資は「プラスサム」を目指せる
投資では、企業の成長が利益を生み出し、パイが拡大する
では、投資はどうでしょうか。株式投資は、企業にお金を出資して、その企業の成長を支援する活動です。投資されたお金を使って、企業は新しい製品を開発したり、工場を建てたり、社員を雇ったりします。
この活動によって、企業が生み出す価値はどんどん増えていきます。この増えた価値の一部を、株価の上昇や配当金として、投資家は受け取ることができます。
投資で得られる利益には、主に2つの種類があります。
- キャピタルゲイン: 株価が上がったときに、売却して得る利益です。
- インカムゲイン: 株を保有している間に、企業から受け取る配当金などの利益です。
企業が成長して利益を増やせば、株価は上昇し(キャピタルゲイン)、配当金も増えていきます(インカムゲイン)。

つまり、投資の利益は、誰かの損失から生まれるのではなく、企業が新たに創造した価値を分け合うことで得られるのです。このことは、世界経済や日本の株式市場が長期的に成長していることからも裏付けられています。
投資対象 | 長期成長率(目安) | 引用元 |
世界経済(GDP) | 年平均約3〜4% | 世界銀行 (https://data.worldbank.org/indicator/NY.GDP.MKTP.KD.ZG) |
日経平均採用銘柄の配当金 | 2013年から2023年で約2.5倍に増加 | 日本経済新聞 (https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB055530V00C24A1000000/) |
短期売買は「ゼロサムゲームになる」ことも
一方で、短期売買は、ギャンブルと同じようにゼロサムゲーム、またはマイナスサムゲームになる側面があります。
例えば、デイトレードのような短期売買は、数分から数時間という短期間で売買を繰り返します。このような短期間では、企業価値が劇的に変わることはほとんどなく、短期的な株価の変動の理由の中心は、主にトレーダー同士の需給(需要と供給)によって引き起こされます。
つまり、「誰かが儲かれば、必ずその陰で誰かが損をしている」というゼロサムゲームになる側面が非常に強いのです。言い換えれば、短期的な株式売買はギャンブルと同様に毀損のパイの奪い合いをしているという点で共通している側面はあるということです。
これが、投資はギャンブルと違うものなのか?という疑問を生み出す原因にもなっているものと思われます。
プラスサムゲームに参加するためには長期投資を意識するべき
しかし、長期投資とギャンブルは、本質的に違うものです。ギャンブルは、分配される富のパイを奪い合う活動です。一方、長期投資は、富のパイそのものを大きくする活動なのです。
言い換えれば、ギャンブルでは敗者が必ず生まれますが、長期投資であれば、全体の富が増加していることから、全員が勝者となる可能性も大いにあるのです。
短期的な値動きに一喜一憂するのではなく、長期的な視点を持って、企業の成長という「プラスサムゲーム」に参加することこそが、資産を増やすための最も大切な考え方なのです。
