お金がない
債務整理中にお金がないと言う方は、少なからずおられます。そのようなとき、債務者はすぐに「借りる」という発想になりがちです。
しかし、債務整理中に借り入れを行うことは、絶対にしてはいけません。
なぜなら、債務整理を失敗させるリスクがあり、弁護士や司法書士との信頼関係にも悪影響を及ぼすためです。また、闇金や詐欺に引っかかる可能性があるなど、決していいことはありません。
では、このような状況になった場合はどうすればいいのでしょうか?
本記事では、「債務整理中にお金がない場合にはどうすればいいか」を解説していきます。
【お金がない時の対処方法①-1】収入を増やす
仕事を増やして収入アップを図る
まず最初に、「収入を増やす」という方法が考えられます。
債務整理中に資金不足を感じた際、新たな仕事を見つけて収入を増やすことが何よりも重要です。
その理由としては、資産形成の考え方の一つに、入金力という考え方が参考になるでしょう。
入金力というのは、当ブログでも紹介した、「厚切りジェイソン『ジェイソン流お金の増やし方』」にも共通する考え方で、収入を増やして支出を減らすことでなるべく資産形成に多くのお金を使うという方法、またはその能力のことです。
これはあくまで、資産形成の話ですが、借金返済にもこれに共通する部分はあります。返済能力(≒入金力)を高めることが、借金問題解決のために有効であるということです。
月々の返済額を増やし、生活に要鵜を持つためにも、収入アップと支出カットに取り組みましょう。
収入を増やすのと家計管理、どちらの方が重要?
家計の管理というと「まずは支出を減らすべき」「家計管理=節約だ!」と考える方もいるでしょう。
しかし、私は収入を増やす方が重要だと考えます。
例えば、手取り月収15万円のフルタイム労働者の家計収支がこうだとします。
家賃 | 50,000 |
食費 | 40,000 |
光熱費 | 10,000 |
携帯電話等の通信費 | 5,000 |
保険 | 10,000 |
交通費 | 10,000 |
日用品等 | 5,000 |
医療費(薬品等購入含む) | 5000 |
その他雑費 | 5000 |
合計 | 140,000 |
この方が月2万円を捻出したいなら、どの支出を削ればいいでしょうか?
正直、無駄遣いが少ないこの家計では2万円減らすのは難しいですよね。
でも、2万円を稼ぐことを考えてみましょう。
1日8時間のバイトなら8,000~12,000円の収入になります。月に2~3日働けば、2万円は確実に手に入ります。
つまり、収入の少ない方は、余裕のない支出を削るよりも先に「収入アップ」を目指す方が効率的に家計を改善でき、その効果も高いと言えるのです。
そのため、本記事では第一に収入を増やすことを推奨しています。
収入を増やす方法は?
収入を増やすといっても、様々な方法があります。
等の方法が考えられるでしょう。例えば、副業としてパートタイムやフリーランスの仕事、アルバイトを始めるのも一つの選択肢です。
近年では、タイミーやメルカリハロといったスキマ時間を有効に利用できるサービスが増えており、多忙な方でも時間を見つけて収入を増やすチャンスがあります。
また、クラウドソーシングのタスク案件も選択肢になるでしょう。
クラウドソーシングとは、企業や個人がインターネット上で不特定多数の人に業務を依頼するビジネス形態で、「クラウドワークス」や「ランサーズ」といったクラウドソーシングサービスのサイトで案件を受注できます。
PCを利用したクラウドソーシングサービスは、専門的な技量が必要となるような印象があるかもしれませんが、データ入力や出品作業など簡単な作業で報酬が得られるものもあります。
変わったところと、youtubeやtiktok等の動画の台本や、ブログ記事を書くというものもあります。ご自身の仕事や趣味に関わるようなものであれば、挑戦するのも面白いかもしれません。
【収入を増やす際の注意点①】収支報告を行う
債務整理中であっても副業をすることは問題ありません。むしろ、債務整理中に新たに副業を始めることは良い選択肢と言えます。
任意整理や個人再生を行っている場合は、副業収入は返済期間を短くすることに寄与し、生活費の不足を補填する助けとなります。
また、自己破産の場合でも、副業収入は生活費として使用することができ、生活費もままならないような貧困状態を解消する手段となります。
ただし、副業収入があまりにも多くなりすぎると、自己破産や個人再生が認められない可能性があるため、注意が必要です。
また、副業収入があることは隠すことなく報告するようにしましょう。
任意整理の場合は裁判所を介さないため、すべてを報告する必要はありませんが、依頼をしている弁護士・司法書士には、どの程度の収入があるかを報告しておく方が無難です。
報告を怠ると、正確な収支状況が把握できなくなり、貸金業者との交渉に悪影響を及ぼす可能性があるためです。
個人再生や自己破産のような裁判所手続きの場合は、収入状況を明確にする必要があります。
副業収入を隠すと、将来的に事実が明るみに出た際には財産隠しではないかと疑われ、免責が許可されない、再生計画の認可が下りないなどといった不都合が生じる可能性はありえます。
したがって、裁判官の信頼を損なわないためにも、副業収入を正確に報告することが重要です。
注意点②違法なバイトをしていませんか?
次に、仕事と称して犯罪行為や法に抵触するおそれのある行為をしないことです。
当然のことながら、これらは法律的にも倫理的にも決して許される行為ではありません。
残酷な話ですが、借金苦やお金欲しさに窃盗、強盗、詐欺等の犯罪行為に手を染めたケースを並べておきます。
- 銀行口座を買い取ってくれる業者に販売した
- 携帯電話を詐欺グループと思しき人に渡してお金をもらった
- 倉庫や車上荒らしから物を盗んで売っていた
- オレオレ詐欺の出金役をやって逮捕された
- 強盗に入った
こんなことをするわけないと思った方もいるかもしれません。
借金ごときで犯罪をすると思われているのかとお怒りになりたい気持ちもあるでしょう。
ただ、いずれも事実であり、報道されているものです。情報ソースを張っておきますのでご覧ください。
このように、借金に困ると、ある一定程度の人数の方は、犯罪に走るのです。最近、社会問題化している闇バイト(警視庁「#BAN 闇バイト」)にも、一定数の借金苦で参加している方もいるようです。
借金を苦にしても、闇バイトに手を付けるのは絶対に止めましょう。逮捕されるまでやめられず、逮捕されたあとに待ち受けるのは懲役や被害者への損害賠償という地獄のような日々です。また、以下の記事では、家族等の身内にまで請求が行ってしまうこともあるということを示しています。(弁護士ドットコム「闇バイト」で息子が逮捕された 被害額は1千万円「親が支払わないといけないですか」)
借金をしたのはあなたの判断であり、借金を返すのはあなたの責任です。ほかの人たちは一切関係ありません。ましてや、無関係の人が被害を被り、犠牲になっていいはずがありません。
注意点③副業詐欺に要注意
また、副業にも注意が必要です。
債務者の多くが、お金を得るために「1日〇万円稼げる」と言う触れ込みの物販ビジネスやアフィリエイトサイトなどに手を出しています。このような副業詐欺や投資詐欺の被害は非常に多く、警察庁の発表によると、2023年のSNS型投資詐欺とロマンス詐欺の被害件数は合計3,846件、被害額は455億2千万円に上り、オレオレ詐欺などの特殊詐欺の被害額(約441億2千万円)を超えています。(朝日新聞デジタル記事「SNSで投資勧める詐欺被害急増 1年で455億円、特殊詐欺上回る」)
これらの多くは実際には収益を上げられないものであり、情報料等を支払っても無駄になることがほとんどです。絶対に付き合わないようにしましょう。
副業をするのであれば、ちゃんとした会社でちゃんとした仕事をしましょう。
近年では、飲食店やコンビニのバイトは時給が上がってますし、スキマバイトなどを紹介してくれるサービスも充実しています。
そういうちゃんとした場所で働くことが重要です。
【お金がない時の対処方法①-2】家計収支を見直す
「収入を増やすのと家計管理、どちらの方が重要?」では、収入アップの方が家計の改善効果は髙いといいましたが、なぜ家計収支を改善する必要があるのでしょうか?
家計収支を見直す理由は、お金をねん出するためというよりも、家計の管理能力を高めるためです。
借金に悩む多くの方は「生活のため」「生活費が足りない」と言ってお金を借ります。確かに、生活が苦しい時にはクレジットカードやキャッシングに頼りたくなる気持ちも分かります。
しかし、生活費のためにお金を借りるのは考えが甘いのです。
毎月の家賃、食費、光熱費…。
これらの出費がなくなることは、絶対にありません。逆に、借金で赤字を埋めても、借金がどんどん膨らむだけなのです。
債務整理中であるかに関わらず、借り入れで生活費などを賄うという考え方は、改めるべきであり、家計の管理能力を身に着けることで、借金を増やさない体制を整えることが重要になるのです。
債務整理は再スタートです。借金と決別するんだという強い意志を持ちましょう。
今のうちから家計管理を始め、借金なしの生活を目指すことが大切なのです。生活を出来るようになっておくことは、後々にもプラスに働きます。
家計の見直しポイントは?
借金に悩む多くの方は、借金返済額や支出内訳の把握が甘いことが多いのです。
おおらかなお人柄は素晴らしいですが、お金の管理は別問題です。
中には、趣味にお金を使いすぎて借金する方もいます。借金のない生活なら自由に使えますが、債務整理中ならご法度です。
家計の見直しポイントですが、まずは、家計収支を把握することが重要です。
具体的な例としては、家計の収支表を作り、以下の点に注意して、定期的にチェックするのがおすすめです。
- 収入の把握 給与明細や振込履歴で手取り収入を毎月確認
- 支出の把握 家賃、光熱費、通信費、借金返済など毎月の固定費を算出収入との差額で自由に使えるお金を割り出す
- 使えるお金が少なければ副業を、多く使いすぎているなら出費を見直す
それ、本当に生活費ですか?
さきほど、「借金に悩む多くの方は「生活のため」「生活費が足りない」と言ってお金を借ります。」と言いましたが、「生活費」と称される出費も、本当に必要な生活費として使っているかどうか疑問です。
以下の質問に、自信を持って「一切そんなことはしていない」と言い切れますか?
- 毎日のように大量に酒を飲んでませんか?
- 何箱もタバコを吸っていませんか?
- 週に何度も外食をしていませんか?
- 友達と旅行や遊びにいくためのお金(遊興費)を必要費に計上していませんか?
- 収入に見合わないような良い車を持ったり、良い家に住んでませんか?
- また、収入を大きく上回る高級品を購入していませんか?
- 一発逆転を狙ってパチンコや競馬に興じたりしてませんか?
- 趣味のゲームでガチャを回すことを生活費と称していませんか?
娯楽を楽しむことは否定しません。娯楽を否定してしまえば生きてる意味がなくなってしまいます。
いい車やいい家に住むことも、収入が許すなら問題ありません。いいご飯を食べるのだって収入の範囲内であれば自由です。お酒やタバコだって、収入の範囲内でやる分には許されるべきです。
他人からみるとバカげた事やなんの価値があるのかわからない事でも、第三者に危害を及ぼさない限りは、行為を邪魔されない権利があるのが、本当の自由というものです。
ですが、それはあくまで「第三者に危害を及ぼさない限りは」と言う話です。
借金の返済をしないことは、お金を貸してくれた人にまさに損害を与える行動であるということを忘れるべきではありません。ましてや、自分の娯楽や欲望を優先して他人を犠牲にしているのなら、大問題です。
借金の支払いが出来ていないのに娯楽に興じるのは、無駄遣い以外の何でもありません。
娯楽は借金を払った後に、余ったお金でやりましょう。余ったお金をどう使おうが、あなたの自由です。
ただし、お金が余らないなら、それはあなたの収入に見合わない贅沢だということです。
【お金がない時の対処方法②】家族や知人、会社を頼る
次に、身内や知人、会社に頼り、金銭面や物資面で支援を受けることが考えれます。
例えば、金融機関以外の身内や知人からの借り入れは、信用情報とは無関係です。信用情報に影響することはなく、消費者金融等では必ずかかる利子を請求されない可能性が高いことから、一時的にお金を借りるなどの相談もしやすいでしょう。
支払い期限が迫っている時や、急な出費が必要な時に特に有効です。
また、本当に困っているなら、生活面や精神面で手助けしてもらえるかもしれません。
とはいえ、いくつか注意すべき点があるのです。
家族や身内に頼る場合の注意点
まず、返済が滞ると相手方に迷惑をかけるのみならず、人間関係が悪化するリスクがあるということです。借金が知られるとプライドが傷つく可能性もあるでしょうし、そもそも、借金問題を他人に押し付けるのは適切なのか?という問題があります。
また、人間関係に永続的な悪影響を及ぼし得る点にも注意が必要です。
「金の切れ目が縁の切れ目」と言いますが、家族関係とは一層複雑なものです。愛憎が渦巻くことで、家庭内暴力など、より大きなトラブルに発展してしまうというリスクがあるのです。
昭和61年版「犯罪白書」でも、
「殺人事件は,一般的には,加害者と被害者との人間関係の破たんや崩壊に端を発している場合が多く,そこには,加害者と被害者の相互関係が極めて重要な役割を果たしていると考えられる。」昭和61年版「犯罪白書」
との指摘がなされていることからも分かる通り、殺人事件と言うのは、家庭内や知人間のトラブルがきっかけになることが多いのです。
統計上も、令和3年の警察白書では、殺人事件のうち被害者が被疑者の親族である割合は47.1%、これに対して友人・知人は13.8%、面識なしは12.1%とされています。
もちろん、殺人にまで至るのは極端な事例ですが、人間関係の破綻が、暴力などに繋がってしまうケースも考えられることから、支援を求める際にはそれ相応のリスクを把握する必要もあるでしょう。
つまり、身近な人に頼るのは一時的な解決策であり、将来のリスクを伴うのです。借金問題や経済的困窮は、第一にあなた自身の責任で解決すべき問題なのです。
注意点②会社から借りるなら絶対に辞めてはいけない
次に、会社からの借金をするパターンの注意点です。
会社からの借金をするのであれば、その会社で借金完済まで働き続ける覚悟を固めることが必要です。
標語のように言うなら、「借りたら辞めるな、辞めるなら借りるな」です。
会社が債務者にお金を貸してくれるのは、「給料から借金は天引きできる」という実際的な理由もあります。
ただ、それ以上に「大事な社員が困っているのを助けてあげたい」という温情という側面が強いように思えます。
その会社を辞めることは、貸したお金の回収が難しくするだけでなく、会社からの恩をあだで返す行為とも言えます。
会社からお金を借りて辞めたらどうなるの?
「お金を借りておいて、平気で裏切る人がいるなんて信じられない」と思うかもしれません。
そこで、1件、過去に債務整理をした案件をご紹介します。
いかがでしたでしょうか。平気で裏切る人はいるんです。
こうなりたくないなら「借りたら辞めるな、辞めるなら借りるな」を徹底してください。
注意点③ 他者を責めたり非難したりしない
家族や身内に頼ろうとしたが、誰も助けてくれなかった場合はどうすればいいのでしょうか?
「親がお金を貸してくれない。あいつらは薄情だ!」と愚痴ったり、誹謗中傷をされる方がおられますが、このような時、自分の思い通りにならないからと、他者を責めたり非難したりしてはいけません。
たとえ相手が誰であれ、お金を貸すのは悩むものです。ましてや債務整理中の人に貸すのは、返済リスクを考えると合理的とは言えません。
債務整理中の借り入れ依頼なんて、断られて当然なのです。その事実を謙虚に受け止めましょう。
【お金がない時の対処方法③】弁護士や司法書士に相談する
お金がない時の対処方法の三つ目は、「債務整理を依頼している弁護士や司法書士に相談すること」です。
債務整理中や債務整理後に経済的困難に陥ったら、依頼した弁護士にまず相談することが大切です。
支払いが難しいことを伝えるのが恥ずかしかったり面倒だったりして、連絡せずに消えてしまう依頼者も少なくありません。
しかし、弁護士は借金問題のプロなので、良い解決策を提示してくれる可能性が高いのです。
債務整理の方法を変更する
また、任意整理から自己破産に切り替えることで、全ての借金の返済をストップできれば、支出を減らせるため生活再建に役立つこともあります。
生活の困窮の原因が、借金の返済額が大きすぎることが原因である可能性があるからです。
その場合、破産や個人再生といった適切な方針に切り替えることで、返済額を減らせるかもしれません。
しかし、債務者側の事情により、このアドバイスが受け入れられないこともあります。
- 車を失うから破産はしたくない
- どうしても住宅は残したい
- 保証人に迷惑はかけられない
などの理由が、適切な方針変更の妨げになるのです。
ただし、借金を払いたくない一方で自分の要望も通したいというのは、認められる可能性が非常に低いことを理解しておきましょう。
あなたの要望を通すためには、借金を返すしかないのが現実なのです。
依頼費用の支払いを待ってもらう
例えば、弁護士費用の支払いが厳しい場合、今後の支払いスケジュールなどを相談に乗ってもらえるかもしれません。
事情により依頼費用の入金が難しくなった場合、支払い期日の変更や金額の調整ができないか相談し、分割払いが可能な事務所なら応じてもらえるか確認するべきでしょう。
さらに、弁護士費用が全く支払えない状況なら、法テラスの民事法律扶助制度を利用できる場合もあります。
月収や保有財産などの条件を満たせば、法テラスが債務整理に必要な費用を立て替えてくれる場合もありますので、確認した方がいいでしょう。
【方法④】公的機関に頼る
多くの債務者は、お金がない時に消費者金融やクレジットカードに頼ってしまい、それが破滅につながってしまいました。
借り入れで失敗する人の多くは、そもそも頼る先を間違えているのです。
テレビCMを打つような消費者金融やクレジットカード会社は営利目的の企業であり、高い利息設定で利益を上げています。
彼らは慈善事業ではありませんし、それを非難するのは筋違いです。
では、お金不足の際に本当に頼るべきはどこでしょうか。
それは市役所や社会福祉協議会などの公的機関です。
衣食住の確保や直近の生活支援については、所得制限等の条件を満たせば、役所が支援してくれます。
そのため、お金が不足して困った時は、債務整理の有無に関わらず、まずは公共機関に相談するのが賢明な選択と言えます。
一方で、公的機関からの金銭的支援については、いくつか課題もあります。
所得制限があることが多い、返済が必要な融資制度が多い、手続きが煩雑で時間がかかるなどの批判される側面は確かに存在します。
しかし、だからといって高金利のクレジットカードや消費者金融に頼るのは得策とは言えません。
少なくとも、市役所などの公的機関に相談する方が、はるかに持続可能な解決策になるでしょう。本当に苦しいなら、国や自治体が提供する公的融資制度に頼るべきなのです。
代表的な公的融資制度や福祉制度
代表的な公的融資制度や福祉制度には以下のようなものがあります。
緊急小口資金融資制度
生活再建資金融資制度生活保護
住宅支援
失業保険
再就職助成金
医療扶助(病気や怪我の場合)
これらの制度を利用すれば、生活費や急な出費をカバーするための融資を受けられます。
生活の安定につながる可能性もあるため、緊急の生活困窮時には早めに地方自治体や関連機関に相談し、公的融資制度の利用可能性や手続きを具体的に確認することが肝要です。
これらの支援を受けることで、一時的な困難を乗り越えられる可能性があります。
さらに、役所では公的支援や助成金に関する情報提供、適切な手続きのサポートも受けられます。
お金に困った時は、まずは公的機関に相談し、利用できる支援制度を確認することが何より大切なのです。
制度名 | 備考 |
生活福祉資金貸付制度 | 債務整理中でも利用可能無利子または低い利率(1~3%)用途は多岐にわたり、返済に猶予や免除も可能 |
緊急小口資金 | 少額融資、無利子または低い利率(1~3%)審査があり、最短で5日ほどかかる場合あり |
求職者支援資金融資制度 | ハローワークの支援を受けている人が対象返済期限あり |
母子父子寡婦福祉資金貸付制度 | 母子家庭または父子家庭向けに多目的な支援を提供、利息は1~3%程度 |
高額医療費資金貸付制度 | 医療費の支払いが困難な世帯に対し、高額療養費が支給されるまでの間、無利子で資金貸付 |
生活福祉資金貸付制度
債務整理中にお金が必要になった場合、有効な対策として生活福祉資金貸付制度を活用することが挙げられます。
生活福祉資金貸付制度は、国が都道府県の社会福祉協議会を通じて提供する融資制度であり、無利子または非常に低い利率(1~3%)で資金を借りることができます。
生活福祉資金貸付制度では、総合支援資金という、生活費用や公共料金等の立て替え費用、債務整理をするために必要な経費などを融資してくれます。
また、けがや病気、失業などを補填する福祉資金や、低所得者世帯のお子さんが高等学校、大学又は高等専門学校に終了するために用意された教育支援資金という、豊富な種類の融資制度が整っています。
言い換えれば、生活費はもちろん、住居費や教育費など、さまざまな目的に資金を利用することができるということです。
これらの借り入れは、返済開始までに半年ほどの猶予があります。
また、返済が開始になっても、収入が元に戻っていない場合や返済が困難なときには、再猶予や支払いの免除を認めてもらえることもあります。
さらに、これらの借り入れを債務整理の費用の支払いや返済に当てることも認められます。
自己破産や個人再生への影響もありません。
これだけ聞くと素晴らしい融資制度のように聞こえますが、支給開始までに時間がかかること、融資の際に審査があり、所得制限が課せられているため、収入が多い方だと利用できない場合があるということには注意が必要です。
加えて、法律上は債務整理の費用に充てることも認められてはいるのですが、実際のところは消極的で、窓口によっては「債務整理中には借り入れはできない」と断っているところもあるそうです。
すぐにお金が必要な場合は緊急小口資金
緊急小口資金は、国が各都道府県の社会福祉協議会を通じてお金を貸し付ける融資制度です。
少額であるという点はネックですが、比較的短期間で振り込みを完了してくれるため、直近の生活が困った場合には頼る先として挙げられます。
特徴として、緊急小口資金は無利子です。
ただし、返済期限を過ぎると年率5%の延滞利子が発生します。
返済の開始までには2ヶ月の猶予期間があります。
審査は他の制度に比べて早く、緊急性の高い事案に対して貸付が行われます。
貸付内容は、最大で10万円までの貸付が可能で、担保や保証人も必要ありません。
注意点としては、緊急小口資金は他の福祉制度と比べて、支給までの期間はかなり早い方ではありますが、即日融資されるわけではありません。最短でも申し込みから5日程度、長い場合、10日程度は待たなければならないことがあります。
また、少額小口資金が返済開始となった後に支払いを怠った場合、5%の遅延損害金が生じることも覚えておきましょう。
なお、「即日融資」がないことを理由に緊急小口資金は使えない、という方も稀におられるようですが、債務整理中に即日融資をしてくれる業者はほとんど存在しないものと考えて差し支えありません。
(当然、利用は推奨はしませんが)中小の消費者金融ですら、申し込みから融資まで数日かかります。
そして、利息は何十パーセントも向こうの方が高いのです。
また、仮に即日融資をしてくれる神様のように優しい人がいたとして、その人はほぼ確実に闇金業者でしょう。
即日融資というのは、実はそれほどリスキーなものであり、基本的には近寄らないことを強くおすすめします。
求職者支援資金融資制度
求職者支援資金融資は、ハローワークの「職業訓練受講給付金」を受給する生活に困っている人を対象とした公的な融資制度です。
配偶者や同居家族がいる場合は月10万円(上限)、それ以外の場合は月5万円(上限)を受講予定訓練月数(最大12カ月)で計算して借りることができます。
担保や保証人は不要です。
融資を受けたお金は、職業訓練が完了した月から4カ月後に返済が開始されます。
返済は元本と利息の支払いで、貸付利率は年3.0%と比較的低めです。
ただし、返済が遅れた場合には遅延損害金として年率14.5%の支払い義務が生じます。
ハローワークで職業訓練受講給付金を受けることと、求職者支援資金融資要件確認の交付を受けることが条件です。
なお、求職者支援資金融資制度の窓口はハローワークになりますが、融資を受けるためには、労働金庫からの審査に通過する必要があります。
返済能力がないと判断されると貸し付けを受けられない可能性があります。
母子父子寡婦福祉資金貸付制度
母子父子寡婦福祉資金貸付制度は、自分の居住地から最寄りの市役所で申し込める、お子さん等を扶養している母子家庭の母又は父子家庭の父等を対象に資金の貸付けを行う制度です。
貸付の名目は多種多様に渡り、生活資金や住宅資金などを支援するものの他、子供の就学費用、修学旅行費、就職の際の準備金、ひとり親の就職支援のための技能研修費用などを貸し付けてくれます。
利息は制度により異なりますが、おおむね1~3%程度と金利は安く設定されています。
債務整理中に借入が必要な理由として、お子さんの進学費用や学校で必要になる備品などが上がることは珍しくありません。
そのため、そういったお金に困っている方であれば、役所の窓口で相談されることをおすすめいたします。
生活保護を検討する
上記の融資制度を利用してもなお、どうしても生活が成り立たない場合、最終手段として生活保護を検討する必要があります。
生活保護法第60条では、保護を受ける者の生活上の義務が定められています。自分の能力に応じて働く努力をし、健康を保ち、さらに支出を節約することが求められています。(参照:e-GOV法令検索「生活保護法第60条」)(引用:厚生労働省「生活保護制度」)
生活保護は、所得が低く生活が難しくなってしまった場合に受けられる制度で、生活をする上で最低限必要とされる費用(下記の費用)に対して支給されます。
★日常生活に必要な費用(食費・被服費・光熱費等)
★アパート等の家賃
★義務教育を受けるために必要な学用品費
★医療サービスの費用
★介護サービスの費用
★出産費用
★就労に必要な技能取得等にかかる費用
★葬祭費用等
このような保護費は、家賃や学費といった特定の用途に指定され、用途に従った形でしか支出をできません。つまり、生活保護を受給している場合、保護費から借金を返済してはいけないのです。
そのことは、すべての消費者金融やクレジットカード会社が知っていることです。
業者によっては「生活保護を受給している」と伝えると、連絡や催促が来なくなるということもあります。
そのため、明日の生活にも困る状況であれば、生活保護を申請して、いったんは借金の返済をストップすることで、生活を立て直していくというのは方法としてありです。
借金があっても生活保護は受けられる?
ここで、「借金があっても生活保護は受けられるのか?」という疑問を持たれる方もおられるかもしれませんが、問題ありません。
なぜなら、生活保護の受給において、借金の有無は受給要件には関係ないからです。
生活保護は、生活に困窮している方々に対して最低限の生活を保障するための制度であり、借金があるかどうかは受給の対象には影響しません。
生活保護の受給には、収入や資産、能力の活用などが評価されます。
借金がある場合でも、それを返済するための収入や資産が不足している場合には、生活保護を受けることができます。
生活保護の注意点
ただし、借金がある場合でも、受給申請時には収入や資産の状況などを詳しく調査されることがあります。
また、生活保護の受給を決定する際には、借金の返済能力なども考慮される場合があります。
注意が必要なのが、生活保護を受給したからといって借金が無くなるわけではなく、借金返済の義務や責任は依然として存在するということです。
また、生活保護を受けても借金を返済するための支援や免除はありません。
生活保護の受給額は最低限度の生活費をカバーするものであり、借金返済に充てることは困難です。
また、生活保護のお金で借金を返済することは不正受給になり、生活保護の打ち切りのリスクがあります。
借金の返済義務は放置しておくことは許されず、生活保護受給中も含めて返済義務は継続します。
役所の支援制度にはデメリットも
ただし、役所の支援制度にはデメリットもあります。
まず、支援を受けるには手続きや審査に時間を要することです。特に公的援助制度への申請は審査が厳格です。
また、役所の支援には一定の条件を満たす必要があり、全ての状況に対応できるわけではありません。
支援の範囲や額にも限りがあるため、必要な支援が得られない場合もあります。
つまり、役所の支援制度は公的な援助を受けるための有効な手段ですが、手続きや審査に時間がかかり、支援の範囲や条件には制約があることを理解しておく必要があります。
それでも、消費者金融などの高金利の貸金業者を頼るよりはリスクが断然に低いです。
生活に困窮した際には真っ先に役所に相談するのが賢明だと言えるでしょう。
債務整理中に生活が困窮してしまったら、公的貸付・公的扶助制度を利用するのも1つの手段です。
これらの制度は、生活に困った人を救済する事を目的としています。
いわゆるブラックリスト状態であったとしても、条件さえ満たせば、お金を借りたり援助を得たりできる可能性が高いでしょう。
最後に
「お金がない」は返済できない言い訳にならない
債務整理中に直面する重要な事実は、「お金がないことは借金の言い訳にならない」ということです。
借金には返済義務が伴います。その義務から解放されるのは、自己破産をした時だけです。
それ以外の手続きでは、借金を返済しやすくなるだけで、返済義務そのものは残っているのです。
「お金がない」という言い訳は、最初から通用しないことを肝に銘じておきましょう。
それでもなお、「お金がないから返済できない」と考えるのは、「自分が困っているのだから助けてもらって当然」「自分は特別だから例外扱いされるべき」などと、自分に都合のいい理屈で自己正当化しているだけなのです。
しかし、そんな考えは債務者の独りよがりに過ぎず、社会一般では通用しません。
お金がないのには理由が一つしかありません。お金は使うから減るのです。
ある日突然、財布の中身が蒸発したわけではありません。
お金が不足しているのは、第一義的にはお金を使ったあなた自身の責任であり、誰かのせいではないのです。
この責任から目を背け、「お金が足りない」などと言っていては、問題の本質から逃げているだけです。
「自分の意志でお金を使った結果、お金がなくなった」という厳然たる事実と向き合いましょう。
諦めることも時には必要
一見、解決策には見えませんが、諦めることも肝要です。
そもそも、なぜ借金をしたかと言えば、自分の収入に見合わない生活水準を維持したい。でも、収入を増やす努力はしたくないからではないでしょうか?
これは他人のお金で生活するのと同じことです。
欲しいものがあるなら、自分で働いて収入を増やし、その範囲内でやりくりするのが健全な生き方です。借金に頼らず、自分の生活レベルに合った暮らし方をすることが大切なのです。それができた時こそ、本当の意味で債務整理が成功したと言えるでしょう。
確かに、債務整理中はお金に困ることが多々あるでしょう。
ですが、その困難は、自分を見つめ直し、「なぜそんなにお金が必要なのか」を考える絶好の機会なのです。借金と正面から向き合うチャンスでもあるのです。
そして、経験から学び、借金と真摯に向き合う姿勢を持つことが大切です。
「お金がない」ことを言い訳にせず、経験から学ぶ謙虚さを持って、借金問題に取り組んでいきましょう。
まとめ
債務整理中であっても、生活をしていればお金がなくて困る状況になる事も出てきます。
だからといって、債務整理中に借金をしてしまうとリスクしかありません。
大きなリスクを背負って一時的にお金を工面したとしても、一時的にはピンチを切り抜けても根本的な解決にはなっていません。
今以上に生活が苦しくなってしまう可能性が高くなってしまいます。
債務整理中であっても、その時の状況にあった解決策があります。 1人で悩まず、まずは弁護士や司法書士に相談して一緒に解決策を見つけていきましょう。
債務整理中に借り入れができるローンは存在しますが、おすすめできません。
返済困難、高金利、詐欺被害のリスクが高く、債務整理手続きにも悪影響を及ぼす可能性があるためです。
代わりに、収入アップ、役所の支援制度活用、身近な人への相談など、他の選択肢を検討しましょう。
それでも問題が解決しない場合は、贅沢や借金を諦めることも時には必要です。
自分の収入に見合った生活をすることが、真の意味で債務整理を完了させることにつながるのです。
借金に頼らない健全な生活を送ることが何より大切だと言えるでしょう。
債務整理の手続き中、通常の貸金業者からお金を借りる事ができなくなり、どうしても生活に困ったら下記の方法が取れないか検討してみましょう。
彼には、消費者金融などから数百万円の借金がありましたが、会社に肩代わりしてもらい、借金を完済しました。
ですが、彼はわずか数か月で「この会社はやりたいことができない」と言い出して退職してしまい、行方をくらませました。
当然、会社の方が借金の支払いを求めても、ろくに借金を払いませんでした。
困った会社の方は、いよいよ裁判に訴えました。
そこで、依頼者は、裁判所からの書類を見てびっくりして、弁護士に依頼をしてきたのです。
ですが、会社はカンカンで「絶対に和解はしない」「詐欺罪で刑事告訴も検討している」と強気の姿勢を崩しませんでした。
こうなっては、任意整理や個人再生は不可能です。
結局、彼は自己破産をすることとなりました。