ファクタリング

ファクタリング事業者側によくあるトラブル|トラブルになる前に専門家に依頼しよう

ファクタリングは簡易かつ迅速に保有資産を流動化することを実現し、資金繰りの改善や債務の弁済等に活用することができるために、利用者側にとってもメリットのあるサービスとなります。

比較的新たな資金調達の手段であるファクタリングに対するニーズが高まり、その市場規模が拡大しています。

経済産業省においても、売掛金(債権)を活用した資金調達が正当な資金調達手段であることの周知徹底が必要であると、ファクタリングサービスの事業を後押ししているところです。

しかし、ファクタリングサービスを利用する側は資金繰りに困っている会社で、銀行などの融資を受けられない債務超過の会社が大半ですし、ファクタリングを利用する個人事業主も赤字事業になっていることが大半となっています。

この記事でわかること💡

ファクタリングでよくあるトラブルの事例
  ①売掛金を使い込まれた
  ②架空債権をつかまされた
  ③同一売掛金(債権)の複数譲渡

トラブルにあった際の対処法

弁護士・司法書士に依頼するメリット

この記事は、弁護士赤瀬康明(東京弁護士会)に監修して頂いております。https://www.bengo4.com/tokyo/a_13113/l_198854/

ファクタリング事業者側によくあるトラブル

売掛金を使い込まれた

ファクタリング利用者が回収した売掛金を、ファクタリング会社に支払わないという事態になった際、その原因がファクタリング利用者にあることがあります。

例えば、利用者が手元の資金が不足していて他の支払いに充ててしまった場合などです。

ファクタリングを利用した場合、売掛債権はファクタリング会社へ移ります。

ファクタリング利用者はその売掛金回収業務を代行しているだけであり、回収した売掛金はファクタリング会社にすべて渡す義務があるのです。

当たり前ですが、ファクタリング利用者による回収金の使い込みはもちろん厳禁であり、受け取った売掛金を引き渡さずに踏み倒すことも許されません。

このような場合、ファクタリング会社はファクタリング利用者に対して、債務不履行に基づく損害賠償請求を行うことができます。

のみならず、回収した売掛金をファクタリング会社に引き渡さない行為は、横領や詐欺といった刑事責任に問える可能性があります。

ファクタリング会社にとって、このようなトラブルに巻き込まれた際には、弁護士・司法書士に相談をすることで、早急な解決を図るとともに、法的リスクを未然に防ぎ、最小化できる体制を整えておくことが、ファクタリング事業を継続するのに際して重要になりえます。

架空債権をつかまされた

ファクタリング会社が被害を受ける場合で、最も悪質なのは架空債権を利用したファクタリングです。

特に悪質なケースでは、取引先と共謀して架空債権を作り出し、偽造やねつ造された請求書、粉飾された決算書や試算表をファクタリング会社に持ち込んだり、売掛先との取引が継続しているかのように見せかけるために通帳の写しを偽造するなどの手法も存在します。

当然、ファクタリング会社は持ち込まれた売掛債権が架空のものかどうか、信用情報などを基に審査を行いますが、見破れなかったり、巧妙な架空債権であった場合にはファクタリング利用者に騙されることになります。

これらは民事上の不法行為に当たるのみならず、刑法上でも私文書偽造罪や詐欺罪等の罪に該当する可能性がある犯罪的な行為です。

なにより、ファクタリング会社側も利益追求の他に、債権の買い取りを通じて、ファクタリング利用者の事業の円滑な運営や、資金繰りの改善を支援したいと考えているでしょう。

架空債権の利用は、このような願いを踏みにじるという道義的にも許されない行為だと思います。

同一売掛金(債権)の複数譲渡

利用者は複数のファクタリング会社を利用することもあります。

ファクタリングは融資ではなく、売掛金(債権)の売却です。

同一の債権を複数の会社に売却するというトラブルも多くあります。

例えば、A社に対する売掛金債権を、ファクタリング会社B、Cなど複数社に売却したという場合です。

上記の例において、2番目以降に売掛金(債権)の買い受けたファクタリング事業者は刑法上の詐欺罪の被害者になってしまいます。

トラブル後の対応方法

トラブル後に対応方法については、債権回収の問題となります。

一般的な債権回収の方法は、客観的に権利義務関係があるかどうかを判断する必要があります。

具体的には、強制力のある裁判をすれば、どのような結論になるのか、それを相手方に想像させていくことが必要となってきます。

ただし、素人がいくら裁判になったらどうなるかと相手方に想像させようとしても、相手方は耳を傾けることはしない可能性があります。

人は権威に弱いという傾向にあり、正しいことを言うかというよりは、誰が言うかに重きを置きます。

弁護士であれば、裁判の在り方を熟知していますし、素人の方は弁護士をそのような職業だと捉えていると思います。

そうした人の権威に耳を傾けるという心理状況をうまく利用するという意味で、素人で対応するよりも、弁護士に依頼した方が良いという可能性があります。

この手のトラブルは、事案自体は単純な事例ではありますが、誰が交渉するかが結果、解決までのスピートに影響してくるのです。

実際は、民事裁判に移行すれば、権利義務関係が確定し、それに基づいて、強制執行手続きに入ることができ、これを相手側に想像させることができるかどうかに尽きます。

また、刑事手続になる可能性もあり、相手に示談をしたいと思わせる交渉が必要となるだけで、非常に単純な交渉です。

しかし、繰り返しになりますが、正しいことを言っても意味がなく、誰が言うかが大事になってきます。

その意味で、トラブルに合ったファクタリング業者は弁護士に依頼することをお勧めします。

債権回収は本業ではなく、このような業務をするなら、一つでも多くの営業をした方が時間的にもメリットがあるでしょう。

売掛金を使い込まれた場合の対処方法

利用者の売掛金使い込みには刑法上、業務上横領罪が成立します。

また、民事上も不法行為責任が発生します。

こうした結論を前提にいかに交渉していくかが肝となってきます。

架空債権をつかまされた場合の対処方法

架空債権を売却した行為については、刑法上、詐欺罪が成立します。

また、民事上も不法行為責任が発生します。

使い込みの事例と同じく、こうした結論を前提にいかに交渉していくかが肝となってきます。

同一売掛金(債権)の複数譲渡の場合の対処方法

売掛金(債権)の譲渡は口約束でも可能ですが、口約束だけではトラブルが生じた際に紛争が起こる可能性があります。

そのため、ファクタリングを利用する際には、債権譲渡の内容は契約書として残す必要があります。

もっとも、契約書だけでは、債務だけでなく他のファクタリング会社に権利を主張することはできません。

ファクタリング利用者が同じ売掛金債権を、ファクタリング会社2社に対して譲渡する契約を結んだ場合、真の債権の所有者はどちらなのかという問題が生じます。

このような問題を解決するためには、対抗要件という法制度が存在します。

対抗要件は、当事者間で取り決めた法律関係を第三者に主張するための要件です。

例えば、AとBの間でファクタリングに関する契約があった場合、もしAが悪意を持って、Bと同じ内容でCとも契約したとした場合、AはCに対しても債権を譲渡すると主張することが可能です。

Aが悪いことは明らかですが、BとCのどちらが優先されるべきかどうかは別問題です。

このような場合、Bが債権譲渡登記などの手続きを完了しているときには、対抗要件を具備しているとして、法的にBが守られます。

Cは事前に登記を確認しなかった過失があるため、法的には保護されません。

つまり、対抗要件を満たす手続きを行うことで法的な保護を受けることができるようになるのです。

売掛金(債権)の複数譲渡で債務者、他のファクタリング会社に権利を主張できなかった場合には、ファクタリング利用者には責任追及ができます。

泣き寝入りする必要はありません。

Cはまた、Aに対して法的措置を取り、損害賠償を請求することができ、訴訟を提起して判決を確定させ、Aの会社や口座に対して差し押さえをすることが可能です。

また、Aの行動は悪質性が高く、詐欺や横領、文書偽造などの罪に問える可能性もあります。

そのような人間を放置することは、第二、第三の被害者を出すことにつながりかねません。

刑事告訴することで、刑務所へ行ってもらうという選択肢も検討すべきです。

これらの法的措置はいずれも、弁護士の専門分野です。

弁護士は、裁判所、検察庁、その他公官庁に対して訴状や告訴状を作成して提出することができます。

ファクタリング事業者が、弁護士に事前事後に相談することで、対応に困ることが減り、事業運営に集中できるというのは大きなメリットです。

弁護士・司法書士に相談するメリット

多くの事業会社で顧問弁護士と契約をしていますが、それは、事後的な紛争を解決するためだけではありません。

事前にトラブルになりそうな点について相談することで、未然にトラブルを防止する効果もあります。

リーガルチェックのポイントはいくつかありますが、契約書のひな形の作成や、債権譲渡登記の申請、法的問題点の指摘など、多岐に渡ります。

経験が豊富な弁護士を頼ることで、実際にあった裁判例やトラブルの事例を提示し、法的観点から解決方法について検討してくれます。

これにより、これから発生しうる典型的な問題について対応しやすくなり、未知の問題や新たなトラブルにおびえることなく、事業運営に集中することができるようになります。

法的問題を常に相談できるように、顧問弁護士を付けておくことも大事です。

  • 記事監修者
  • 弁護士 近藤 裕之
  • 翔躍法律事務所 所属
  • 第一東京弁護士会 所属
  • ※法律問題に関するテキスト監修に限る