借金の返済が苦しい場合に、解決方法として債務整理手続きを行うことが挙げられます。
この手続きのメリットには、「月々の返済金額を減らすことができる」「借金を無くすことが出来る」ことがあります。
債務整理手続きのなかでも、任意整理がよく行われますが、この手続きを行う人の多くは「毎月の返済金額を少なくして、負担を軽くしたい」と考えられているでしょう。
ですが、任意整理手続きを行っても、月々の返済金額が大幅に減額できない場合もあります。
それは「カードローン」を主に組まれている場合です。
では、カードローンを債務整理することは出来ない、もしくはメリットがないことなのでしょうか。
結論をいうと、カードローンを債務整理することは可能ですが、注意点やデメリットも存在しています。
本記事では、カードローンを債務整理する際のメリット・デメリットや注意事項等について、解説していきます。
カードローンとは
カードローンとは、個人向けのお金の貸し付けのことをいいます。
金融機関から借り入れをする際には、「住宅ローン」や「自動車ローン」などのように、そのお金の使い道が決まっています。
対して、カードローンは使い道を自由に決められます。
また、お金を借りる際には、返済できない場合の保険として、土地や物を担保にしたり、保証人を立てたりすることが一般的です。
対して、カードローンではそうした保証が不要である点も、ポイントです。
さらに、カードローンには返済や借り入れに柔軟性にあります。
借りられる金額に制限がありますが、その範囲内で何度でも借り入れができます。
利用限度額いっぱいまで借りても、一度完済すれば再び借り入れが可能です。
お金を引き出すのは専用のカードで、ATMやコンビニ、スマートフォンを使って行えます。
また、返済も毎月一定額を支払うだけでなく、余裕があれば随時返済や繰上げ返済もできます。
このように、カードローンは、担保が必要ない個人向け融資であり、その借り入れや返済に柔軟性がある点が特徴だと言えるでしょう。
種類別にみるカードローン
カードローンには、消費者金融と銀行が提供する2つの種類があります。
どちらも個人向け融資で無担保ローンであるという点では共通しており、利子を払いながら返済する仕組みですが、銀行と消費者金融という異なる主体が貸し出しを行っていることから、いくつかの点で違いがあります。
根拠法令の違い
まず、法律の違いを見てみましょう。
消費者金融は貸金業法に従っていますので、貸付可能の金額には年収の1/3を超えないようにするという制限があります(これを「総量規制」と言います)。
一方、銀行カードローンは銀行法に基づいているため、貸金業法の制限の対象外です。
したがって、年収の1/3を越えることも可能です。
ただし、銀行内規で貸付上限を定めており、これが年収の1/3程度であることが多いようです。
保証会社の有無
次に、保証会社の有無です。
銀行カードローンには保証会社が付いています。
保証会社というのは、返済ができない場合に代わりに返済してくれる、保証人のような役割を担う会社のことです。
一方で、消費者金融には保証会社がついていません。
保証会社がついていないので、借りた人がお金を返せなくなると、消費者金融は損失を負うことになります。
つまり、銀行と保証会社ではリスクが違うのです。
この違いは、上限金利の差に影響を与えます。
銀行カードローンの場合、上限金利は年15%付近が一般的ですが、消費者金融の場合は年17.8%前後で横並びです。
消費者金融は回収不能の際のリスクが高いので、上限金利を高めに設定しているのです。
融資までの時間
さらに、融資までの時間も異なります。
銀行カードローンは審査に時間がかかるため、最短でも翌日まで待つ必要があります。
一方、消費者金融は審査が迅速で、最短で30分程度で終了し、即日融資も可能で
カードローンも借金の一つ
目的を定めないでお金を借りられ、担保も必要のないカードローンは、利便性に優れていることから、様々な場面で、多くの個人消費者に利用されています。
ただ、注意が必要なことがひとつあります。
それは、カードローンも借金であるということです。
一般の方が「借金」「キャッシング」というと、
「高額な利息を取られる怖いお金貸し」
「タレントや芸能人を起用したCMの消費者金融」
「少しダーティーな印象のある街金やサラ金と言ったキャッシングローン」
というネガティブなイメージであることが多いようです。
ですが、カードローンもお金を借りて利息を支払うので、「借金」「キャッシング」となんら違いはありません。
実際、銀行のカードローンでも年利が15%前後、消費者金融の場合は17.8%前後と、キャッシングローンと同じくらいの金利がかかります。
カードローンをついつい使ってしまう理由とは
貸金業者や銀行は、借金のネガティブイメージを隠すために、様々な方法を駆使しています。
例えば、「キャッシング」と「カードローン」という違う名前を使っているのは、
「キャッシングは少し不安だ」
「お金を借りるような借金をすると多重債務で破産になってしまう」
というような不安やマイナスイメージを持ちやすい「借金」を「カードローン」というカジュアルな言葉に言い換えることで、人々の心理的なハードルを下げるためだとも考えられます。
さらに、最近のカードローンは便利で使い勝手も良く、リボ払いにも対応して、ユーザーに「毎月の返済は少額でいいですよ」とアピールしています。
毎月の返済額を少額に抑えられるうえに、手軽に借り入れができることから、
「今月はお金が足りないけど、カードローンを使えば大丈夫かな」
と考えて、気づいたら数十万円も借りていた……という事例が後を絶ちません。
繰り返しになりますが、カードローンも借金の一つであるということを忘れてはならないのです。
カードローンを任意整理することはできる?そのメリット・デメリットは?
カードローンは
・無担保で借りられる
・個人向け融資である
・返済や借り入れが柔軟である
という利点がある一方で、
・カードローンも実質的には借金と同じ
・キャッシングと変わらないほどの高額の金利を取られる
・カードローンも借金の一つ
ということを解説してきました。
では、カードローンを利用しすぎて、返済のめどが立たなくなったらどうしたらよいのでしょうか?
そのような方には、債務整理のなかでも「任意整理」という方法が適切かもしれません。
任意整理とは、弁護士や司法書士を代理人として、銀行や消費者金融などの債権者との間で交渉を行い、金利の見直しや借金の減額に合意することで、返済条件を有利にする手続きです。
ここからは、任意整理についてのメリットやデメリットについて解説していきます。
そもそも任意整理とは?
任意整理とは、弁護士や司法書士を代理人として、銀行や消費者金融などの債権者との間で交渉を行い、金利の見直しや借金の減額に合意することで、返済負担を軽減する手続きです。
簡単に言うと、返済条件を見直してもらうための手続だと言っていいでしょう。
イメージが湧きづらいかもしれないので、消費者金融からカードローンで100万円を借りた場合を想像してください。
このケースでは、元金に対して、利息制限法に定める法定金利である年利15%が適用されます。
年利15%ということは、1月当たりで約12000円で、これは、毎月の返済額から引かれます。
言い換えると返済金の中から、最大で1万円以上の利息が引かれているのです。
任意整理では、この高額な利息をなくしてもらったり、15%より低い水準まで下げることで、元本の返済を行っていくことになるのです。
カードローンを任意整理するメリット
任意整理の最大のメリットは、利息がなくなることで、支払った金額が完全に元金に充てられるため、返済が容易になる点です。
また、毎月の支払い額が減額されることもあります。
さらに、任意整理では手続きを行う業者を自由に選ぶことができます。
そのため、自宅や車、貴重品などを所有しながら手続きを進めることが可能です。
加えて、家族や勤務先の協力が必要ではないため、家族や会社に手続きを知られるリスクが少ないという利点もあります。
カードローンを任意整理するデメリット
任意整理には多くのメリットがありますが、デメリットやリスクも忘れてはいけません。
信用情報に影響が出る
まず、信用情報に登録されることが問題です。
信用情報とは、借入の申し込みや契約に関する情報で、金融機関はこれを貸し付け審査の基準にしています。
債務整理をすると事故情報に登録されることとなり、結果として、債務整理後にはローンやクレジットカードの申し込みが通りにくくなります。
既存の契約が解除される
次に、ほとんどの貸金業者や銀行のカードローンの契約書には、債務整理を行った場合は契約を解除する、という記載があります。
そのため、任意整理をすると対象となったカードローンの契約は解約されます。
また、任意整理の対象とならないその他のカードローンやクレジットカードについても、利用停止や借り入れ限度額の減額の措置が取られることがあります。
消費者金融やクレジットカード会社は定期的に事故情報を確認し、契約の変更を行っているためです。
銀行系カードローンの場合は保証会社に債権が移る
第三に、銀行系カードローンを利用している場合、債務整理をすると、銀行には保証会社
が代わりにお金を払ってくれます。
では、「借りた人はお金を払わなくていいのか」というとそうではありません。
債務者は、保証会社が肩代わりしてくれたお金を、保証会社に返さなくてはいけません。
ただ、これはあくまで、借金を返す相手が銀行から保証会社に代わっただけです。
ですので、デメリットというほどのものでもありません。
カードローンも任意整理することができる
カードローンの任意整理は可能なのでしょうか?
答えは、「債権者が同意すれば可能」です。
任意整理は債権者との交渉によって返済条件を変更する手続きであることから、債権者が交渉に応じるのであれば、カードローンの任意整理も問題ありません。
実際、大手の消費者金融や銀行では、任意整理に応じることがほとんどです。
この記事の監修者である弁護士も、数多くの任意整理のケースに携わってきましたが、名の知れた大手の消費者金融や銀行が、交渉を拒否したという事例はごくわずかでした。
また、消費者金融だけでなく、銀行系のカードローンでも任意整理が可能です。
かつては、利息制限法の法定金利の範囲内の銀行カードローンは任意整理が難しいという誤解があったようです。
しかし、多くの銀行系カードローンは年利15%近くを取っており、任意整理を行うメリットは十分にあります。
カードローンを任意整理する際の注意点
返済が可能か
カードローンを任意整理する際に注意点として、
「返済が可能か」「返済能力が十分か」が挙げられます。
上記でもご紹介してきました通り、任意整理は「借金の返済条件を有利に変更してもらう」手続きです。
そのため、借り入れた元金などの返済は必要です。
例えば、借金の返済に毎月5万円が準備できるとしましょう。
しかし、消費者金融A社のカードローンを任意整理した結果、毎月の返済額が8万円必要になった場合、これでは返済能力を超えてしまっています。
また、他の借金がある場合は、あなたが返済するべき借金のトータルで考える必要があります。
さきほどの事例ですと、消費者金融A社のカードローンを任意整理して、返済額が3万円まで減額された場合なら、毎月準備できる5万円は超えていませんので返済は可能です。
しかし、ここに、別の銀行系カードローンB社のカードローンの返済が毎月3万円だったら、合計返済月額が6万円になってしまい、やはり返済能力を超えてしまいます。
このように、任意整理をする際には、実際に返済可能かどうかを考慮することは非常に大事だと言えます。
銀行系カードローンの場合は保有する銀行口座の預金を引き出す
第二に、銀行系カードローンの場合、銀行口座から預金を引き出さないと返済に充てられてしまうということにも注意が必要です。
具体的には、C銀行カードローンを利用していて100万円の借金がある一方、C銀行に口座を持っていて、預金に5万円が入っている場合、C銀行のカードローンを任意整理すると、C銀行の口座に入っている預金5万円はC銀行カードローンの返済に充てられてしまうということです。
また、銀行カードローンを債務整理する際には、保証会社が銀行に借金の肩代わりをするまでの間は、その銀行の口座は利用停止となってしまいます。
この口座の凍結期間と言うのは、1~2か月程度続くため、やはり注意が必要です。
特に、上記の事例で言うと、C銀行の口座で給与を受け取っている場合は、口座の凍結期間は、ATMから給与を引き出すことが出来ないため、事態が複雑となりがちです。
保証会社を確認する
銀行のカードローンの任意整理をする場合の第三の注意点は、保証会社を確認することです。
例えば、D銀行カードローンの保証会社がE会社だったとしましょう。
このE会社でクレジットカードを組んでいる場合、E会社がD会社に保証を実行すると、E会社も任意整理の対象となるということです。
これが問題となるのが、保証会社の方で自動車ローンや住宅ローンを組んでいる場合です。
自動車ローンや住宅ローンの任意整理をすると、住宅や自動車は引き揚げ、競売の対象となることがあります。
先ほどの事例で言いますと、
「D銀行のカードローンの任意整理をしたはずなのに、E会社が保証を実行した結果、自動車ローンまで任意整理の対象となり、車を没収されてしまった」
ということが起こり得るのです。
自分で購入した自動車であっても当然悔しいでしょうが、親族や知人、会社などに保証人になってもらっていたら、保証人の方に請求が行くこととなります。
請求が来た保証人は、パニックに陥ってしまうでしょう。
このことから、任意整理をする際には、保証会社には十分に気を付けるべきです。
最後に
これまで任意整理について説明をしてきました。
ただし、一般の方が自分で任意整理を行うことは、現実的ではありません。
返済能力に関して、返済能力を甘く見積もりがちになりますし、「今まで借金の返済が出来ていたのは、借金を借金で賄っていたから」という方は、非常に多いです。
借金を借金で賄っていると、お金があるように錯覚してきますが、任意整理を始めると、借金はもうできなくなります。
そして、「借金をしないと家計を回せないほど収入が少なかったのか」と驚くことが珍しくないのです。
さらに、任意整理をすると預金口座が凍結されたり、保証会社が巻き込まれてしまったりなど、影響がどこまで出るかを正確に把握するのは困難でしょう。
そのため、カードローンの任意整理を迷っている場合は、専門家である弁護士や司法書士に相談することが重要です。
債務整理の専門家に相談することで、どの会社が任意整理されるべきか、どの会社を対象とするべきではないのかなどが明確になります。
また、返済能力を超えている場合は、無理に任意整理を行うよりも、自己破産や個人再生といった別の手段を検討することが、結果として借金問題の解決につながります。
そのため、最初に無料相談を受けられる弁護士や司法書士事務所に相談することをおすすめします。