貯金よりも投資が推奨される現代では、NISAを使って投資している人は多いと思います。
NISAは利益や配当金が非課税となるため、現在は1,200万口座以上開設されており、資産運用として始める方が増えてきました。
そんなNISAについて、2024年に制度が大幅に改定されることが決まっており、改定に伴って「ロールオーバーできないって本当?」と噂されています。
そこで、本記事では現行NISAと新NISAの違いを解説しつつ、ロールオーバーの可否について解説していきます。
ロールオーバーの可否
現行NISAのうち「一般NISA」は5年間非課税で運用できます。
非課税期間終了後は、課税口座に移動して運用するか、翌年度分の非課税枠を利用してロールオーバーするかという選択ができました。
非課税期間が終了したあとに翌年度の非課税枠を使用し、非課税期間をリセットして運用を継続すること
ロールオーバーしない場合は、「売却して利益を確定させる」もしくは「課税口座に移動して運用する」という選択肢がありますが、長期で運用したい方にとってはロールオーバーして、少しでも長く運用したい方が多いでしょう。
しかし、現行NISAで非課税期間が終了したあと、新NISAにロールオーバーはできないと発表されているため、強制的に「売却」か「課税口座に移動する」の2択から選ぶ必要があります。
そのため、現在NISAで運用している株式やETFなどを、新NISAに移したいという場合、一度売却して現金化してから、新NISAで新たに同じ商品を購入して運用しなければいけません。
また、現行NISAと新NISAでは投資対象となる商品が一部異なるため、同じ商品を購入できるかという点についても事前に確認が必要です。
そこで、実際にロールオーバーに、どのようなメリットやデメリットがあるのかという点について解説します。
ロールオーバーのメリット
ロールオーバーには以下の3つのメリットがあります。
・非課税期間が延長される
・税金を気にせず利益を追求できる
・売却する時期を探す時間ができる
これらのメリットについてそれぞれ解説します。
非課税期間が延長される
1つ目のメリットは、非課税期間が延長されるという点です。
冒頭で解説しているとおり、現行NISAの一般NISAについては株式やETF等の運用を5年間非課税で運用できます。
もし非課税期間が終了すると、売却して利益を確定させるか、課税口座へ移管して運用を継続するかという選択ができます。
しかし、まだ非課税で運用したいというときに嬉しいのがロールオーバーという制度で、ロールオーバーできることで非課税期間がリセットされ、再度非課税で5年間運用することができます。
そのため、より長期で運用したい方にとってはロールオーバーできる点はメリットといえるでしょう。
税金を気にせず利益を追求できる
2つ目のメリットは、税金を気にせず利益を追求できるという点です。
非課税期間で含み益が出ていたとしても、ロールオーバーすることでより長く運用でき、さらに大きな利益が生まれる可能性が高まります。
これは投資の原則でもあり、長期で運用することで今よりもさらに大きな利益を得られる可能性が高まるため、長期で運用したいと考える方は非常に多いです。
また、課税口座では利益に対して一律で20.315%の税金が徴収されますが、NISAはどれだけの利益が出ても非課税のため、全額を利益として受け取ることができます。
そのため、非課税期間が終了したタイミングで利益を確定させるよりも、税金のことを気にせずロールオーバーしてさらに大きな利益を追及することができるのはメリットと言えるでしょう。
売却する時期を探す時間ができる
3つ目のメリットは、売却する時期を探す時間ができるという点です。
非課税期間が終了する前に売るタイミングを探すとなると、含み益が出ている場合は確定させやすいですが、損失が出ている場合は状況が異なります。
万が一損失が出ている時に「非課税期間の終了案内」が証券会社から届くと、課税口座に切り替わる前に売却するタイミングを考える必要があります。
また、売却すると損失が確定してしまうので課税口座へ持ち越したとしても、移管時点の価格がゼロ地点となり、そこからもし値上がりして利益を得た場合は、その利益に対して税金が徴収されてしまいます。
このような場合に活用したいのがロールオーバーで、非課税期間が延長されることで、急いで売却する必要がなくなります。
長期で保有することで、「含み損から含み益に変わるまで待つ」「含み益が大きくなるのを待つ」といった戦略的な運用ができるのもロールオーバーのメリットといえるでしょう。
ロールオーバーのデメリット
ロールオーバーには以下の2つのデメリットがあります。
・含み益から一転して含み損になる可能性がある
・翌年の非課税枠が減る
これらのデメリットについてそれぞれ解説します。
含み益から一転して含み損になる可能性がある
1つ目のデメリットとして、含み益から含み損に転落する可能性があるという点です。
ロールオーバーのメリットとして、さらに大きな利益を狙えると解説しましたが、その一方で株式市場の悪化などによって含み益が減ってしまう場合や、含み損に転落するといったリスクがあります。
長期的には上昇傾向にある株式市場ですが、常に上がり続けているという訳ではなく、上昇と下落を繰り返しているのが相場です。
その中で、10万円の含み益となっていたものが、ロールオーバーしたあとで株式市場が悪化して一気に10万円の含み損となる可能性もゼロではありません。
そのため、含み益の時に利益を確定させておくべきだったと感じる人も少なくないことから、ロールオーバーはデメリットとなる場合もあるといえます。
翌年の非課税枠が減る
2つ目のデメリットとして、翌年の非課税枠が減るという点です。
ロールオーバーは翌年の非課税枠を使用して、運用を継続する仕組みとなっています。
例えば、当初100万円で購入したものが120万円に値上がりした段階で非課税期間が終了したとします。
この時点で売却すれば、翌年の非課税枠には影響はありませんが、もしロールオーバーすると120万円で購入したという扱いに変更され、翌年の120万円の非課税枠は0円となってしまいます。
そのため、新たに株を購入して運用したいと思っていた場合でも、ロールオーバーしたい商品がある場合は、非課税枠に影響が出るという点はデメリットと言えるでしょう。
ロールオーバーできない現行NISAの対処法
ここまで、ロールオーバーのメリット・デメリットについて解説してきましたが、2024年の新NISAが始まるまでに何をすべきか解説します。
結論としては、5年間という非課税期間を十分に利用して「保有する」もしくは「売却のタイミングを検討する」と良いでしょう。
現行NISAと新NISAの非課税枠はそれぞれで設定されているため、別枠という扱いになります。
そのため、新NISAでは最大1,800万円分を保有することができますが、それに加えて現行NISAの120万円も5年間は継続して利用できるため、より多くの金額を運用したい方は、今のうちに120万円の非課税枠を有効に使用することをおすすめします。
そして、非課税期間の終了が近付いてきたタイミングで売却を検討し、そこで得た利益を新NISAで新たに運用することで、効率よく資金を回すことができます。
まとめ
ロールオーバーについて解説してきましたが、現行NISAで運用しているものを新NISAにロールオーバーできないということがわかりました。
しかし、現行NISAが終了してロールオーバーできなくなるからといって慌てて売却する必要はありません。
非課税期間を十分に使い、自分が納得できる利益が出たタイミングで売却するといいでしょう。
また、新NISAは非課税期間が恒久化され、ロールオーバーという概念がなくなるため、20年・30年とより長期的な運用ができ、好きなタイミングで売却することができます。
このように、両方の制度の違いを上手く活用することで効率的な運用ができるので、現行NISAと新NISAの違いをしっかりと把握するようにしましょう。