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弁護士法人丸の内国際法律事務所で破産手続きが開始された件について解説

名古屋市中区にあった弁護士法人「丸の内国際法律事務所」が突然、破産手続きを開始したというニュースは、多くの人に衝撃を与えました。

この出来事は、単なる法律事務所の閉鎖にとどまりません。実は、この事務所の代表弁護士だった瀬辺勝弁護士には、過去にもたびたび懲戒処分を受けていたという驚きの事実があるのです。さらに、事務所が扱っていたのが、被害回復が難しいとされる投資詐欺や国際ロマンス詐欺の案件だったことも、問題を複雑にしています。

この記事では、弁護士法人丸の内国際法律事務所がなぜ破産に至ったのか、そしてその背景にあった代表弁護士の繰り返しの問題行動について、詳しく解説していきます。さらに、事務所に依頼をしていた方がこれからどうすれば良いのか、具体的な対応策についてもご紹介します。あなたの疑問や不安を解消できるよう、丁寧にお伝えしていきます。

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弁護士法人丸の内国際法律事務所はなぜ破産?突然の発表に何が

名古屋市中区に存在した弁護士法人丸の内国際法律事務所が、突然の破産手続き開始決定を受けました。

このニュースは、多くの関係者、特に事務所に事件を委任していた依頼者の方々に大きな衝撃を与えています。なぜ、このような事態に至ってしまったのでしょうか。その背景には、事務所の唯一の社員であった弁護士の死去と、多額の負債が横たわっています。

参照:実績偽り懲戒手続き中の弁護士死去 事務所の破産手続き開始 名古屋

弁護士法人丸の内国際法律事務所の破産の背景

名古屋地方裁判所が2025年7月24日、弁護士法人丸の内国際法律事務所に対し、破産手続き開始を決定しました。これは、事務所がもはや自身の負債を支払う能力がないと裁判所が判断したことを意味します。

この決定に至った大きな要因は、事務所を一人で運営していた瀬辺勝弁護士が2025年6月に病死したことです。瀬辺勝弁護士の死後、法人の清算手続きが進められる中で、事務所が債務超過の状態であることが判明しました。愛知県弁護士会もこの事実を公表しており、そのウェブサイトで破産手続き開始が報じられています。

結果として、事務所の財産よりも負債の方がはるかに大きかったのです。これにより、事務所としての事業継続は不可能となり、破産という形での法的な整理が避けられない状況となりました。’(参照:「弁護士法人丸の内国際法律事務所 破産管財人室」)()

委任契約はどうなる?依頼者への影響

弁護士法人丸の内国際法律事務所の破産は、当然ながら事件を委任していた依頼者の方々に直接的な影響を及ぼします。破産手続きが開始された時点で、事務所と依頼者の間の委任関係は法律上、自動的に終了してしまいます。

したがって、破産管財人である池田伸之弁護士が、依頼された事件をそのまま引き継いで処理することはありません。

このため、現在進行中の事件がある依頼者の方は、ご自身で早急に別の弁護士を探し、新たな委任契約を結び直す必要があります。愛知県弁護士会のウェブサイトでも、他の弁護士を探す際の留意点や相談窓口に関する情報が提供されています。法的手続きを滞りなく進めるためには、新たな弁護士への速やかな切り替えが必要となります。

誤解にご注意!名古屋と東京の「丸の内国際法律事務所」は無関係です

名古屋市中区の弁護士法人丸の内国際法律事務所に関する報道をご覧になり、不安を感じたり、混乱したりしている方もいらっしゃるかもしれません。特に、「丸の内国際法律事務所」という同じ名称の事務所が東京にも存在するため、「もしや関係があるのでは?」と心配される声も聞かれます。

しかし、 名古屋市中区で破産手続きが進められている弁護士法人丸の内国際法律事務所と、東京都千代田区にある丸の内国際総合法律事務所は、名称は似ていますが、法人格も所在地も全く異なる、無関係の別の事務所です。

東京の丸の内国際総合法律事務所は、公式サイトで「名古屋の事務所とは一切関係がない」旨を明記し、注意喚起を行っています


繰り返された懲戒処分:問題弁護士の実態

弁護士法人丸の内国際法律事務所の破産は、単に代表弁護士の死去によるものだけではありません。

事務所の唯一の社員であった瀬辺勝弁護士には、複数の懲戒歴があり、死亡時にも懲戒手続き中であったという、看過できない事実が存在します。これらの事実は、弁護士として適格性に問題があったことを明確に示しています。

懲戒処分の常習犯、瀬辺勝弁護士

瀬辺勝弁護士は、今回問題が表面化する前から、既に二度の懲戒処分を受けていました。

まず、2020年6月1日付で「業務停止1年6月」という重い処分が下されています。この処分は、遺言執行者として預かった約2,400万円を自己の口座で不適切に管理し、私的な目的で流用したこと、また依頼者から預かった書類を適切に返還しなかったことなどが理由でした。当時の事務所は「総合法律事務所ZERO」という名称でした。

さらに、業務停止期間中であるにもかかわらず、弁護士業務を行ったとして、2022年10月25日付で「戒告」処分を受けています。

これは、業務停止期間中の弁護士は一切の弁護士業務を行ってはならないというルールを明確に破った行為です。当時の事務所は「瀬辺法律会計事務所」という名称でした。

これらの懲戒歴は、いずれも日本弁護士連合会の懲戒処分公告で確認できる公の情報であり、瀬辺弁護士の職務への姿勢に一貫した問題があったことを裏付けています。

参照(「弁護士懲戒処分検索センター」)

詐欺事件受任の闇:偽装された実績

そして、瀬辺弁護士が死亡時にも懲戒手続き中であった事案は、その業務内容の深刻さを物語っています。愛知県弁護士会は、2024年3月13日にこの事案を事前公表していました。

それによると、瀬辺弁護士は、投資詐欺や国際ロマンス詐欺などの被害回復が極めて困難な事件を受任する際、実際には被害回復の実績がないにもかかわらず、「当事務所で被害回復ができた例がある」と偽りの説明を複数件行っていたのです。

この行為は、弁護士職務基本規程第29条第1項に明確に違反します。同規定は、弁護士が事件の見通しや処理方法について依頼者に対し適切な説明を行うことを義務付けています。さらに、委任契約の解約時に、事前の説明なしに調査費用を控除するといった不適切な行為も指摘されていました。愛知県弁護士会は、このような問題行為による「二次被害」の拡大を懸念し、異例の事前公表に踏み切っています。これらの事実は、彼が依頼者の信頼を著しく裏切る行為を繰り返していたことを示しています。


今後の対応は?依頼者がすべきこと

弁護士法人丸の内国際法律事務所の破産という事態に直面し、不安を感じている依頼者の方々は少なくないでしょう。しかし、適切な対応をすることで、今後の不利益を最小限に抑えることは可能です。焦らず、落ち着いて行動することが求められます。

破産管財人の役割と情報入手先

破産手続きが開始されると、裁判所から「破産管財人」が選任されます。今回の場合、池田伸之弁護士が破産管財人となりました。破産管財人の主な役割は、破産した事務所の財産を調査し、現金化(換価)し、最終的に債権者(この場合は、着手金などを支払った依頼者も含まれます)に対して公平に配当することです。破産管財人は、破産者の財産管理に関する一切の権限を持ちます。

今後の手続きの進捗状況や、依頼者・債権者向けの重要な情報については、破産管財人が運営する専用のウェブサイト (https://bmkh-kanzai.com/) で原則として公開されます。そのため、定期的にこのウェブサイトを確認することが最も確実な情報入手方法です。また、疑問点がある場合は、ウェブサイトに記載されているお問い合わせフォームやFAX、メールを利用して連絡することが推奨されています。電話は混雑する可能性があるため、書面での連絡が確実です。

着手金は戻る?返還の可能性と注意点

最も気がかりな点の一つは、支払った着手金が返還されるかどうかでしょう。残念ながら、破産手続きにおいて、支払った着手金がそのまま全額返金されることはありません。破産管財人からも、「丸の内国際事務所にお支払いいただきました着手金をそのままご返金することはできません」と明言されています。

もし、事務所の資産を換価した結果、債権者への「配当」が可能な状況になれば、他の債権者の方々と平等に、按分(割合に応じて分配)という形で一部が返還される可能性があります。しかし、現時点では、一般債権者への配当はほとんど見込みがないとされています。債権届出についても、現時点では提出する必要はなく、配当が見込まれる状況になった際に改めて管財人から案内があるとのことです。

したがって、全額返金は期待できないという現実を理解し、今後の手続きの動向を破産管財人のウェブサイトで注意深く見守ることが重要です。また、破産管財人や裁判所を名乗って金銭を要求するような不審な勧誘には、決して応じないよう細心の注意が必要です。