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債務整理

任意整理の和解とは?交渉内容や和解時の注意点を解説

債務整理手続きの中で「和解」という言葉を耳にしたことはありますか?

債権者と債務者の間で、本当に借金額について合意をしているのか和解書が必要になります。

和解書作成時には債務者は支払い内容などについて確認が必要です。

この記事では、

  • 任意整理の「和解」とは何か
  • なぜ債権者は和解に応じてくれることがあるのか
  • 和解に応じるか注意が必要なのはどんなケースか
  • 債権者との和解を目指す債務整理ではどんなことを定めるか

「和解」は借金問題の解決策のひとつ

当事者が互いに譲歩して成立させるのが「和解」

民法695条では、和解について以下のように定められています。

  • 「和解は、当事者が互いに譲歩をしてその間に存する争いをやめることを約することによって、その効力を生ずる。」
引用:民法695条

借金問題に関しては、例えば

  • 「AはBに対して、毎月10万円ずつ支払う」
  • 「Bは、AのBに対する将来利息や遅延損害金の支払いを免除する」

といった約束をするのが和解です。

借金問題で「和解」をする3つの場面

①任意整理をしたとき

任意整理とは、債権者と債務者の双方が話し合い、

借金の返済方法について和解することを目指す、裁判所を利用しない手続きです。

②特定調停をしたとき

特定調停とは、借金の返済が滞りつつある債務者の申立により、

簡易裁判所が、その債務者と債権者との話合いを仲介し、

返済条件の軽減等の合意が成立するよう働きかけ、

債務者が借金を整理して生活を立て直せるよう支援する制度です。

裁判所での手続の為、特定調停が成立すると調停調書が作成されます。

債権者はこの調停調書により直ちに強制執行ができるようになるため、注意が必要です。

③債権者に裁判などを提起されたとき

債権者から訴訟を起こされてしまっても、裁判手続きの中で和解することも可能です。

一方、和解ができなければ、裁判所が「債務者は債権者に借金を返すように」といった内容の判決が下されます。

借金について消滅時効が完成していること、債務者側に有利な事情がない限りは、

貸し付けた証拠が揃っている債権者側の請求を全面的に認める判断が出るのが通常です。

④裁判までされると和解交渉が難航することも

債権者としては既に裁判費用や手間をかけている為、

最終的に強制執行をしてでもお金を回収したいと考えている可能性が高いです。

長期間滞納している債権者に歩み寄った和解をするよりも、

給与や預貯金などの財産を差し押さえた方が確実に回収できると債権者は考えます。

支払いが滞り、裁判などを起こされる前の段階で、任意整理することをおすすめします。

任意整理における「和解」とは

任意整理における「和解」とは、

今後の支払い方法やスケジュールの契約に合意することを指します。

遅延損害金や利息などで膨れ上がった借金の総額をカットしてもらい、

分割によって返済していくため、債権者にとっては当初の予定よりも返済される額が少なくなってしまいます。

債権者にとっては不利な債務整理手続きですが、個人再生を選択されると任意整理以上に返済される額が減ってしまい、自己破産までいくと一円も返ってこなくなります。

自己破産をされるくらいなら、任意整理で合意したほうが良いと考え、和解で交渉してくれる場合があります。

そういった、借金トラブルを債権者と債務者が譲歩して話し合いで解決「和解」した内容を記す書類を「和解書」と言います。

任意整理の和解交渉で決めること・和解書の内容

①借金返済総額

債務者が債権者に対していくらの債務を持っているのか金額を確定したものです。

通常は和解書に「乙は甲に対して本件和解金として金○○円の支払をする」となどと記載されます。

「借入金」ではなく「和解金」とするのは、利息や遅延損害金その他の項目に影響するからです。

余計な争いの種がないようにするため「和解金」と書くのが主流になっています。

②支払方法・分割払いスケジュール

月々の支払い額や、分割回数などを記載します。

毎月何日に(15日・末日)いくら支払うのか、

振込の場合はどの銀行口座に振り込むのかなど、

任意整理手続和解後の支払いに大切な内容を記載していきます。

債務者はこの支払方法、支払スケジュールに基づいて支払いを行っていきます。

ですので、途中で延滞や和解内容の変更を求めることはできません。

和解する際は、確実に毎月返済できる金額を設定しましょう。

③期限の利益喪失約款

任意整理をした場合、債権者と債務者間とでは、多くの場合、期限の利益喪失条項という約款がつけられています。

その内容は、「2回分の支払いを怠ったら、債権者が、遅延損害金も併せて一括請求するよ」という内容です。

任意整理前のように、債権者から元金などを弁済するよう請求されるようになりますし、これに遅延損害金も付加されます。

そのまま返済せず、放っておけば、訴訟提起・支払督促など、法的手続をされる可能性が高くなります。

④遅延損害金

任意整理では、利息や遅延損害金など元の借入金額以外で膨れ上がったお金をカットすることで和解する場合が多いです。

しかし、元の借入金以外のお金をカットしたにも関わらず、債務者が支払いを滞納して約束を守らなかった場合は残りの借金に対して遅延損害金を付加させることができます。

和解書には、期限の利益喪失とセットで「遅延損害金」についても記載されることになります。

「和解金の残額に対して○%の割合による損害金を支払う」などと記載されます。

⑤清算条項

和解書には、清算条項という債務者に不利な条項が入っています。

清算条項とは、和解書には必ず入っている条項で、「本件に関し、契約書が定める以外の債権債務はないものとする」というものです。

「債権者と債務者にはこの和解書にある他に債権債務が存在しない」と確認するためのものです。

条項を素直に読むと、債務者は和解書に書かれた以上の金額を払う必要はないし、債務者も業者に対し過払い金を請求できなくなるということになってしまいます。

⑥その他の事項

その他、なにか特別な条件があるときに記載します。

例えば、債務から保証人を外す場合や土地・建物などの不動産を担保にできる抵当権を外す場合等のケースがこれに該当します(通常はあまりありません)。

債権者が和解に応じるのはなぜ?

ここまでは、和解とは何か?合意書(和解書)記載の条項について解説してきました。

では、そもそも、なぜ、債権者が任意整理に応じてくれるのでしょうか?

それは、任意整理が債権者にとっても一定のメリットがある解決手段だからです。

債権者はその立場上、債務者から回収できる金額を、できるだけ多く確保したいと考えるものです。

しかし、債務者が返済不能状態になり、自己破産や個人再生を申立ててしまえば、回収できる金額は限られてしまいます。

その点、任意整理は、将来利息や遅延損害金のカットなど一定の条件を受け入れることで、元金の返済が保証されることになります。

不利な内容の和解をしないように注意!

借金の返済義務、実はもう時効で消滅している

債権者から、本来返済すべき総額よりも大幅に減額された額を支払う内容の和解案を提案されるケースがあります。

このような場合、この額なら支払える!と思って、安易に和解に応じることは辞めてください。

なぜなら、借金の返済義務について消滅時効期間が既に経過しており、

「時効の援用」(時効による利益を享受する)という意思表示をすることで、

1円も支払わなくてよい状態になっている可能性もあるからです。

消滅時効が完成しているところに、債務者が債権者に対して

「これなら支払えそうです」と返済義務がある言動をとってしまうと、

せっかく時効が完成していたのにもかかわらず、

支払わなければならなくなってしまうリスクがあります(債務承認)。

「もう返済しなくていい」と言われたけど、実は返済どころか「過払い金」がある

債権者から「もう返済しなくて大丈夫です。双方何の債権債務の権利義務もないということにしましょう」といった和解案を提示される場合もあります(ゼロ和解)。

しかし、このような場合でも、借金がなくなった!と思って安易に和解に応じることは辞めてください。

債務者に債務が残っているどころか、逆に債務者から債権者に対して支払すぎた利息である過払金を返してもらう権利が発生している場合があります。

・2010年(平成22年)6月17日以前に借入れを始めた

・最後に返済や借入れをした日から10年以内である

2つの条件を満たしていると、過払い金返還請求ができる可能性があります。

「もしかしたら過払い金あるかも。」と思われたら、ゼロ和解に応じる前に、過払い金の有無について弁護士に相談してください。

まとめ

債務者と金融業者の債権者がお互い譲歩して交渉するのが債務整理手続による和解です。

和解までの流れとして、まずは弁護士や司法書士などの専門家に相談します。

任意整理を依頼した後は、弁護士・司法書士が和解契約の成立に向けて動いてくれます。

任意整理の和解交渉で決まる事項は、

  • ①借金返済総額
  •  ②支払方法・分割払いスケジュール
  •  ③期限の利益喪失約款
  •  ④遅延損害金
  •  ⑤清算条項
  •  ⑥その他の事項

です。

ただし、債権者から訴訟提起され判決が下されている、債権に抵当権がついていたりすると和解は難しいですし、そもそも債権者が和解に応じてもらえないこともあります。

和解交渉が難航する前に、早めに専門家に相談しましょう。