債務整理

債務整理は取り消しできる?|途中解約する場合の注意点など

取り消し

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債務整理を依頼したけど,親族の援助等により返済の目途がついた

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依頼した事務所との相性が良くないので別の事務所に依頼したくなった

といった事情により,債務整理を依頼した事務所への債務整理の依頼を取り消したいが,取り消すことはできるのかという問題があります。

そこで、本記事では

  • 債務整理の依頼の取り消しが可能か
  • その際にどの様な問題点があるのか

という点を債務整理依頼後の,手続きの段階に応じて見ていきます。

債務整理の依頼の取り消しはできるのか?

任意整理の依頼を取り消しはできる?

任意整理の依頼はいつでも取り消しは可能


結論から言いますと,任意整理の依頼自体は,法律上,依頼者の側からいつでも取り消しすることができます。

また,依頼の取り消しは,依頼を取り消したい旨を伝えればいいだけですので,特に書面でする必要はなく,電話で伝えれば問題ありません。

債務整理の手続きは,大きく分けて,任意整理の手続と法的整理の手続に分けられます。

任意整理とは債権者と交渉を行い今後の返済方法等について合意する手続きです。

和解後は,その和解内容に基づいて返済していくこととなります。

任意整理の依頼の取り消しについては,取り消し後の問題について,手続きの段階に応じて考える必要があります。

依頼直後の取り消し

以下,手続きの段階に応じて見ていきます。

依頼した事務所との関係


債務整理を依頼したら、弁護士や司法書士は、各債権者に受任通知を発送します。

受任通知とは,依頼を受けた司法書士・弁護士が,債権者に対し,依頼者の代理人となった旨を伝えるものです。

同時に,依頼者への直接の督促等を禁止させる効果を生じさせます。

そのため,債務整理を依頼した場合,債権者からの債務者への直接の督促行為が止まることになります。

しかし,依頼した直後に,依頼したことを依頼者が家族に打ち明けたところ,家族が資金を援助し,債務整理手続きをせずに完済することが可能になったといったケースが生じることがあります。

この様な場合,依頼者が依頼直後に,依頼した司法書士・弁護士に,依頼を取り消したい旨を伝えれば,依頼を受けた側は直ちに依頼業務を中止します。

特に、債権者に受任通知を送っていない,あるいは受任連絡をしていないといった場合には、この時点での取り消しであれば,依頼を受けた司法書士・弁護士も,依頼を受けた業務を進めるための手続に着手していないといえます。

そのため,今後払うことになっていた着手金等については,請求されないということがほとんどでしょう。

ただ,この点については,依頼時の契約内容にもよります。

依頼をした事務所に確認する必要があるでしょう。

債権者との関係

次に債権者との関係です。

債権者にも受任通知を送る等の連絡を一切していないという段階であれば,依頼を取り消せば,依頼する前の状況と何ら変化はありません。

また、受任連絡から数日間であれば、撤回に応じてもらえる場合もあります。

ただし、債務整理の委任契約を取り消すということは、債務整理を止めるということです。

つまり、今まで通りの返済が必要ということです。

しかも、間に立ってくれる弁護士や司法書士との関係はなくなっています。

ですから、取り消し後は債権者からの督促に対しては,ご自身で対応する必要があります。

とくに、依頼段階で既に滞納をしていた人には、大変かもしれません。

受任通知発送後の取り消し

依頼した事務所との関係

次に、受任通知を発送し、事件に着手した後の契約解除の場合です。

この場合、依頼を受けた司法書士・弁護士は既に債務整理手続きの業務に着手しています。

ですので、すでに支払っているその着手金は返金してもらえないことがほとんどです。

そもそも,着手金とは,依頼を受けた業務に着手するためです。

そのため、成功報酬とは異なり,依頼の結果にかかわらず発生するものです。

なお,着手金の支払いが残っている場合,着手金の残りを請求されるのが原則です。

ただし、案件の進行具合に応じて、着手金を放棄する場合もあり得ます。

この点についても、依頼した事務所と相談して決めてください。

債権者との関係

債務整理の依頼を受けた債権者は,債務者とのカードローン等の契約を解約します。

そのため,依頼者は,新たな借り入れやカードを使っての買物ができなくなります。

債務者の中には、

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お金がないなら借金をして埋めればいいや

という締まりのない生活に慣れてしまった方もおられます。

そのような方は、むしろ債務整理をするべきなのですが、

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借金が出来ないと生活が出来ない!

ということで、債務整理の依頼を取り消したいと考えることがあります。

ですが、債権者への受任通知発送後に債務整理の依頼を取り消しても、契約解除がなくなることはありません。

債権者の側では、

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受任通知が送られてきたことは,返済不能の事態に陥ったのと同じ

という処理がされてしまうためです。

また、契約書の中には

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債務整理をした場合は契約解除、残金は一括請求します

という条項が含まれているケースはよくあります。

したがって,受任通知発送後に債務整理の依頼を取り消しても契約が元に戻ることはありません。

どころか、残金を一括で請求されるなどのリスクがあることは把握しておくべきです。

信用情報機関との関係

金融機関は,司法書士・弁護士から債務整理の受任通知を受け取ると,その旨を信用情報機関に通知する義務があります

そのため,すでに債権者が受任通知を受け取っている場合,

信用情報上,債務整理をしていることは、事故情報として記録されることになります。

このことは,その後に債務整理の依頼を取り消した場合でも変わりません。

債務整理を途中で止めたからといって、事故情報が消えることはないのです。

受任通知発送後の債務整理の依頼の取り消しは慎重に


ここまでの話を簡単にまとめます

・受任通知の発送前は、取消の影響は少ない

債務整理の依頼直後であれば、信用情報や契約に影響はありません。

ただし、通常通りに支払いを続ける必要があることから、負担は今までと変わりません。

・受任通知発送直後であれば撤回に応じてくれる場合もある

受任連絡の直後であれば、債権者が撤回に応じてくれる場合があります。

・受任通知発送後は取り消しをしても契約は元に戻らない

受任通知発送後、数日から数週間の間に、契約の解除と信用情報への登録は完了します。

これ以降、債権者に債務整理を辞めると伝えても、

契約が元に戻ったり、信用情報が回復したりはしません。

特に多いのが、

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債務整理の依頼をする前の様に,お金を借りたい,カードを使いたい

といった事情で依頼を取り消すケースです。

ですが、受任通知発送後に依頼を取り消しても、契約は依頼前の状態に戻りません。

また、債権者からの残金の一括請求が直接行われることになるため,残金をすぐに一括で返金できる目途が確実についているといった場合に限ってすべきでしょう。

ただし

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債務整理を依頼している事務所を信用できない

というようなケースでは、いったん弁護士や司法書士を解任して、別の事務所を頼るということもあります。

その場合は、直ぐに次の代理人に依頼をしてください。

債権者との和解後の取り消し

では、任意整理の手続きが完了し、和解を結んだ後に取り消すことはできるのでしょうか?

結論から言うと、任意整理の依頼を受けた司法書士・弁護士が,債権者と今後の返済方法についての和解を成立させた後は,依頼の取り消しという概念はありません。

委任契約の内容は「依頼(例:債務整理など)を完成させること」です。

そして、任意整理の仕事の完成は、和解が結ばれたときです。

そのため、着手金や成功報酬などは引き続き支払う義務があるのです。

なお、債権者との合意を破棄することはできます。

その場合、和解時に決めた返済方法は破棄され、残金を一括請求されることとなります。

法的整理の依頼は取り消せる?

原則として取り消しはいつでも可能


法的整理とは,債務者が返済のできない状況にあり,債務を減免するという内容の決定を裁判所に申し立てる手続きとなります。

自己破産や個人再生がこの手続きに当たります。

法的整理は裁判所に申立てを行う手続きですが,法的整理の依頼であっても,依頼を受けた司法書士・弁護士は,まずは債権者に受任通知を送るという手続き自体は任意整理の場合と同じです

法的整理の依頼であっても,任意整理の場合と同様,原則としていつでも依頼の取り消しができます。

ただ,依頼の取り消しができるとしても,任意整理と同様の問題点があるので,安易な取り消しは避けるべきでしょう。

裁判所に申し立てた後の取り消し

法的整理の場合は,任意整理とは異なり,裁判所に対し,自己破産・個人再生の申立てという手続きがあります。

裁判所への申立て後であっても,依頼した司法書士・弁護士への依頼を取り消すこと自体は可能です。

ただ,司法書士・弁護士への依頼を取り消すことと,裁判所への申立てを取り消すこととは別の手続になります。

つまり、弁護士や司法書士への依頼を取り消しても、申し立ては別途取り消さないと手続きが続いてしまうということです。

ただ,その場合でも,裁判所による決定が出る前であれば,申し立ての手続きを取り消すことは可能です。

もっとも、裁判所へ申し立てまで行うほど事件が進行している場合は、着手金を返還してもらえないことがほとんどです。

せっかくお金を払って、裁判所に申し立てまで進んで、そこで手続きを辞めるメリットは、決して多くはありません。

どころか、任意整理と同様に、信用情報への影響が残り続ける上に、一括請求もされてしまいます。

ですので、法的整理中に手続きを辞めるのは、やむを得ない状況に限るべきです。

まとめ

債務整理の依頼後であっても,依頼の取り消しはいつでも可能です。

ただ,受任通知発送後の取り消しは,債権者との関係や信用情報との関係においては,依頼前の状態に戻ることはありません。

受任通知発送後の債務整理の依頼の取り消しは,慎重に考えるべきでしょう。

債務整理の依頼を取り消すかどうかについては,債務の状況をよく把握している,債務整理を依頼した事務所に相談するのがいいといえるでしょう。

ただ,債務整理の依頼を取り消したい理由が,依頼した事務所と信頼関係が築けないといった事情による場合は,別の事務所に相談することも一つの方法でしょう。

  • 記事監修者
  • 弁護士 近藤 裕之
  • 翔躍法律事務所 所属
  • 第一東京弁護士会 所属
  • ※法律問題に関するテキスト監修に限る