ネット上の口コミ等を見てみると、多くの方が、「債務整理の依頼後、弁護士や司法書士から連絡が来なくなった?」と不安を持っておられるようです。
たしかに、長期間にわたって連絡がないときは心配になってしまう気持ちは分かります。
ただ、安心していただきたいのが、弁護士や司法書士から連絡がないことが、すぐに深刻な問題を引き起こすことはありません。
むしろ、弁護士や司法書士から頻繁な連絡があるときの方が、手続きに問題が起きている可能性もあります。
この記事では、債務整理を依頼した後に、どうして弁護士や司法書士から連絡がないことがあるのか、連絡が来なくなったらどうすればいいのかを詳しく説明していきます。
債務整理の依頼後に弁護士・司法書士から連絡が来ない理由とは
問題なく進行しているときは連絡が減りやすい
まず、最初にお伝えしたいこととして、問題がなく案件が進行している場合は、弁護士や司法書士からの連絡が減りやすいということです。
債務整理の手続きが大きく進んだときや重要なことがあるときには弁護士や司法書士は、依頼者に対して報告の連絡を入れるのが一般的です。
具体的には
- 借りていたお金の取引記録が届き、債権額が確定したタイミング
- 借金を減らすための合意が成立したこと
- 大切な書類を送る必要がある場合
- 相手方が裁判を起こした場合
- 裁判所に自己破産や個人再生を申し立てたとき
- 自己破産や個人再生の手続が完了したとき
などの場合には、連絡が来るということです。
反対に、上記のような大きな動きがない場合は、報告する事柄も少なくなります。
例えば「依頼から1か月で取引記録が届き、そこから和解交渉を開始し、開始後2か月で合意できる」という見通しで債務整理を行っているケースを考えてみましょう。
順調に進んでいるのであれば、依頼から1か月ほどで最初の報告が来て、和解内容の打ち合わせ、次に連絡が来るのはさらに2か月後の合意の報告となるでしょう。つまり、依頼から3か月ほどで2,3回しか連絡が来ないということになります。
ですが、本件は非常にスムーズに進んでいる案件であり、理想的な流れですらあります。
つまり、当初の見通し通りに債務整理が進んでいるのであれば、報告や打ち合わせをするべき事柄が少なく、連絡回数が減る傾向があり、連絡があまりない方が手続きがうまく進んでいるサインだともいえる場合さえあります。
返済再開の時期を見計らっている
もうひとつ、弁護士や司法書士から連絡が来ない理由は、「問題をうまく解決するためのタイミングを見極めている」からです。
このような待ちのタイミングでは、当然大きな動きは起こりづらいため、弁護士や司法書士からの連絡は減ることとなります。
ただ、それは、案件を上手く処理するために手続きをすすめるタイミングを見極め、依頼者のために最善の結果を出すことを考えているということです。
例えば、任意整理や個人再生という方法では、手続が終わると、借金の返済が再開されます。そのため、手続きが終わった後、お金を返す準備をしなくてはいけません。
もしも現在、怪我や病気の療養中で、1,2か月後まで仕事に復帰が出来ないのであれば、借金返済の再開タイミングを考えないと、返済計画は簡単に破綻してしまうでしょう。
また、弁護士費用等が残っている場合は、早く手続きを進めてしまうと、債権者への返済が再開されると同時に、弁護士や司法書士のお金も払わなくてはいけない状況になるかもしれません。
このように、返済の再開タイミングによっては、経済的負担が増えてしまう可能性があるため、返済再開の時期には十分な注意が必要になるのです。
結果、待ちの時間が長く続く場合には、弁護士や司法書士からの連絡は少なくなる傾向にあります。
頻繁に連絡が来るのは問題があるせいかも?
時おり、債務整理を頼んだ人たちから「弁護士や司法書士が連絡してこない!」という声を聞くことがあります。
ほかにも、「弁護士や司法書士から、何ヶ月もまったく知らせがない!」と怒っている人を見かけることもしばしばです。
このような「依頼をしている自分のことを大切にしてほしい」というご意見は理解いたします。
けれど、さきにも言ったように、債務整理がちゃんと進んでいる場合、弁護士や司法書士からの連絡が必要最低限になってしまうのは、むしろ案件処理が順調に進んでいるケースが多いのです。
逆に、弁護士や司法書士から何度もの連絡が来るのは、依頼者に何かを確かめたり、依頼者から了解を得たりする必要が多いということの裏返しです。
次項以降で詳述しますが、連絡が頻繁に来るというのは、依頼者に問題があることがほとんどで、債権者との交渉や債務整理の手続きに何か問題が生じている可能性があるということなのです。
債務整理の依頼後に弁護士・司法書士から連絡が来るケースとは?
これまで、弁護士や司法書士から連絡がない理由について説明してきました。
連絡があまり来ないのは、手続きがスムーズに進んでいる場合が多いです。
また、債務整理の手続きをうまく進めるために、ベストなタイミングを見計らっている場合もあることを説明しました。
では、逆に、どんなときに弁護士や司法書士から連絡が来るのでしょうか。
当然、弁護士や司法書士に依頼している以上、連絡が来るのは決して悪いことではありません。いい報告が得られることも多くあります。
ただ、先ほども説明した通り、手続きがスムーズに進んでいる場合には、連絡があまり来ないことも多いというのも事実で、頻繁に連絡が来るようになったのであれば、何かしら問題が生じている可能性もあり得ます。
ここからは、弁護士や司法書士から連絡が来るケースはどのようなもなのか、以下にいくつかの事例を挙げてみたいと思います。
進捗状況の報告のため
さきほども申し上げた通り、弁護士や司法書士が連絡を入れる理由で最も多いのは、進捗状況の報告のためということです。
具体的には
- 借りていたお金の取引記録が届き、債権額が確定したタイミング
- 借金を減らすための合意が成立したこと
- 大切な書類を送る必要がある場合
- 相手方が裁判を起こした場合
- 裁判所に自己破産や個人再生を申し立てたとき
- 自己破産や個人再生の手続が完了したとき
などの場合には、連絡が来ることが多いということです。
手続を進めていいかの確認をさせてほしい
次に、手続きを進める前に確認が必要な場合にも、弁護士や司法書士から連絡が届くことがあります。
特に、任意整理という手続きでは、借金の返済計画を決める際、債権者と返済計画のことを話し合って、それに合意する必要が出てきます。その合意内容がその人の意向に沿っているかどうかを確かめて、同意を得たい場合には、連絡をすることがあります。
他にも、個人再生や自己破産などの手続きには、メリットとなるものもあるけれど、デメリットもあります。だからこそ、手続きを進める前に、本当に手続きを進めてよいのかや、その人にとって最良の選択かどうかを再確認する必要があります。
手続きが進むかどうか、または進めていいかどうかを確認する際には、その人の気持ちや状況を大切に考える必要があります。
そのためにも、連絡が大切で、手続きの状況や確認のために、弁護士や司法書士から連絡が届くことがあるということです。
状況が変わった場合
ほかにも、状況が変わった場合には連絡が来ることがあります。
たとえば、依頼者が「5年前くらいに、100万円をお金を借りて、借りたお金を何度も返していた」と話していたとします。そのため、弁護士や司法書士は、債務整理が必要と判断して依頼を受けたとしましょう。
しかし、実際の取引の期間が20年以上にも及んでいたため過払い金が発生しており、返済額が減らせるといった好材料があれば当然、その変化を報告する必要があります。
逆に、最初は5年くらいと思っていた取引の期間が1年未満だとわかった場合、条件のいい和解が難しいため、どうすべきか再度相談する必要があるでしょう。
他にも、最初は100万円だと思っていたお金が、実は200万円ある場合や、依頼者が仕事を失ったり、病気でお金を払うのが難しい場合、自己破産や個人再生といった手続きを考えるべきかもしれません。
こうしたように、状況が変わると、取るべき手続が変わってくることがあるため、弁護士や司法書士が大切な情報を共有し、最良の選択をするために連絡を取ることがあります。
手続中に問題が発生した
ここまでは、いい理由で連絡が来るケースをご紹介しました。
一方で、あまり好ましくない理由で連絡がくることもあります。
それは、手続中に問題が発生した場合などです。
例えば、
- 依頼者の事前の話と異なる主張している債権者がいるため事実確認が必要
- 生活費に困って借金をしていると言っている人が、じつはパチンコやギャンブルにお金を使っていたことがわかった場合
- 弁護士や司法書士に支払わなければならない報酬や前払い金を払わないため、手続きを進められない場合
- 借入時に虚偽の申告をして債権者を騙した
- 債務整理中に追加の借り入れを行った(時に、人を騙してお金を借りてるケースも)
- 財産隠しや偏頗弁済が疑われる場合
- その他犯罪行為の疑いがある場合
このような、債務者に問題行動がみられるケースでは、弁護士や司法書士からお金を払うように促すための連絡が来たり、話を聞くために連絡が来ることがあります。
また、上記は自己破産における免責不許可事由に該当しうるため、厳重な事実確認が行われることから、連絡の回数が増える傾向にあります。
反対に言うと、連絡が来ないということは、このような問題を起こさない優良な依頼者であるということでもあります。弁護士や司法書士から連絡が来ないことは、一概に悪いこととはいえないのです。
債務整理中に連絡が来ない時の対処法
債務整理を知っておくと安心できる
「弁護士や司法書士から連絡がない」という話は、よく耳にします。
ただ、よくよくその話を聞いてみると、まだ契約をしてから数日しか経っていないというような場合もあります。
このような事例からも分かる通り、実は多くの人たちが、債務整理のことをあまり理解していないのです。
上記でも述べましたが、適切なタイミングで適切な手続きをすることが、依頼者の利益につながります。そして、いつ、どのような手続きをするのがベストかは、債務整理のことをある程度知らないとわからないでしょう。
また、債務整理の流れを理解することで、自分が今、どの段階にいるのかが分かりやすくなり、多少連絡が来なくても「今は待ちのタイミングだな」とわかり、不安は解消されるでしょう。
https://finance-compass.com/saimu076/問題が起こっていないなら、しばらく待ってみる
もし弁護士や司法書士から連絡がない場合、どうしたらいいのでしょうか。
基本的には、問題が起こっていないなら、しばらく待ってみることです。
債務整理中は各社への返済はストップできるわけですし、連絡なども来なくなります。
しばらく時間が経っても、それほど大きな問題が生じる可能性は低いでしょう。
反対に、性急に案件処理を進めてしまって依頼者の負担を増やしてしまったら元も子もありません。
債務整理は時間のかかる手続ですし、適切なタイミングで行動することが、依頼者の利益につながることがほとんどです。
そのため、しばらく時間をおいてみるのもいいでしょう。
手続きの進み具合について知りたい場合はこちらから問い合わせる
では、今の状況や手続きの進み具合について知りたい場合、どうしたら良いのでしょうか。
「連絡するのはどのタイミングがいいか」と悩んでしまうことがあるかもしれません。ただ、弁護士や司法書士はあなたがお金を払って依頼している代理人です。
気になることがあったら遠慮せずに連絡してみましょう。
ほとんどの弁護士や司法書士は、嫌がることなく今後のスケジュールや見通し等について教えてくれるでしょう。
また、最近では公式アプリ等を利用して案件の進捗情報を提供している会社もあるようです。(参照:アディーレ法律事務所、司法書士法人みつ葉グループ)
このような専用のアプリを利用していない事務所でも、メールや公式ライン等のSNSを利用してコンタクトを取れるケースも多いです。
別の弁護士・司法書士に依頼する
何度頼んでも連絡がこなかったり、時間を割いて質問しても答えてくれないというのは、弁護士や司法書士の問題かもしれません。
「弁護士から連絡がこない」というケースと、「質問しても返事がない」というケースは、違う状況です。
もし質問しても答えてもらえず、そのために債務整理が進まないのなら問題ですし、依頼者にとっても損になるかもしれません。
依頼した弁護士や司法書士が、理由もなく手続きを進めずに案件をほったらかしにしているようなら、他の弁護士や司法書士に依頼し直すことも考えるべきです。
連絡がこない理由はハッキリさせる
ただし、弁護士や司法書士を変える前に、手続きが進まない理由についてしっかり確認しておくことが大切です。
弁護士や司法書士も、悪意を持って案件を放置してるわけではありません。
連絡がない理由は先ほど説明した通りで、案件がうまく進んでいるから連絡がないのかもしれません。
また、今は手続きを進めてしまうと依頼者に不利益が生じる可能性があるため、タイミングを考えているかもしれません。
理由をちゃんと聞いてみて、それでも解決せず、納得いく答えも得られないなら、新しい弁護士や司法書士を探すことも考えてみるとよいでしょう。
長期間連絡がない場合は弁護士会・司法書士会に相談する
弁護士や司法書士は、所属する弁護士会、司法書士会の規定によって、依頼された案件を停滞させることなく、完遂するように求められています。
そして、この義務に違反して何年も依頼された仕事をやらなかったり、頼んだ人からの連絡に答えなかったりする場合、所属する弁護士会や司法書士会に対して、様々なペナルティを課すように求めることが出来ます。これを、懲戒請求と言います。
何度連絡をしても、対応をしてくれないような弁護士や司法書士を野放しにすることは、すべての人にとって不利益です。
ですから、このようなトラブルに巻き込まれたら弁護士会・司法書士会に相談することで、改善を求めたり、別の弁護士や司法書士を紹介してもらうきっかけとすることも考えた方が良いでしょう。
まとめ
・弁護士や司法書士から連絡がないのは、案件がスムーズに進んでいて報告することが少なかったり、手続きのタイミングを調整していることもあり、悪いことではないこともある
・弁護士や司法書士から連絡が来るのは
①事件に大きな進展があった場合
②手続きを進めていいかの確認
③案件処理に問題が発生した場合
④依頼者自身に問題がある場合
⑤状況が変わったとき
などがある
・こちらから連絡すれば大体の弁護士や司法書士は応じてくれる。心配なら連絡しよう。
・こちらの求めに応じない弁護士や司法書士は、サービスが悪いので新たな人に依頼することも検討してよい。ただし、解任前に理由を確認しよう