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ETC
債務整理を検討中の方にとって、クレジットカードが使えなくなることは大きな懸念事項の一つです。特に、クレジットカード機能付きのETCカードを利用している場合、債務整理後もETCカードを使い続けることができるのか気になるところです。
結論から言うと、債務整理の対象となるクレジットカードに付帯しているETCカードは、原則として利用できなくなります。
ただし、任意整理の場合、対象とする債務を選択できるため、特定のクレジットカードを対象外とすることで、そのカードに付帯するETCカードを引き続き使える可能性があります。
しかし、債務整理の事実は信用情報機関に事故情報として登録されるため、対象外としたクレジットカードでも、将来的に利用停止や解約となるリスクがあることを認識しておく必要があります。
本記事では、債務整理とETCカードの関係について詳しく解説していきます。
ETCカードとは

ETCカードは、有料道路の通行料金を精算するためのICカードです。ETC(Electronic Toll Collection System)システムを利用して、高速道路などの有料道路を利用する際に、非常に便利なツールです。
このカードを車両に装着しておくと、料金所を通過する際に自動的に料金が精算されるため、現金を用意したり、料金所で停車したりする必要がありません。
このカードを車両に取り付けることで、料金所で止まることなく、自動的に通行料金を支払うことができます。つまり、現金を使わずにスムーズに有料道路を通行できるわけです。
ETCカードには、いくつかのメリットがあります。
まず、料金所で停止する必要がないため、時間の節約になります。また、現金を持ち歩く必要がないので、利用が便利です。さらに、利用金額に応じてポイントが貯まるカードもあり、お得に利用できる場合があります。加えて、高速道路の割引サービスや提携先のサービスを受けられるカードもあります。
ETCカードの種類と選び方
ETCカードには、大きく分けて2種類あります。
1つ目は、クレジットカードに付帯するETCカードです。
このカードは、すでに持っているクレジットカードにETC機能を追加できるため、手続きが簡単というメリットがあります。
ただし、利用できるクレジットカードが限られているというデメリットもあります。
ETCカードを手に入れるには、まずクレジットカード会社の審査を受ける必要があります。
すでに有効なクレジットカードを持っている場合は、同じクレジットカード会社にETCカードを申し込めば、ほとんどの場合、問題なく発行してもらえます。
クレジットカードを持っていない場合は、与信審査が必要となります。
2つ目は、ETCパーソナルカードです。
このカードは、クレジットカードを持っていない人でも発行できるメリットがあります。
しかし、デポジット(保証金)が必要な場合があり、クレジットカードに付帯するETCカードに比べて、ポイント還元や割引サービスが少ない場合があるというデメリットもあります。
ETCカードを選ぶ際は、付帯保険、年会費、ポイント還元、割引サービスなどを確認し、
自分に合ったカードを選ぶことが大切です。
ETCパーソナルカードは、クレジットカード会社の信用審査の代わりに、デポジット(保証金)を預けることで発行されます。つまり、デポジットを預け入れれば、信用審査をクリアしなくても、ETCカードを手に入れることができるのです。
債務整理をするとどうなる?

信用情報とは?
そもそも、信用情報とは個人の信用に関する情報のことです。
具体的には、クレジットカードやローンの申し込みや契約に関する情報、支払い状況などの取引の記録が含まれます。
では、なぜ信用情報が必要なのでしょうか。
その理由は、個人の返済能力を超える過剰な貸付を防ぐためです。例えば、貸金業法第13条「返済能力の調査」では、貸金業者は貸付けの契約を締結する際に、返済能力に関する事項を調査しなければならないと定められています。
つまり、利用者の信用情報を登録・チェックすることで、個人の返済能力や経済的な信用を判断しているのです。
これらの信用情報を管理、保管し、情報を共有するために金融機関や消費者金融、クレジット会社などが加盟しているのが、信用情報機関です。
- ◆CIC(株式会社シー・アイ・シー)
- クレジットカード会社、信販会社、消費者金融、百貨店、銀行系、メーカー系クレジット会社、流通系、携帯電話会社などが加盟
- ◆JICC(株式会社日本信用情報機構)
- 消費者金融会社、金融機関、信販会社、保証会社、銀行系、メーカークレジット会社、流通系、リース会社などが加盟
- ◆KSG(全国銀行個人信用情報センター)
- 銀行、信用金庫、信用組合、信用保証協会などが加盟
信用情報への事故情報登録の影響
債務整理をすると、クレジットカードの利用が制限されるのは、信用情報機関に登録される情報が大きく影響しているからです。
信用情報機関は、借り入れや返済状況など、借金に関する様々な情報を登録しています。
申込情報、契約情報、借入情報、支払情報などが含まれ、個人の経済的信用を判断するために重要な役割を果たしています。
しかし、もし支払いが滞ったり、債務整理をしたりすると、その情報もまた、信用情報機関によって登録されてしまいます。これを、正式には異動情報と言います。ただ、多くの方には「事故情報」と呼ぶ方が分かりやすいかもしれません。
そして、このような「事故情報」があると、新たな借り入れやローンの審査が通常よりも厳しくなり、また、既存の契約の更新などにも悪影響を及ぼす、一般的に「ブラックリスト」と呼ばれる状態になってしまうとされています。
ブラックリストから抹消されるまでの期間は、債務整理の種類や情報を管理する信用情報機関によって異なります。
信用情報機関名 | CIC | JICC | KSC |
任意整理 | 登録されない※1 | 5年※2 | 登録されない※3 |
個人再生 | 登録されない※1 | 5年 | 7年※4 |
自己破産 | 登録されない※1 | 5年 | 7年※4 |
※1 CICによると、「特定調停や民事再生の申請および債務整理を依頼した事実に関するコメントは登録されません。」とされています。(CICホームページの「よくあるご質問」)
※2 JICCでは、任意整理の情報は2019年(令和元年)9月30日以前の契約分については、登録から5年間登録されます。2019年(令和元年)10月1日以降の契約分については、契約終了から5年登録され、完済から5年経たない限り任意整理の情報は消えません。
※3 KSCでは、債務整理の事実自体は登録事項とされていません。(KSC「情報の登録期間」を参照)ただし、滞納した債務が保証会社等により代位弁済がされた場合や長期の延滞が生じた場合には、それらの事実は事故情報として登録されます。
※4 KSCでは、官報情報を登録情報としており、官報に公告された破産・民事再生開始決定等の情報が7年間登録されます。なお、以前は登録期間は10年でしたが、現在では7年間に短縮されています。
登録期間は、自己破産や民事再生の場合は手続きが始まってから約7年間、任意整理の場合は完済した後から約5年間が目安とされています。
つまり、債務整理をすると、信用情報機関に事故情報が登録され、ブラックリストに載ってしまうため、数年間はクレジットカードの利用を含む新たな借り入れが制限されるのです。
信用情報やブラックリストに関しては、当サイトの記事「信用情報のブラックリストとは?登録情報や影響を解説します」「事故情報はいつ消える?ブラックリストの影響が残る期間について解説」を参照してください。


ETCカードを債務整理の対象とした場合に生じる影響
債務整理を行う際、ETCカードへの影響は避けられません。債務整理の対象となるクレジットカードに付帯しているETCカードも、同時に使用できなくなるのです。では、具体的にどのタイミングで使えなくなるのでしょうか。
一般的に、債務整理は弁護士に依頼して進められます。弁護士は依頼を受けると、まず債権者に「受任通知」を送ります。これは、債務者から債務整理の依頼を受けたことを債権者に知らせるためのものです。受任通知が送られると、債権者は債務者への取り立てや連絡を取ることが禁止されます。
重要なのは、この受任通知が送られた時点で、クレジットカード会社はさ債務整理の対象となったクレジットカードと、それに付帯するETCカードの機能が停止するということです。これにより、クレジットカードは解約扱いとなり、今後は使うことは出来なくなります。
したがって、任意整理を検討している場合は、事前にETCカードやクレジットカードの使用方法をよく考えておくことが大切です。

クレジットカードの新規契約も難しくなる
また、債務整理を行うと、新たなクレジットカードの契約が難しくなることも知っておく必要があります。その理由は、債務整理の情報が信用情報に登録されるからです。
さきほど、債務整理を行った場合、その情報は「事故情報」として信用情報に登録されると言いましたが、事故情報が登録されている間は、審査に通過することが難しくなり、新たなローンやクレジットカードを作ることが事実上困難になります。(参照:「債務整理中でもお金は借りられる?審査を通すためのポイントを解説」)
つまり、債務整理を行うと、ETCカードが使えなくなるだけでなく、新たなクレジットカードの契約も難しくなるということです。債務整理を検討する際は、これらの影響を十分に理解した上で、慎重に判断することが重要です。

任意整理で対象から外せば、使い続けられる場合も?
債務整理を行うと、クレジットカードは強制解約や利用停止の対象となります。また、新規での契約も審査に通らない可能性が高くなるため、その結果、ETCカードも使用できなくなります。
ただし、「債務の一部だけの整理は可能?法的リスクはない?方法とリスクを解説」でも説明した通り、任意整理であれば、特定の債務を対象から外して手続きを進めることが出来るのです。つまり、債務整理を行う際、対象とするクレジットカードと対象外とするクレジットカードを選ぶことができます。
例えば、金融業者AとBからの借入のみを整理対象とし、C社のクレジットカードは対象外とすることが可能です。債務整理の対象としないクレジットカード会社には、債務整理を行っていることを通知する必要はありません。
ただし、任意整理の対象外としたクレジットカードであっても、将来的に利用停止や解約となる可能性があります。債務整理を行ったという事実は信用情報機関に事故情報として記録され、クレジットカード会社はこの情報を定期的に確認しているからです。
特に更新のタイミングで信用情報がチェックされ、事故情報が発見された場合、更新が認められなかったり、利用限度額が引き下げられたりすることがあります。
つまり、任意整理の対象外としたクレジットカードは、しばらくは使用できる可能性がありますが、いつ利用を停止されてもおかしくないのです。債務整理を検討する際は、これらの点を十分に理解し、慎重に判断することが重要です。
なお、クレジットカードの支払いが遅れていたり、利用限度を超えていたりしても、ETCカード自体が有効であれば、ETCシステムは正常に機能します。ETCカードを使用する際、車載器が認証するのはクレジットカードの有効期限のみです。したがって、カードが有効で有効期限内であれば、ETCカードは利用できます。ただし、後日利用料金は請求されます。
まとめ
債務整理を行うと、クレジットカードに付帯しているETCカードも原則として利用できなくなります。任意整理の場合、弁護士から受任通知が送られた時点で、対象となるクレジットカードとETCカードの機能が停止します。ただし、任意整理では対象とする債務を選択できるため、特定のクレジットカードを対象外とすることで、そのカードに付帯するETCカードを引き続き使える可能性があります。
しかし、債務整理の事実は信用情報機関に事故情報として登録されるため、対象外としたクレジットカードでも、将来的に利用停止や解約となるリスクがあります。特にカードの更新時に事故情報が発見された場合、更新が認められなかったり、利用限度額が引き下げられたりする可能性があります。
債務整理を検討する際は、これらの影響を十分に理解し、慎重に判断することが重要です。ETCカードの利用継続を望む場合は、クレジットカードを対象外とする選択肢もありますが、いつ利用を停止されてもおかしくないことを認識しておく必要があります。
