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債務整理

民事再生はどんな手続き?個人再生や債務整理とはどう違うの?

民事再生は、日本の法律制度における企業や個人が負債を抱えて経済的に困難な状況に陥った際に、事業や生活の再建を図るための手続きの一つです。

一般的には、会社が行う際に民事再生と呼び、個人が行う場合は、個人再生と呼ばれます。

この記事では、主として個人が行う個人再生の手続の概要や流れ、メリットや注意点について説明していきます。

民事再生とは

民事再生とはどんな手続きか

民事再生は、日本の法律制度において、経済的な苦境に立たされた企業や個人が再建を試みるための手続きであり、これに基づく法的な裁判手続きを指します。

企業の場合、民事再生は経営者の主導で進み、多数の関係者の同意を得つつ再生計画を策定し、実行することで事業の再建を目指します。

これにより、関係者の利益を調整しながら経済的な危機を乗り越えることが期待されます。

一方で、個人の場合は、借金などに苦しむ人が全債権者への返済総額を削減し、残りを3年間で分割返済する再生計画を立て、債権者の同意を得た上で裁判所の認可を受けることで、一部の債務が免除される手続きです。

民事再生は個人と法人の双方に適用され、負債整理を通じて経済的な再建を目指す法的手段であることが理解されます。

記事では特に、個人のケースである個人再生に焦点を当てて解説しています。

債務整理との違い

個人再生と債務整理の違いは何でしょうか。

「借金を減額したり、支払いを免除したりする手続きのこと」を債務整理といいます。

債務整理には主として、

返済条件を変更することで借金返済を簡単にする「任意整理」

所有する財産を清算することで、借金の返済を免除する「自己破産」

借金の元金や利息を削減することで経済的再建を目指す「個人再生」

の三つの種類があります。

債務整理の関係図

 個人再生と混同されやすい別の制度はどんなものがある?

個人再生と混合されやすい制度として「自己破産」「任意整理」があります。

自己破産

自己破産は、しばしば個人再生と混同される手続きの一つです。

個人再生では全額の借金が免除されることはない一方で、自己破産手続きでは、滞納している税金など一部の例外を除いて、裁判所の決定により借金の返済義務がなくなり、返済が一切不要となります。

ただし、この手続きにはいくつかの欠点も存在します。

例えば、家や車といった価値のある財産を処分する必要があり、手続きが複雑で高額な費用がかかります。

加えて、手続き中は一定の資格や職業に就けない場合があり、官報に情報が公開され、事故情報が登録されることもあります(10年が目安)。

任意整理

債務整理の中で最も頻繁に利用される手続きは「任意整理」です。

任意整理は、弁護士や司法書士を介して、債権者と協議し、利息を軽減したり支払いを縮小させたりすることで、より有利な条件での返済を合意する方法です。

個人再生との違いは、任意整理では手続きを進める債権者を自ら選択できる点や、デメリットが相対的に小さく、裁判所を介さずに手続きできるため、手続き期間が短く、速やかに終了できることです。

一方で、任意整理には借金額そのものを減額する効果がないため、個人再生と比べて返済の負担が軽減されにくいというデメリットが存在します。

個人再生とはどんな手続き?

個人再生の概要

「個人再生」は、債務整理の一形態であり、個人が裁判所に対して申し立てを行い、「再生計画案」が認可されることで、借金を大幅に減額し、その削減された残債を3年間で分割返済する手続きです。

任意整理とは異なり、返済条件を和らげる点で共通していますが、個人再生は元金を大幅に減額できるという魅力があります。

実際の減額額は、借金の総額によって変動します。

確定した借金の額最低弁済額
100万円以下そのまま残る(借金が減額されない)
100万~500万円100万円
500万~1500万円5分の1
1500万~3000万円300万円
3000万円~5000万円10分の1

上記のように、借金額が増えるほど、減額率が高くなる仕組みです。ただし、借金額が100万円以下の場合は減額が行われません。

個人再生は、特に借金額が一定以上の場合に有効な債務整理手続きと言えます。

個人再生のメリット

個人再生には、以下のようなメリットが存在します。

借金が元の金額の最大10分の1まで減額できることがある

個人再生手続きでは、借金が元の金額の最大10分の1まで減額できる可能性があります。

個人再生では、減額が認められることが一般的であり、借金の元本を大幅に削減できることがあります。

借金の理由はあまり問題にならない

個人再生手続きでは、借金の理由があまり問題になりません。

自己破産手続きでは、借金の理由が浪費やギャンブル、自覚的な借金などである場合、自己破産が認められないことがありますが、個人再生にはこのような不許可事由がほとんどありません。

ただし、再生計画が債権者に反対される可能性もあるため、慎重な検討が必要です。

基本的には住宅などの資産を手放す必要がない

個人再生の手続では、基本的には住宅などの資産を手放す必要がありません。

自己破産手続きでは、価値のある財産を売却・処分する必要がありますが、個人再生の場合は、残債のない住宅や車を手放す必要がないことや、住宅ローン特約のある住宅を売却することなく手続きを進める場合があります。

手続き中は職業や資格に制約がかからない

個人再生手続きでは、職業や資格に制約がかかりません。

自己破産手続きでは、一部の職業や資格に就くことが難しくなる場合がありますが、個人再生の手続きを進める場合は、このような制約がないことが一般的です。

個人再生の注意点

一方で、個人再生にもデメリットがあります。

必ず最低弁済額まで減額されるわけではない

個人再生を申し立てても、必ずしも借金が最低弁済額まで減額されるわけではありません。

この理由は、「清算価値保障原則」が個人再生に適用されているためです。

清算価値保障原則は、債務者が所有する財産相当額については必ず返済しなければならないという原則です。

財産を所有する個人の場合、最低でもその財産の評価額に相当する金額は返済しなければなりません。

言い換えれば、個人再生においては、財産は没収されるわけではありませんが、その評価額までしか借金が減額されないということです。

たとえば、借金が500万円で財産が300万円ある場合、最低弁済額は100万円です。

ただし、財産が300万円あるため、借金は300万円までしか減額されません。

保証人(連帯保証人)も責任を負う場合がある

個人再生の手続きを取る場合、すべての借金を手続きの対象としなければいけません。

そのため、保証人のある借金も対象としなければならず、これを対象とした場合、債権者は保証人に借金の支払いを請求することとなります。

言い換えると、保証人が付いている借金がある場合は、保証人に返済義務が及ぶ可能性があるということです。

同居家族に内緒で手続きを進めることが難しい

個人再生の手続きでは、「家計収支表」と呼ばれる家計簿に似た書類を提出する必要があります。

この収支表は、さまざまな要因を確認するために活用されます。

支払不能のおそれの有無、財産の隠しや偏頗弁済の有無、再生計画の履行可能性などがその主なポイントです。

家計収支表には、申立人の収支だけでなく、配偶者や子供などの家族や同居人の収支も合わせて記入する必要があります。

このため、家族の協力が必要で、配偶者や子供などの収入情報は給与明細などを確認する必要があります。

この段階で家族にバレると、個人再生手続きを進めることが難しくなります。

要するに、家族に内緒で個人再生を進めることは難しいと言えます。

ただし、別居している場合など、同居していない家族については、収支の報告は不要です。

信用情報に影響を及ぼす

債務整理に関して、多くの人が最も心配するのは、「債務整理をすると信用情報に悪影響が及ぶ」という点です。

債務整理にはさまざまな手続きがありますが、どの手続きを選んだとしても、債務整理を行った事実は事故情報(通称ブラックリスト)に登録されます。

その結果、事故情報が登録されている期間中は、新しいローンやクレジットカードの申し込みが承認されにくくなることがあります。

この登録は債務整理の手続きに基づいており、5年から10年間、その影響が続く可能性があります。

官報に手続をしていることが掲載される

官報は、国の機関紙であり、国立印刷局が編集・印刷を担当しています。

その内容は政府の発行する文書の内容や告知、法律や政令、条約の公布、各省庁の人事など、多岐にわたる公的な情報が含まれています。

この官報は、裁判所も利用しており、公告したい事柄を掲載しています。

債務整理の手続きである個人再生でも官報は利用されており、個人再生の手続きが始まる際、債権者に意見を聞く際、再生計画が裁判所に認められた際などに、官報に個人の名前や住所が掲載されます。

これは主に債権者への通知や公示の一環であり、個人再生を通じて債務の免除や減額が行われることに対する損害を最小限にするための手続きです。

このように聞くと、「知人や勤め先が官報で債務整理を知ることがあるのではないか」と不安に感じることもあるでしょう。

完全にないとは言えませんが、実際に官報を確認するのは、銀行や公的な機関など限られた場所がほとんどで、一般の人が普段から官報を見ることはあまりありません。

実際、官報が発行されていること自体を知らない人も多いでしょう。

ですから、債務整理が官報を通じて周りにバレる可能性は低いと言えるでしょう。

個人再生の手続の流れ

STEP1|弁護士・司法書士に依頼

書類の提出や手続きを自分ですることに問題はありませんが、個人再生は債務整理の中でも最も複雑で、法的な手続きが厳格であると言われています。

裁判所に提出するには厳密なフォーマットに従う必要があり、多岐にわたる書類が必要です。

再生計画の策定も必要条件であり、多くの計算が伴い、相当な労力がかかります。

そのため、個人再生を検討する際には通常、弁護士や司法書士に相談して依頼することが一般的です。

依頼までの手順は、まず弁護士や司法書士に相談することから始まります。

借金の状態や相談者の事情をヒアリングし、適切な手続きを提案します。

この際、弁護士や司法書士は、「任意整理」や「自己破産」などの他の手続きが適している場合もあるため、「個人再生」が必ずしも最適でないことも考慮するべきです。

最初から手続きを選ぶのではなく、十分な情報を得て検討することが大切です。

面談の結果、信頼感を得られ、この手続きを進めてほしいと感じれば、委任契約を結ぶことになります。

専門家と契約すると、代理人となった弁護士や司法書士が債権者に「代理人になりました」と通知を送ります。

この通知が債権者に届くと、以降のやり取りは代理人を通じて行われ、債務者への直接の連絡や債権者への借金返済がストップし、取り立てが行われなくなります。

STEP2|申立書類の作成、裁判所へ個人再生の申立て

弁護士や司法書士に依頼をした後、個人再生のための申立書の作成に取り掛かります。

個人再生には数々の必要書類が必要となり、これらは専門家との協力のもとで収集・作成されます。

主な書類には以下があります。

(1)申立書

個人再生を申し立てる際、その背景や経緯を説明するための書類です。

(2)債権者一覧表

借金をした人や機関の一覧表が必要です。

債権者を遺漏することは問題となりますので、慎重に作成する必要があります。

(3)財産目録

所有している財産の目録です。

財産を意図的に隠すことは問題となりますので、正確かつ誠実に記載することが求められます。

(4)家計収支表

個人再生は返済を前提とした制度なので、返済可能な資金の有無を示すために家計収支表が必要です。

通常、直近2か月分が要求されますが、裁判所によって異なる場合があります。

(5)個人再生添付書類一覧表

(6)その他

添付される書類の一覧表や各事務所が提供する個人再生手続きのチェックリストなども準備が必要です。

これらの書類が整ったら、裁判所に提出して個人再生の申立てを行います。

裁判所では書類が審査され、必要に応じて追加の説明や書類が求められる場合があります。

STEP3|再生手続の開始決定

申立書類が裁判所の審査を通過すると、再生手続きの開始決定が行われます。

この際、手続きの誘導や監督を担当するために個人再生委員が任命されることがありますが、これは地方裁判所の運用や状況により異なります。

ただし、弁護士や司法書士に依頼している場合は、再生委員が選任されることは少ない傾向があります。

また、再生手続きの開始決定は官報に公示されます。

官報には、個人再生の手続きが始まった旨や関連情報が載り、名前や住所などが掲載されます。

開始決定後、裁判所は再び借金の額を確認します。

申立書を基に、ますます債権者による借金の額が正確であるかを確認します。

債権者から異議があれば、再び当事者が反論する機会が与えられます。

この対話を通じて、裁判所が双方の主張を聴取し、借金の額を確定させます。

STEP4|再生計画案の作成、提出

STEP3では、裁判所が申立人や各債権者の意見を元に、借金の確定を行いました。

この確定した借金の額に基づいて、再生計画案が作成・提出されます。

再生計画案には、「借金をどれくらい減額するか」「残りを何年で返済するか」などの返済計画を記載します。

再生計画案が裁判所に提出されると、裁判所の審査を経て、次に、債権者によるチェックが行われます。

小規模個人再生の場合は過半数以上の債権者から同意を得る必要があります。

同意しない債権者が半数以上いるか、または、同意しない債権者の債権額が総債権額の2分の1を超える場合は、個人再生が認められません。

一方、給与所得者等再生の場合は意見を聞くだけで同意は不要です。

ただし、小規模個人再生よりも一般的に返済額が大きくなるというデメリットがあります。

この書面付議決定も官報に公示され、開始決定と同じく、詳細や名前、住所などが掲載されます。

STEP5|再生計画認可決定、再生計画に沿った返済の開始

再生計画案が債権者から認められると、裁判所から再生計画認可の決定が下ります。

この認可決定も官報に載り、認可が確定するまでに約2週間かかります。

認可決定から約1か月後から、裁判所に認められた再生計画に従い、減額された借金の返済が始まります。

返済は原則3年で、これを完済することが出来たら、個人再生手続きが終了します。

まとめ

個人再生は、個人が借金の返済が難しいときに、法律の手続きを使って債務を整理する方法です。

この手続きでは、裁判所を通じて借金を減らし、縮小された金額を返済することができます。

個人再生の利点として、元の借金を減らすだけでなく、財産を手放さずに手続きを進めることができることや、職業や資格による制限を回避できることが挙げられます。

しかし、一方で信用情報への悪影響や、保証人に支払いの義務が移ることなどのデメリットもあります。

そのため、この手続きを進めるかどうかは、慎重に検討する必要があります。

個人再生を検討する際には弁護士や司法書士といった債務整理の専門家の意見を聞き、その助力を得ることが重要です。