自己破産は債務整理手続きの中の一つです。
任意整理と自己破産の大きな違いは、減額できる借金の額と手元に残せる財産にあります。
自己破産では全ての借金の支払いが免除されるのに対し、任意整理は基本的には借金の額は減額されず、将来利息のカットに留まります。
✅任意整理と自己破産の違い
✅債務整理手段の選択の仕方

自己破産と債務整理の違い
債務整理とは
債務整理とは、借金の元本の金額を減らしたり、利息をカットしたりして、借金を無理なく返済できるようにする手続きです。
手続きによっては借金自体を免除できるものあります。
債務整理は大きく分けて3種類あり「任意整理」「個人再生」「自己破産」の3つで、いずれも法律上認められた合法的に行える手続きです。
対象となる借金は、銀行や消費者金融での借金はもちろん、ATM等で利用できるカードローンやキャッシングでの借入、クレジットカードのリボ払いや使いすぎによる債務も対象として圧縮を図ることができます。
これらの債務の返済のお悩みを解決する方法全般のことを、「債務整理」といいます。
債務整理の方法はひとつではなく、いろいろな方法を状況に合わせて使い分けます。
自己破産は債務整理の中のひとつ
自己破産は、3種類ある債務整理のうちのひとつです。
他の債務整理手続きと比べて一番メリットが大きい反面、デメリットも大きいという特徴があります。
借金の返済が苦しくなった場合にはまず他の債務整理を検討し、それでも解決できない場合に自己破産を選択するのが一般的です。
その意味で、自己破産は債務整理の最終手段になります。
自己破産は滞納している税金といった一部の例外を除いた殆どの債務の返済義務を免除してもらい、認められたら一切返済する必要がなくなります。
また、裁判所を通じて申し立てる為、手間や時間がかかる手続きです。
自己破産と任意整理の違い
メリットの比較
自己破産と任意整理のメリットは、以下のとおりです。
・借金の返済義務がすべてなくなる
・裁判所の決定には強制力がある
・差し押さえを停止できる
任意整理のメリット
・毎月の返済額が減る
・財産を処分する必要はない
・手続きの負担が軽い
・費用の負担も軽い
・整理する借金を自由に選べる
・借金の使い道は問われない
・資格や職業に制限がかからない
・他の人に知られることなく手続きしやすい
どのように多額の借金を抱えていても、裁判所で免責が許可されると借金がすべてなくなるという点が、自己破産の一番大きなメリットです。
任意整理では、基本的に3年~5年間かけて返済をする必要があります。
デメリットの比較
一方デメリットは以下のように比較できます。
・一定の財産を処分される
・免責不許可事由があると借金が残る
・全ての債務を手続きに入れる必要がある
・手続きが複雑
・高額な費用がかかる
・手続き中は一定の資格や職業に就けないことがある
・官報に掲載される
・事故情報が登録される(10年が目安)
・元金は減額できない
・返済を3~5年間継続する必要がある
・債権者と合意できるとは限らない
・事故情報が登録される(返済中および完済後5年が目安)
自己破産では、返済義務が免除される代わりに、一定の評価額を超える財産は処分しなければなりません。
手元に残したい財産がある場合は、任意整理の方が有利です。
また、自己破産では、債権者平等の原則により、全ての債務を手続きの対象としなければなりません。
そのため、保証人が支払い請求をされたり、担保が付いている財産(不動産など)を失ったりすることがあります。
その点、任意整理では整理する借金を自由に選択できるので、このようなデメリットは回避できます。
債務整理の中で自己破産を選択すべきケース
借金総額が大きい
借金総額が大きい場合は、自己破産で返済義務を免除してもらった方がよいでしょう。
自己破産に最低限の金額の基準はありませんが、どんなに少額でも「支払えない」なら自己破産で免除してもらえる可能性があります。
逆に、いくら以上の借金は自己破産できないといった限度額もありません。
5年で完済できるかどうかがひとつの目安となります。
なぜなら、任意整理と個人再生では最長5年以内に残った借金を完済させる必要があるからです。
たとえば、200万円の借金が残っている場合、5年で分割返済するとすれば毎月の返済額は4万円となります。
この金額を毎月返済していくことができるかどうか。
収入と支出、負債の返済額を客観的にみたときに「将来にわたって支払いができない状態」にならないかどうかを確認しましょう。
安定した収入がない
自己破産では、個人再生や任意整理と違い、収入が全くない・少ない場合でも申立ては可能であり、無職の方や、生活保護を受けていても免責を受けられる可能性が高いと言えます。
任意整理や個人再生の借金の返済は一般的に長期間に及ぶため、安定した収入がなければ完済は難しいといわざるを得ません。
この点、相応の安定した収入がり、借金の減額や返済期間の延長が認められれば完済できる可能性もあります。
しかし、継続的な収入が見込めない、収入や職業を理由に他の債務整理方法を選択することができない場合には、自己破産が一番最善な解決策となります。
高価な財産がない
多額の借金を抱えているケースでは、個人再生と自己破産のどちらも選択可能となることは少なくありません。
自己破産は99万円を超える現金と、その他評価額20万円を超える財産は原則として処分する必要があります。
保有資産がこの20万円の範囲内であれば財産を処分する必要はないので、自己破産をした方が経済的なメリットは大きくなります。
免責不許可事由がない
破産法では、あまりにも債権者が不利益になる事情がある場合には免責を認めないとするよう決められています。
下記のような免責不許可事由に該当しない場合は、免責許可されるでしょう。
財産を隠したり他人にあげたりした場合
自己破産を申し立てた人は、保有する財産を全て現金に換え、債権者に分配する配当に充てなければなりません。
しかし、保有する財産を故意に隠して、自分で利用したり他の人にあげた場合、債権者への配当額が減少してしまいます。
そのため、財産を隠した、他人にあげた場合には、免責不許可事由にあたり免責されないことになります。
不利な条件で借り入れし返済を行った場合
金融機関や消費者金融で借金を繰り返すと、新たに借入れができなくなってしまいます。
多重債務を抱えている人の中には、返済のための借り入れをしている人がおり、借り入れができなくなると返済も難しくなります。
そのため、闇金と呼ばれる不法な高利貸しから借り入れをしてしまうケースがあります。
このような高利貸しをすると、さらに破産手続きが遅れてしまい、債権者にとっても不利益になります。
したがって、免責不許可になることがあります。
クレジットカードの現金化を行った場合
クレジットカードで買い物をし、手に入れた商品を換金する行為を「現金化」と呼びます。
現金が手元にない場合、簡単に現金を手に入れることができる方法です。
しかし、元の購入金額より安い金額でしか換金ができないため、現金化を行うほど損をします。
このような現金化を行うと、破産手続きの開始が遅れてしまい、債権者への被害が拡大してしまいます。
そのため、現金化行為をした場合は免責不許可となります。
浪費により債務が拡大した場合
借入れをして必要ない買い物を繰り返す、旅行で散財すると、借金返済が難しくなります。
さらに、収入に見合わない浪費を繰り返すと、その分手元にある財産が減り、債務の額が増えてしまいます。
このような場合、免責を認める必要はないと考えられてしまい、免責不許可とされやすくなります。
賭博により債務が拡大した場合
競馬、競艇、競輪、パチンコなどのギャンブルをするために、借入れてしまうこともあります。
しかし、ギャンブルが原因で借金し返済できなくなり自己破産したとしても、債務者に対して同情の余地はありません。
賭博などが原因で借金が大きく膨らんだ場合、免責不許可事由に該当することになります。
射幸行為により債務が拡大した場合
FX取引や先物取引、暗号資産取引、株取引など投資を行うために借入れをすることもあるでしょう。
しかし、これらの取引を行うために借入れをし、返済ができなくなった場合、免責不許可とされます。
制限を受ける職業に就いていない
資格制限とは、破産手続開始決定から、一時的に、資格の取得・登録や資格使った仕事ができなくなるということです。
資格制限は破産法ではなく、各資格と職業に関する法律に規定されています。
裁判所に自己破産を申立て、破産手続開始決定がなされると、債務者は破産者となります。
破産者は特定の資格の欠格事由に該当したり、登録拒否・解任事由・抹消事由になったりします。
そのため、制限を受ける資格や仕事に就いている場合、破産手続中はその職業に就くことができません。
自己破産による職業制限の対象となるのは、“他人の金銭・資産を扱う職業”が中心です。
代表的なのは、「弁護士・公認会計士・税理士・司法書士・宅建士・土地家屋調査士・不動産鑑定士」などの士業です。
これらに就いていない場合は、破産手続き中でも問題なく働くことができます。
まとめ
自己破産は、3種類ある債務整理の手続きの中のひとつです。
それぞれの債務整理手続きには異なるメリットとデメリットがあるので、生活状況や家計状況に応じて最適な手続きを選択することが重要です。
ただ、的確に選択するためには専門的な知識が要求されます。
自己破産をすると、借金の返済を今後一切払う必要はなくなりますが、生活や仕事、信用など、さまざまな面でデメリットが大きくなります。
また、債務整理の中でも自己破産の手続きは個人だけで行うのは難しく、状況によって破産手続きが認められない可能性がありますので司法書士や弁護士などの専門家に相談しましょう。