債務整理をするには自分自身で行うか、法律事務所や司法書士事務所などの専門家に依頼するかの2つの方法があります。
✅法律事務所の選び方
✅相談をする中でトラブルが起こった場合の対処法
債務整理を依頼する弁護士の選び方
債務整理の交渉結果は、担当する弁護士の力量によって大きく左右されます。
依頼する立場からすると、交渉を有利に進めてくれる弁護士に頼みたいと思うのが当然です。
能力が高い事はもちろんですが、信頼できる弁護士なのか、人柄はどうなのかなどを見極め、自分に合った弁護士を選ぶ事が大切です。
このような点を踏まえて、弁護士の選び方の5つのポイントを紹介します。
丁寧で迅速な対応をしてくれるか
弁護士の資質は依頼者への対応に現れます。
依頼者に対して、丁寧に接して親身に相談に乗ってくれることが望ましい姿です。
対応に丁寧さがないと、依頼者の事を本当に大切にしているのか疑問です。
途中で担当弁護士が変わって混乱したり、全て事務員任せで弁護士と全く話もできないと不安になるというトラブルが発生する可能性があるので、そのような弁護士は出来る限り選ばないようにしましょう。
そして、依頼者に対する言葉遣いや態度も重要です。
横柄な態度や、話も聞かずに頭ごなしに説教する弁護士だったらどう感じますか?
嫌な気持ちになるだけで依頼しようとは思わないはずです。
ただ、丁寧で親身になってくれるだけで手続きに時間ばかりかかる弁護士では困ります。
依頼する側も仕事や家事もあり、忙しい毎日を過ごしている中で弁護士との打ち合わせに何時間も時間を取られるようでは生活に支障をきたします。
相談のアポイントに関する電話の折り返しやメールの返信、日時の設定や必要書類の伝え方などをよくチェックして、依頼者への対応について確認しましょう。
素早い対応をしてくれる弁護士であれば、債権者との交渉も迅速に進み交渉もスムーズにまとまり、解決までの時間も短くて済みます。
良い関係を築けそう、信頼できそうと心から思える弁護士に依頼するようにしましょう。
債務整理の実績や経験は豊富か
弁護士はそれぞれ専門があり、得意分野があります。
重要なポイントは債務整理に関する経験や実績が豊富である事です。
経験や実績が豊富であれば、依頼者の状況を聞きながら最も適した債務整理の方法を提案してくれるので納得いく手続きを進める事ができると思います。
債務整理専門の弁護士が在籍して、専門の担当部門がある事務所が良いでしょう。
債務整理に関するルールは細かく定められています。
それに違反すると、解決できるはずの問題が解決できなくなったり不利益を被る可能性があります。
特に任意整理は、債権者への対応を熟知している必要があります。
対応を間違うと依頼者の状況や希望に沿った返済計画が組めなくなってしまいます。
こうした点を踏まえ、債権者との対応実績が豊富で、債務整理に関してのルールを熟知した弁護士を選びましょう。
ホームページやテレビCMなどで、相談件数や受任件数の多さをアピールしている弁護士も見受けられます。
しかし、相談件数や受任件数が多ければ多いほど、弁護士が個別の案件に割くことができる時間や労力が少なくなるので、個々の案件への対応がおろそかになる恐れがあります。
相談件数や受任件数は参考程度に考えた方がいいでしょう。
債務整理にかかるすべての費用が明確できちんと明示されているか
弁護士に依頼する時に、費用がいくらかかるかは気になると思います。
借金返済が苦しくなり相談しているのに、弁護士費用が高額では依頼しない方が良いのではないかと思ってしまいます。
正式に受任をしないと正確な金額を明示できないのは仕方ないですが、「このような場合にはいくらかかります」など具体的な例をあげて概算の見積もりをしてくれないような弁護士は論外です。
例えば、相談時には10万円と聞いていたにも関わらず、実際に依頼した後から追加でどんどん費用が発生するのでは支払がきつくなり生活が苦しくなりかねません。
費用については、依頼者との間でトラブルになりやすい問題ですので、しっかりと納得いくまで確認するようにしましょう。
弁護士に支払う費用が不適切ではないか
『報酬金』は日本弁護士連合会によって上限が決まっています。
『相談料』と『着手金』は上限がないため、それぞれの弁護士事務所によって費用が異なります。
もし弁護士が提示する見積もりに不信感を感じたら、念のため他の弁護士事務所のホームページなどを複数見て確認するか、電話で直接聞いてみましょう。
名称 | 内容 |
相談料 法律相談をする時に必要 | 相談無料 有料の場合は、1時間につき1万円程度(弁護士事務所によって異なる) |
着手金 成功、不成功のある事件について結果に関わらず受任する時に受領する報酬 | 1社あたり2万~10万円程度 (無料の場合もあり)※上限制限無し |
解決報酬金 業者との事件が解決した事によって発生する報酬金 | 1社あたり2万円以下が原則 ※商工ローンは5万円以下 |
減額報酬金 業者が主張する債権額と実際に支払う 事になった金額との差額(減額分)をもとに算定する報酬金 | 減額分の10%以下 |
過払金報酬金 回収した過払金額をもとに算定する報酬金 | 交渉の場合:回収額の20%以下 裁判の場合:回収額の25%以下 |
その他実費 | 収入印紙や郵券、交通費など |
着手金の規制(非事業者等任意整理事件)に上限制限はありません。
デメリットやリスクをわかりやすく説明してくれるか
債務整理を行う事によるデメリットやリスクがあります。
そのことを知らずに手続きをしてしまうと、後から「こんなはずじゃなかった」と後悔する事態になりかねません。
悪い話ほどしっかり分かりやすく説明してくれる弁護士であれば、依頼者が納得した上でどうするかを決めることができます。
では、どのようなデメリットやリスクがあるのでしょうか?
✅必ず和解できるとは限らない
✅信用情報に事故情報として登録される
✅任意整理の場合の減額範囲は、将来利息、遅延損害金のカットとなるので元金を減らすなどの大幅な減額はできない
上記のようなことが代表的な例になります。
「絶対に減額できます」とか「絶対に免責許可されます」など依頼者にとって良い事ばかり言う弁護士はあまり信用できません。
相手方が必ず減額に応じるとは限りませんし、免責許可決定を出すのは裁判所の判断によります。
依頼者の要望が一方的に通るものではありません。
債務者にとって有利になる結果ばかりではないという事を事前にきちんと説明してくれる弁護士に依頼する方が後からトラブルになりにくいと思います。
債務整理の弁護士に相談する際の流れ
弁護士への債務整理相談は、次のような流れで進みます。
①メール・電話などによる弁護士相談の予約
②弁護士と直接面談
③依頼すると決めたら委任契約を結ぶ
④弁護士が受任通知を各債権者へ発送して、代理人になった事を通知
⑤債務者への督促がストップして、債務整理がスタート
弁護士との法律相談時の持ち物
次に説明する持ち物は必ず持参しないと相談に応じて貰えない訳ではありません。
用意して貰った資料やご相談者の希望を聞いて、その方に1番適していて本人が納得できる手続きを弁護士は丁寧に説明してくれます。
相談に行く時に、最低限持参して貰いたい物を紹介します。
本人確認書類
なりすましで弁護士に依頼をする「なりすまし契約」を防止する為、写真付きの身分証明書の提示を求められる事が多いです。
運転免許証やマイナンバーカードを持参する事が望ましいです。
写真付きの身分証明書がない場合には、健康保険証や本人宛に届いている郵便物を持参しましょう。
印鑑
相談をしてそのまま契約に至るケースも少なくないので、印鑑を持参しておくとスムーズに進みます。(認印で問題ないですが、シャチハタは不可な事が多いですので注意しましょう。)
弁護士への初回相談時に最低限持参した方が良いのは上記の2点です。
その他に必要な書類などは、どの債務整理で進めるかを決定し、正式に依頼をしてから弁護士の指示に従って提出しましょう。
相談時に把握しておきたい事項
債務整理手続きをすることで借金問題は解決に向かって進んでいきますが、リスクも生じます。
例えば保証人がついている借金を整理するとなると、保証人に請求がいきますので迷惑をかけてしまいます。
マイカーローンがあればローン会社に車を引き揚げられてしまう可能性があります。
現在の状況(借入の状況がどうなっているのか・家計収支はどうなっているのかなど)をできるだけ詳しく弁護士に伝えることで、相談者にとって最もリスクが少ない解決策を提案して貰う事ができます。
相談者に把握しておいて欲しい事、把握するために必要な物を解説します。
借金内容
借金について把握しておく必要がある情報は『債権者名』・『現在の債務残高』・『毎月の返済額』の3点です。
口頭での申告でも構わないですが、できれば各社のカードや請求書を持参するとスムーズに債権者を特定できます。
債務者が複数いる場合は、箇条書きでも良いので簡単なメモを用意しておくと良いでしょう。
どこにいくらの借金があるか分からないという人も中にはいますが、弁護士が調べることはできませんので、信用情報機関に問合せをするなどして債権者と債務額は確認しておきましょう。
また、少額だし申告しなくて良いかななどと勝手に判断をせずに全ての借金を申告しましょう。
裁判所から訴状が届いているなど特別な事情がある場合も必ず申告しましょう。
差し押さえの手続きに入られてからでは手遅れになる可能性があります。
家計収支状況
債務整理手続きの方針を決める上で、家計収支状況の確認が必要になります。
特に確認が必要になるのは、給料などの収入から必要経費(家賃・食費・水道光熱費など)の生活費を差し引いたあと、手元に残る金額です。
この金額から借金を支払っていけるのかがとても重要です。
1回だけ支払って終わりという事ではなく、この先3年~5年間、1回も遅れずに支払うことができるかを検討する必要があります。
また、今は支払っていけるとしてもこの先、定年退職で収入が減ってしまうとか子供の進学で支出が増えてしまうなどの事情も十分に考慮しなければなりません。
所有している財産
自己破産や個人再生を検討されている方は、下記の点について確認を必ずしておいてください。
不動産
不動産の所有者がご自身1人なのか。
共有名義になっていないかを確認してください。
また、不動産の価値の分かる査定書などがあれば持参しましょう。
査定書がない場合は、近隣物件がいくらで売りに出されているかなどの情報があると良いです。
車
車を所有している方は、車検証の所有者の欄に何と書いてあるかを必ず確認してください。
ご自身の名前になっているか、自動車ローン会社なのかによって車の引揚に関する結果が全く異なる可能性があります。
債務整理を弁護士相談時に必要なもの・提出書類のまとめ
・顔写真つきの身分証明書(運転免許証など)
・印鑑(シャチハタ不可)
・借金の内容が分かるもの(カードや請求書、裁判所からの訴状など)
・家計収支状況が把握できるもの
・不動産や車などの所有財産がわかるもの(査定書や車検証など)
弁護士に相談する時には上記の物を持参するとスムーズに手続きに進む事ができます。
債務整理を依頼してからも、手続きの内容によっては非常に多くの書類が必要になることがあります。
相談の段階から揃えておく必要はないですが、手続きが進み弁護士から指示があった書類は早急に用意するようにしましょう。
弁護士と依頼者のトラブル事例

債務整理をメインとする弁護士事務所が近年増えたことで、報酬等をめぐって弁護士と依頼者の間でトラブルが発生することが増えているのが実状です。
多くの弁護士はきちんと仕事をしますし、報酬についても分かりやすく説明をしてくれます。
実際にあったトラブル例や、トラブル回避の方法をここでは解説します。
弁護士と依頼者のトラブル例
必要以上に高い費用や報酬の請求
弁護士に依頼をするのは初めてという方が多いため、費用の相場や弁護士報酬の基準が分からず、必要以上に高額の費用や報酬を請求されて言われるがままに支払いをしてしまい後々トラブルになることがあります。
返還されたお金の横領
弁護士に過払金請求を依頼した場合、カード会社などから返還される過払金は弁護士の預り金口座へ送金され、費用や報酬を差し引いた残額を依頼者へ返金するのが一般的な流れです。
一旦、弁護士の口座に送金されるので弁護士事務所の経営状況が悪い場合など、弁護士が返還された過払金を横領し経費の支払いに充てたり、個人の生活費として使用する可能性があります。
依頼した時に聞いていた返還額と実際に返還された額に大きな差がある
依頼時に弁護士から返還見込額を説明された場合、その金額と実際の返還額に大きな差がある場合もトラブルになる可能性があります。
相手方との交渉になりますので、任意交渉では当初見込んでいた金額より少なくなってしまうこともあるかもしれませんが、あまりにも大きな差が出る原因は当初の弁護士の見込みが甘い、依頼を誘引するためにあえて見込額を多く伝える、相手方との交渉が不十分で言いなりになっている、返還された過払金の一部を弁護士が着服しているなどが考えられます。
偽弁護士の可能性もある
任意整理時の和解交渉であったり、過払金請求についてはある程度の知識やノウハウがあれば弁護士ではなくても作業をそれなりに進めることはできます。
そのため、弁護士は名前を出しているだけで実際に事件を処理するのは事務職員であったり、弁護士と提携している団体であったりすることがあります。
そのような場合は、非弁行為にあたり違法行為に該当する可能性がありますし、直接弁護士が関わっていないため、杜撰な処理である場合も少なくありません。
トラブル回避の方法
費用や報酬の相場を知っておく
弁護士費用は弁護士と依頼書の間で自由に決めて良いのが原則ですが、手続きごとに相場があります。
任意整理の場合は5万円程度、自己破産で破産管財人が選任されない場合は20万円~40万円、個人再生の場合は40万円~60万円程度が相場になります。
弁護士に依頼をする前に費用については詳しく質問をするなどして確認し、もし相場とあまりにもかけ離れた金額を提示された場合は、必要以上の費用や報酬を請求されている可能性があるので注意しましょう。
実績を確認
最近はホームページを開設している法律事務所も多くあるので、依頼をしようと検討している弁護士の実績を確認しておくと良いでしょう。
債務整理の実績が豊富な弁護士が良いでしょう。
ただ、依頼件数実績は件数が多いと1つの事件の処理を煩雑にされることもあるので参考程度にとどめておく方が良いでしょう。
積極的に連絡を取る
実際に弁護士へ依頼するとなった場合は、積極的に弁護士と連絡を取るようにしましょう。
弁護士は依頼者に、事件処理について報告をする義務がありますのでこまめに進捗状況を報告してもらいましょう。
依頼をしても全く連絡をくれない弁護士ですと、本当に手続きを進めてくれているのか不安になると思います。
些細なことでも構いませんので、弁護士へどんどん連絡をして疑問や不安は解消しましょう。
進捗状況の報告は、万が一後々トラブルになった場合に備えて書面で報告してもらうのも1つの方法です。
債務整理を弁護士に依頼した後によくある質問と対処方法

既に債務整理をしている方や、依頼した後のことが気になる方のために、よくある質問やその対応方法について解説します。
債務整理中に弁護士を変更したい場合はどうすれば?
自分とは相性が合わないと感じたら、弁護士を変更したいと思われる方もいると思います。
1度お願いした弁護士から変更したいと言いにくいと感じる方もいるかもしれません。
結論からすると、弁護士の変更はいつでも可能です。
別の弁護士に依頼したいという場合は、現在依頼中の弁護士の合意の下で辞任して貰う必要があります。
変更する手順は下記の通りになります。
①新たに依頼する弁護士を探す
②依頼したい弁護士に変更したい旨を伝える
③今の弁護士に辞任して貰いたいと伝え、辞任してもらう
④新たな弁護士に依頼する
現在の弁護士が辞任する前に、新しい弁護士に依頼するとトラブルの元なので止めましょう。
ただし、最初に依頼していた弁護士に支払った着手金の返金は難しいと思っておいてください。
債務整理中に弁護士に辞任された場合はどうすれば?
弁護士からの電話に出ない、着信があっても折り返しの連絡もしない、必要な書類をいつまで経っても集めない場合、債務整理の手続きが全く進まなくなります。
そのような状態が続くと弁護士は責任を持って業務が続けられないと判断せざるを得なくなり辞任する可能性があります。
また、債務整理にかかる費用を滞納したり、任意整理後に弁護士から代行返済をして貰っている場合も滞納すると債権者から弁護士へ連絡が入るので、これ以上の対応は難しいと判断される場合があり辞任される可能性があります。
もし、辞任されてしまった場合、支払がまだ始まっていない業者からは電話や手紙での督促が再開されます。
和解済みの業者の場合は、2ヶ月以上滞納してしまうと『期限の利益を喪失』している場合が多いので和解が破棄となり遅延損害金も含めた残金を一括請求される可能性が高くなります。
裁判となり、強制執行のリスクも高くなります。
そうなる前に新たな弁護士を探して早めに依頼しましょう。
新しい弁護士に依頼する時には、別の弁護士から辞任されたことを理由や経緯も含め隠さずに話すようにしてください。
任意整理後に弁護士費用の支払いが遅れそうな場合はどうすれば?
弁護士事務所から代行返済をしている場合は、必ず事務所宛に連絡をしましょう。
この時に支払い目途を伝えて下さい。
事務所から債権者へ連絡し、入金スケジュールを変更して貰えるように交渉してくれます。
もし事務所に積立金があれば、その中から返済をしてくれるケースもあります。
今後の入金が継続的に困難になってしまった場合も、すぐに弁護士へ相談してください。
再和解をする、任意整理以外の債務整理を検討するなど1番現状に合った方法を提案してくれます。
任意整理後の支払いが遅れる場合でも、数日程度の遅れなら大きな影響はありませんが2ヶ月分延滞の状態になると一括請求や遅延損害金が発生する可能性があります。
そのまま放置すると最終的には強制執行により財産を差し押さえられる可能性も高くなります。
支払が遅れそうになったり、支払が遅れていると気づいたら早めに弁護士へ連絡しましょう。
まとめ
弁護士は全ての債務整理について対応できますが、司法書士は債務整理について限られた範囲内で業務を行う形になります。
一方で、費用面では司法書士の方が安くできるなど、それぞれのメリット、デメリットがあります。
また、特に報酬面ではトラブルになるケースも少なくありません。
まずは複数の事務所へ相談をして、弁護士の対応や、費用面を総合的に判断し自分に1番合う事務所を探しましょう。