「新NISAを始めたいけど、何に投資すればいいのかわからない…」そう思っている初心者の方は多いのではないでしょうか。特に、「投資信託」と「個別株」という言葉を聞いて、どちらを選べばいいか迷ってしまうのは当然です。
投資と聞くと、難しい専門用語や、大きなリスクをイメージしてしまいがちですよね。しかし、新NISAは、わたしたち一般の人が将来の資産を増やすための強力な味方です。だからこそ、その仕組みをしっかりと理解することが大切なのです。
この記事では、新NISAで選べる「投資信託」と「個別株」の違いを、初心者の方にも分かりやすく、そして具体的なデータに基づいて徹底解説します。投資のプロに任せる「おまかせ運用」の投資信託と、自分で会社を選ぶ「個別株」には、それぞれどんなメリットやデメリットがあるのでしょうか。この記事を読めば、あなたの目的に合った投資先がきっと見つかります。ぜひ、一緒に資産形成の第一歩を踏み出しましょう。解説します。
目次
投資信託と個別株、何が違う?
投資のプロに任せる「投資信託」とは?
投資信託は、たくさんの投資家から集めた少しずつお金を集めて、投資のプロが運用を行うという金融商品です。投資の専門家が、国内外の複数の株式や債券などに分散して投資を行います。
投資信託の最大のメリットは、少額から手軽に、分散投資ができることです。
たとえば、、個別株であれば、100株単位での取引が中心で、その金額は10万円を越えることも珍しくありません。これに対して、多くの投資信託は100円から購入できます。まとまったお金がなくても始められるため、投資のハードルがぐっと下がります。
さらに、新NISAで非課税対象となっている投資信託の多くは、金融庁の厳しい基準をクリアした、長期的な資産形成に適したファンドです。投資で得た利益には通常約20%の税金がかかりますが、新NISAの口座で投資信託を購入すれば、この税金が非課税になります。
自分で選ぶ「個別株」投資の魅力とリスク
一方で、個別株投資は、特定の会社の株を自分で選んで購入するものです。トヨタ自動車や任天堂など、日頃から目にしている企業の株を購入し、値上がりを待つというのが個別株投資です。
個別株の最大の魅力は、大きなリターンを狙える可能性があることです。会社の業績が伸びれば、株価は大きく上昇し、配当金も増えることがあります。投資信託よりも、高いリターンを期待できるケースがあるのです。
しかし、その分リスクも伴います。投資信託が複数の会社に分散投資するのに対し、個別株は1つの会社に集中して投資します。もし、投資した会社が倒産したり、業績が悪化すれば、株の価値が大きく下がり、大きな損失を被る可能性が高まります。
項目 | 投資信託 | 個別株 |
---|---|---|
運用の主体 | 投資のプロに任せる | 自分で企業を選ぶ |
分散投資 | 自動的に分散される | 自分で分散する必要あり |
投資単位 | 100円〜など少額から | 100株単位が基本(高額) |
リターン | 安定したリターンを目指す | 高いリターンを狙える可能性あり |
リスク | 比較的低い(分散効果) | 比較的高い(集中投資) |

投資信託は大きく分けると2種類ある
市場の平均を目指すインデックスファンド
投資信託には、大きく分けて2つの種類があります。ひとつは、インデックスファンドです。インデックスとは、「指数」を意味し、日経平均株価やS&P 500(米国の主要500社)のような、特定の指数と同じ動きをすることを目指して運用されます。
例えば、TOPIXの価格変動と連動するSBIアセットマネジメント㈱「SBI・iシェアーズ・TOPIXインデックス・ファンド」や、三菱UFJアセットマネジメント㈱「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」が有名です。
新NISAの「つみたて投資枠」の対象となる商品は、金融庁が定めた一定の条件を満たす「投資信託」のみですが、金融庁2025年9月1日「つみたて投資枠対象商品届出一覧」のリストを見ると、「インデックス型投資信託」が276本、「アクティブ型投資信託」59本、ほとんどの商品がインデックスファンドであることに気づくでしょう。
インデックスファンドの最大のメリットは、長期的に利益が見込める点です。経済は長期で見れば成長していく傾向にあります。そのため、市場全体に連動するインデックスファンドも、時間をかけてじっくりと資産を増やしていくことが期待できるのです。さらに、運用コストである信託報酬が非常に低いことも大きな魅力です。頻繁な銘柄の入れ替えが不要なため、人件費などを抑えられるからです。
しかし、インデックスファンドは指数に連動する範囲でしか利益が出ないというデメリットもあります。短期間で株価が10倍になるような高成長株に投資するアクティブファンドとは異なり、圧倒的な利益を得ることは期待できません。市場全体の平均を目指すため、突出したリターンを狙うことは難しいのです。

運用のプロが厳選するアクティブファンド
アクティブファンドは、インデックスファンドとは違い、特定の指数に連動しない投資信託です。「市場平均を超えること」 を目指して、投資のプロであるファンドマネージャーが積極的に運用を行います。
例えば、特定のテーマや業種に特化して株を集めるファンドがあります。IT技術の成長に投資する「大和−iFreeレバレッジFANG+」や、高配当を出し続ける優良企業に投資する「配当貴族」などがその代表例です。
アクティブファンドの最大のメリットは、高いリターンを狙える可能性があることです。インデックスファンドが市場の平均を目標とするのに対し、アクティブファンドは市場を上回る利益を目指します。「大和−iFreeレバレッジFANG+」は、特定の期間で71.18%ものリターン率を出した実績があります(2023年9月20日時点の過去1年間)。
ただし、銘柄を厳選して運用をするため手間がかかる分、信託報酬がインデックスファンドより高めに設定されていることが多いです。このコスト差が、長期的に見ると大きな差となり、リターンを押し下げてしまうのです。
しかも、プロが運用するとはいえ、必ずしも市場平均を上回るわけではありません。実は、アクティブファンドがインデックスファンドを上回る確率は低いとされています。世界的な格付け機関であるS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス社の調査によると、米国市場では、長期的にアクティブファンドの約8割がインデックスファンドに負けているというデータも存在します。
なぜ勝てないかというと、
項目 | インデックスファンド | アクティブファンド |
---|---|---|
運用目標 | 市場指数と同じ動き | 市場指数を上回る成果 |
運用コスト | 非常に低い | 比較的高い |
リスク | 市場全体に連動 | 運用次第で市場を下回る可能性あり |
国内から海外まで、投資対象はこんなに豊富
投資信託は、その投資対象によって様々な種類に分けられます。主な資産クラスには、株式、債券、REIT、そしてコモディティなどがあります。これらはすべて、投資信託を通じて少額から投資することが可能です。
株式は、企業が事業に必要な資金を集めるために発行するものです。株式を購入するということは、その企業の一部を所有する「株主」になることを意味します。これにより、企業の成長に応じて株価が上がったり、利益の一部を配当金として受け取ったりすることができます。
投資信託では、国内の企業だけでなく、アメリカ、ヨーロッパ、アジアなど、世界中の株式にまとめて投資できます。たとえば、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」は、これ1本で全世界の株式に分散投資できる人気商品です。
債券は、国や地方公共団体、企業が発行する借用証書です。債券を購入するということは、それらの発行体にお金を貸すことになります。貸したお金は満期になると返ってきて、それまでの間、利息(クーポン)を定期的に受け取ることができます。株式に比べて価格の変動が小さく、安定した利息収入が期待できるため、リスクを抑えたい場合に有効です。
投資信託には、国内債券、国際債券など、様々な種類の債券を投資対象とする商品があります。
REIT(リート 不動産投資信託)は、投資家から集めた資金で、オフィスビルや商業施設、マンションなどの不動産に投資し、そこから得られる家賃収入や売却益を投資家に分配するものです。これにより、不動産を直接購入することなく、ビルのオーナーになったかのように不動産投資ができます。
コモディティは、原油、金、穀物といった商品そのものを指し、投資信託の中には、このような商品の価格と連動をしているものがあります。これらは、インフレ(物価上昇)が起こった際に価値が上がりやすいため、資産の分散先として注目されています。
このように、株式、債券、REIT、コモディティは、いずれも投資信託の対象となり得る資産であり、投資家は自分のリスク許容度や目的に応じて、これらの資産にバランスよく投資できます。
目的別、選ぶべき投資信託とは?
長期的な資産形成を目指すなら「インデックスファンド」
将来のための資産をじっくりと増やしたいと考えるなら、インデックスファンドが最も適しています。
なぜ長期投資に向いているかというと、複利効果を最大限に活用できるからです。複利とは、運用で得た利益を再び投資に回すことで、利益が利益を生み、雪だるま式に資産が増えていく仕組みです。インデックスファンドは、運用コストが非常に低いため、この複利効果を妨げることなく、効率的に資産を増やしていくことができます。
経済は長期的に見ると成長していく傾向が強いため、市場全体に投資するインデックスファンドを購入して長期的に保有する「バイアンドホールド」戦略は、安定して資産を増やしていく戦略として有効です。

より高い安全性を求めるなら「債券型」「バランス型」
投資の元本を減らすリスクをできるだけ避けたいと考えるなら、債券型ファンドやバランス型ファンドが選択肢になります。
- 債券型ファンド:国や企業に投資家の資金を貸し付ける形で運用します。株式に比べて価格の変動が小さく、安定した利息収入が期待できます。その分、大きなリターンは期待できません。
- バランス型ファンド:株式と債券など、複数の資産を組み合わせて運用するファンドです。投資先が分散されているため、一つの資産が値下がりしても、ほかの資産がカバーしてくれる可能性があります。
ただし、安全性と引き換えに、リターン率は低くなる傾向があります。日本国内のバランス型ファンドの過去10年間の平均リターンは、全世界株式インデックスファンドの平均リターンを大きく下回る傾向にあります。
配当金狙いなら「高配当アクティブファンド」「REIT」
定期的な収入を投資から得たい、いわゆる「配当金狙い」であれば、高配当アクティブファンドやREITが有力な選択肢です。
- 高配当アクティブファンド:高い配当を安定して出し続ける企業に絞って投資するファンドです。
- REIT(不動産投資信託):オフィスビルやマンションなどの不動産に投資し、家賃収入などを投資家に分配します。
これらのファンドは、定期的な分配金(配当金)を得られることが大きな魅力です。しかし、分配金を優先するため、株価や基準価額自体の値上がりはあまり期待できないことがあります。例えば、REITは収益のほとんどを分配金として支払うため、再投資に回す資金が少なく、結果的に基準価額が大きく上がりにくい傾向があります。
※補足 投資信託を選ぶ際は、ご自身の目的やリスク許容度を明確にすることが最も重要です。また、ここで紹介したデータや傾向はあくまで過去のものであり、将来の運用成果を保証するものではありません。